これからお祈りにいきます の商品レビュー
珍しいタイトルの付け方ですが、収録作品のどちらも「祈り」に関するお話。 主人公が男で、高校生と大学生で、何気ない学生ライフを繊細に描いてるなと思います。不幸でもないけれど、取り立てて幸せでもないという津村先生の独特の世界観が読んでいて見える様でした。
Posted by
短篇2つが収録されており、どちらも主人公が何かに対して祈ってる。 「サイガサマのウィッカーマン」 『エヴリシング・フロウズ』でもあったが、主人公が自分の圧倒的な無力さに傷付くシーンが印象的だった。 たとえどこかの大富豪であっても、自分ではどうにもならないことはあるだろう。まし...
短篇2つが収録されており、どちらも主人公が何かに対して祈ってる。 「サイガサマのウィッカーマン」 『エヴリシング・フロウズ』でもあったが、主人公が自分の圧倒的な無力さに傷付くシーンが印象的だった。 たとえどこかの大富豪であっても、自分ではどうにもならないことはあるだろう。ましてや、高校生の主人公が、家やお金の問題に苦しむ同級生の女性に何ができるというのか。 そんな主人公は、この小説に出てくる神「サイガサマ」の特徴でもある、「物事をあんまりよくわかっていない様子なのだが、とにかくできる範囲でやってみよう、という意識のようなもの」(p.135)を纏うようになる。冒頭から延々ととげとげしい主人公がお供え物を入れるシーンには、非常に心を打たれた。 「バイアブランカの地層と少女」 「自分が幸せだと感じたのは、その夜で何年ぶりだっただろうか。いや、下宿で豚汁に好きなだけごまをふりかけている時などはだいたいそう思っているのだが、そういう自力で何とかできることではなく誰かから幸せだと思わせてもらえること。恩寵のようなこと。」 恋愛の喜びを表現する素敵な文だなぁと思うけど、この小説の素敵なところは、そこではないことにすぐ気付くことになる。不器用で無礼な主人公の青春、そんなものに羨望なり美しさを見てしまうのは実際上よくないことかも知れないが、「恩寵のようなこと」以上に素敵なことが自分でない誰かに起こるように祈る美しさ。 人には人の領分があるし、限界もある。人のためにできることなんて大したものはなく、やるだけやって最後に残るのは祈ることくらい。そして、これは先日旅行に行った際、神社にお参りした時感じたことだけど、誰かのために祈るということは、実は非常に難しいことでもある。 人を思う気持ちから変わってゆくふたりの主人公が、忘れかけていたことを思い出させてくれた気がした。
Posted by
巡り合わせというものだけはどうしても科学で説明できない。そこに宗教や民俗信仰、祈りといったものの無視できない価値があるのは確か。お祈りなんて馬鹿らしいとどこかで感じずにはいられない現代人と、宗教や信仰は、この小説のような感じで共生していくんだなと思った。外から見たらいかにも怪しげ...
巡り合わせというものだけはどうしても科学で説明できない。そこに宗教や民俗信仰、祈りといったものの無視できない価値があるのは確か。お祈りなんて馬鹿らしいとどこかで感じずにはいられない現代人と、宗教や信仰は、この小説のような感じで共生していくんだなと思った。外から見たらいかにも怪しげな土着信仰のお祭りを担っているのがごく普通の一般人というのが印象的。偶然を奇跡や迷信に回収して人々を安心させるという大層な役目の一方、その運営はいかにも草の根的・現実的なのが可笑しかった。けれど同時に、これはかなり実態に近い姿なのだろうなと思った。
Posted by
高校生シゲルの町には、自分の体の「取られたくない」部分を工作して、神様に捧げる奇妙な祭がある。閉塞した日常の中、彼が神様に託したものとは…。ささくれた心に希望の光を灯す物語2編を収録。
Posted by
- 1
- 2