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昭和新山物語 の商品レビュー

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2019/01/06
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とても面白かった。戦時中の昭和18年12月28日の噴火活動開始から終戦後間もなくの昭和20年9月20日の活動終了、そしてその後も昭和新山を観測し続けた三松正夫氏。特定郵便局の局長であり、戦時中は電信の管理もし多忙を極めつつ、戦争に関する心の動きは殆ど記さず、感傷・情緒に陥らず、極めてフラットに、しかし大自然のスペクタクルへの興奮は垣間見せながら、観察者として新山生成の経過を描いており素晴らしい。 小学生向けを想定した本のようで言葉の選択も的確、ただただ自然と向き合っていたことが伝わる。故に、経済活動優先で自然を蔑ろにし破壊する風潮に対しては怒りを隠さない。 全体を通し、読ませるし、読まれるべき本と感じた。 氏は昭和52年12月に亡くなっている。奇しくもその年は有珠山の噴火があった年であり、この時はなかなか避難しなかった住民が亡くなる結果となっている。このニュースに氏は何を思っただろう。人生を賭けて観測・研究してきたことが活かされなかったと悲しんでいたのではと思うと残念でならない。 昭和新山活動中にも関わらず結構普通に山に登り、火傷したり、ガスにクラッとしたり、溶岩の熱で芋を焼いたりしてるのは、逞しいのか好奇心優先なのか死が身近すぎて麻痺してるのか分からないが、危険そうな事をサラリと書いてあって笑ってしまった。 住民達も時局柄もあり容易に転居出来ず、食料事情もある故に、自宅や畑が隆起し火山灰に覆われても苗を移し作物を育てようとしたり、胆振線の保線の難航ぶりについても描かれていたり、リアルタイムで現地に住んでいた人にしか分からない詳細さで一般の人達の暮らしが見えて目から鱗だった。

Posted byブクログ