紅のトキの空 の商品レビュー
スカーレットが、障がいのある弟のレッドと働けないお母さんと3人で暮らしていたのに、火事が原因で家族がバラバラになってしまったのを、一緒にいられるようにがんばったお話。 どうなっちゃうんだろうって思いながらずっと読んでいた。もし自分がスカーレットだったら、同じようにがんばれなくて、...
スカーレットが、障がいのある弟のレッドと働けないお母さんと3人で暮らしていたのに、火事が原因で家族がバラバラになってしまったのを、一緒にいられるようにがんばったお話。 どうなっちゃうんだろうって思いながらずっと読んでいた。もし自分がスカーレットだったら、同じようにがんばれなくて、泣いて終わっちゃうかもしれない。でも、がんばれるかな。大変だけど大事な家族、優しい新しい家族、友だち、どれもすごく難しい。悩む。 でも、とにかく、お話がハッピーエンドだったからよかった。 ぼくは、レッドに鳥の羽をくれた動物園のジムが一番好きだった。ジムは優しい人だけど、ジムもレッドも鳥が好きで、仲良くなれたし、病気のことも理解してくれた。(小6)
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スカーレットは十二歳。 母さんと弟と、三人で静かにくらすことが願いだ。 なのに、母さんは入院してしなくちゃいけないし、 弟は児童ケアホームに入らなくちゃいけない。 どうして、家族がはなればなれになるの? ー本書あらすじより 上記のあらすじにあるように、 イギリスに住む主人公・...
スカーレットは十二歳。 母さんと弟と、三人で静かにくらすことが願いだ。 なのに、母さんは入院してしなくちゃいけないし、 弟は児童ケアホームに入らなくちゃいけない。 どうして、家族がはなればなれになるの? ー本書あらすじより 上記のあらすじにあるように、 イギリスに住む主人公・スカーレットはたった十二歳にして、おそらくは自閉症やアスペルガーである弟・レッドの面倒を見、お酒とタバコに逃げ時にはレッドにつらく当たる母の世話もし、学校に行きながら家事もすべてこなしていた。 遊ぶべき時期に遊べない子どもの典型例だ。 しかしスカーレットの気持ちは、典型だのと型にはめて語ってはいけないものだ。 このような生活を続けていれば、早く家を出たい、母も弟も嫌いだと思う子どもも居そうなものだが、スカーレットの場合は違う。 スカーレットの家系のルーツは全く分からないし、そういう意味では自分の出自によりどころがない。 でも、だからこそだろうか。 スカーレットは三人での生活を壊したくなかった。 この生活を守るためなら、毎日の家事などが忙しくても、勉学にも頑張って励み、ソーシャルワーカーのジョー(スカーレットは彼女に心を開かず、ペンギンという渾名やギデオンさんと他人行儀に呼んでいる)にも我が家は大丈夫なのだとアピールする。 特に弟レッドとの絆は、互いにとても強い。 レッドはスカーレットにだけ懐き拠り所にし、スカーレットはレッドには私が絶対に必要だと自負している。 そしてそんなきょうだいを繋ぐのが、鳥ー特に真っ赤で美しいショウジョウトキだった。 レッドが大の鳥好きなのだ。 動物園のスカーレットたちの事情を知っている従業員が、本当はダメだけど無料で動物園に入れてくれる。 たまにきょうだいで行く動物園の時間が、特に二人の楽しみであった…。 スカーレット視点で物語が動いていくので、スカーレットの気持ちが痛いほど伝わってくる。 たとえ周りはスカーレットたちのことを思って行動していても、それが結果的に家族をばらばらにするのなら、スカーレットは周りを敵視する。 親友だったシタもそうだ。 シタもシタのお母さんも、スカーレットたち子どもを守るために福祉へと繋いだが、スカーレットは家族一緒に住んでいたかったから、彼女たちにも良い感情を抱かなくなってしまった。 そして思わぬかたちではなればなれになった家族。 結果はあらすじの通りだ。 そこから里親に引き取られたスカーレット。 けれどスカーレットはどうしても家族ー特にレッドと一緒に暮らしたい。 でもギデオンさんも里親も、レッドがどこにいるのか教えてくれない。 いつもそうだ!誰もわたしになにも教えてくれない! …そんなスカーレットの気持ちが刺さる。 そしてスカーレットは里親の家庭に居心地の良さを感じたり、母親が良くなることを祈ったり、里親家庭で母親もレッドも一緒に暮らせたらいいのにと思ったり、大人に守られるってこういうことなんだと実感したり…いろんな気持ちがぐるぐるぐるぐる…… スカーレットの気持ちもそうだが、この物語は短い期間に、様々に展開が移ろい変わっていく。 新しい里親、新しい家、新しい学校、新しい友達、友達が出来たかと思えばハブられたり… 一難去ってまた一難。 作者あとがきの最初には、 「物語は、ときには一つのくっきりしたイメージから生まれてきます。まるで本の中を一本の川が流れているように。でも、ときには、いくつかの小さなイメージが重なって小さな流れとなり、進みながらまとまっていて物語ができる場合もあります。 この作品は、多くのイメージや多くの人々の物語に触発されて、スカーレットと弟のレッドをめぐる物語になりました。」 とあります。 まさにこの文章の通りの物語だと感じた。 この物語は、読みやすくて、感情移入もしやすくて、だけど、主人公のスカーレットの気持ちや周りの環境、日々起こる出来事は複雑だ。 でも最後は一つにまとまってゆく。 中学一年生(イギリスでは七年生)という、ただでさえ不安定な年齢に様々な出来事が起こって、追い詰められてゆくスカーレット。 それを見ているこちらはハラハラしながら見守るしかない。 そういうことって、現実でもよくある。 あとがきでスカーレットみたいな子はイギリスにたくさんいるとあるが、日本にもたくさんいる… まるでひとりの実在する女の子の人生の一部に寄り添わせてもらった。そんな読了感だった。 あっ、ハッピーエンドなのでその点安心してほしい。 最後に、スカーレットやレッドはもちろん、特に好きな登場人物はジェズとマダム・ポペスクです。
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12歳のスカーレットは、精神状態の悪い母親の代わりに家事をこなし弟レッドの世話をして家族を守ってきた。だが母親が出した火事により家族がバラバラになってしまう。 スカーレットは里親に預けられた家で初めて、大人に守られる子ども本来の生活を知る。 その当たり前なことを知らなかった、そう...
12歳のスカーレットは、精神状態の悪い母親の代わりに家事をこなし弟レッドの世話をして家族を守ってきた。だが母親が出した火事により家族がバラバラになってしまう。 スカーレットは里親に預けられた家で初めて、大人に守られる子ども本来の生活を知る。 その当たり前なことを知らなかった、そういう子どもがいることに胸が張り裂ける。 けれど、その暮らしに居心地の良さを感じることに後ろめたさを抱くスカーレット。あまりに不憫だ。 スカーレットは施設に預けられたレッドを救い出すために、今の居心地の良い暮らしを棄てる決心をする。 障害を抱えたレッドの救いは鳥。鳥を愛する人々との繋がりが愛しい。 トリニダードトバゴのカロニー・スワイプの湿原をボートで行くスカーレットとレッド。 夕暮れ時、ショウジョウトキの群れが空を染めて戻り、マングローブ林に紅のランタンを灯したようになって眠る。二人が眠りにつく前に描く景色が美しくて切ない。
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※このレビューにはネタバレを含みます
精神的に具合が悪くて家事も育児もできない母と、他者との関わりが苦手で鳥への関心が強い弟との3人で暮らす少女スカーレットは、12歳ながら一家の柱として奮闘していた。発熱した弟と調子の悪い母を残して学校へ行った日、彼女らのアパートの部屋が火事になる。幸い二人とも救助されたが、彼女は、母や弟と引き離されて里親の家庭に行かされる。間もなく入院中の母とは会えたが、弟の居場所は教えてもらえない。居心地のいい里親家庭と新しい友人に馴染みながらも、スカーレットは、彼女以外の人との接触を極端に嫌がる彼のことが心配でたまらないのだった。 家庭に恵まれないながらも、自分の心の「家」を求めてがんばる少女の姿を描く。 何もできないことを情けなく思いながらも、それでもできない母の姿と、それを受け入れ、子どもであることを捨て、一家を支えようとするスカーレットの姿が胸に痛い。 そして、スカーレットが恵まれた里親家庭を捨ててでも、弟と一緒にいることを選んだことも。 もどかしかったのは、彼女たちの生活の決定権を握るソーシャルワーカーの存在。当事者であるスカーレットたちの意向ではなく「委員会」の決定がすべてを握る。いつも彼女が意見を言おうとすると周りの大人は「聞いて。簡単ではないの」と言うのだ。 子を持つ母として、ここはやっぱ彼女たちの意見もちゃんと聞かなくては、最終的に実力行使に持って行かれちゃうでしょ、って思うところなのだ。 納得できないのは、最後にマダム・ポペスクの鳥たちが連れ去られてしまったこと。 レッドの処遇のためにあんなにも説得力のある話をして石頭たちの考えを変えた彼女が、どうして愛する鳥たちを奪われてしまったのか。彼女はいいことしかしていないのに、どうして最後に悲しい思いをしてしまわなければならなかったのか。 一般書であれば、「これが世の中だ」でいいのかも知れませんが、中学生以上対象ではあっても児童書ならば、ここはとっても残念なところ。 また、里親家庭の人たちは無茶苦茶良い人。鳥嫌いのルネは最後には鳥に夢中のレッドさえも引き取るなんて。 ルネの夫や子ども達も非常に寛容。無理はないのかとこちらが心配になってしまう。 レッドとスカーレットと鳥や鳥好きな人たちの話は、この厳しい物語の中の救いになっている。好きなものがいつでも自分の心を引き立ててくれていて、それで世界が広がっていくなんて最高ではないか。 鳥に詳しい作品だなと思っていれば、これは「ミサゴのくる谷」でデビューしたジル・ルイスの作品。納得です。
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1、紅のトキの空 2、青空のかけら たまたま同じような話の本があったのでまとめてご紹介。 どちらも優秀な女の子。 “紅”のほうははじめから親はいない “トキ”は母親はいるけど役に立たない どちらも情緒障害やそれに近い弟がいて、自分が守ってやらなきゃ! と耐えず緊張しています。 ...
1、紅のトキの空 2、青空のかけら たまたま同じような話の本があったのでまとめてご紹介。 どちらも優秀な女の子。 “紅”のほうははじめから親はいない “トキ”は母親はいるけど役に立たない どちらも情緒障害やそれに近い弟がいて、自分が守ってやらなきゃ! と耐えず緊張しています。 児童文学といえものは、子どもの皮膚感覚を使って書くものだから、どちらもそういう意味では子ども時代にしか使えない共感能力その他の感覚を見事に使いこなして書いてます。 物語としてとても完成度は高い。 でもいまの日本の子どもたちにはアッピールしないだろうなぁ。 日本の一般的な子どもたちは似てるけど違う問題で悩んでるし外国の話は想像つかない。 そうして、日本の施設で暮らしている子どもたちはたくさんいるはずなのに、そういう子が主人公の話が日本の児童文学にある? と考えても思い浮かばない。 まぁ私は日本の本はそんなに読まないので、あるのかもしれないけど、あったら賞とか取りそうなもんだよねぇ? というわけでこの二冊の読者は大人でしょう。 もう933に分類しちゃってもいいと思うよ。 外国のYAは、もう大人の933に入れようよ。 少しは華やかになるよ。 2017/03/15 更新
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