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プーチンの世界 の商品レビュー

4.3

9件のお客様レビュー

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2024/08/31
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ロシアのプーチン大統領がなぜウクライナを侵攻したのか?その理由の一端を説明している本。 しかし、プーチン大統領個人を分析するだけでは、現在のロシアの行動をすべて説明はできまい。実際には、ロシアがいくら独裁国家といえど、プーチン大統領個人だけで重要な政策決定を勝手に下せるとは思えないので、この本だけでウクライナ侵攻含めたロシアの行動の背景すべては説明できないだろう。 だからといって、最高権力者である大統領の頭の中を理解することの重要性はもちろん薄れない。 筆者はハーバード大で博士号を取得する程の明晰な頭脳を持つ、フィオナ・ヒル女史。本書の刊行は2024年2月24日以前のことである。今回の侵攻も踏まえた続編の刊行が楽しみである。

Posted byブクログ

2023/11/24
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ロシア経済の民営化を通じ、オリガルヒたちはお互いに弱みを握り合って均衡を維持していたから、内紛の激化を防ぐためにも無害な調停者が必要だった。彼らが目をつけた者こそ、プーチンである。 プーチンは、ペレストロイカの失敗から教訓を得ていた。それは、イデオロギーや指導者に忠誠を誓うのではなく、国家に忠誠を誓わなければならないということだ。ソ連の崩壊は自業自得であり、国内の秩序を回復しなければ300年前の三流国家の時代に逆戻りしてしまう。したがって、彼は革命による分裂と備蓄や資源の不足は何としても防がなければならないと考えていた。 彼は実際にそれらの考えを実行に移す。まず、分離独立運動を抑えるとともに、ロシアの民族主義の台頭を抑える。ロシアは分離してはいけないしロシアだけが残ってもいけないのだ。反体制運動が起きれば運動の頭部分を切り落とし、それ以外は必要に応じて脅迫・処罰する。 次に、経済と外国の多角化。輸入品に頼るのではなく、外国メーカーに国内での生産を増やしてもらう。そして、既存製品を売る市場としてのユーラシア経済連合の設立。外交では、二国間・多国間関係を積極的に強化した。 プーチンには、国家の秩序を回復するための時間が必要だった。そして、回復中は他の国から放っておいてほしかった。だが、待っていたのは外界からの批判や絶え間ない干渉であった。14年から続くウクライナの動乱はその最たるものである。ウクライナをロシアの市場にしなければと考えていたプーチンに対し、ウクライナはEUと独自の協定を結ぶ準備を始めた。そしてクリミアを併合すれば、次は国内で暴発しうる民族主義に対処しなければならなくなった。この20年、工作に工作を重ねてきた。結局、彼の世界観は80年代のソ連の世界観に戻ってしまったのだ。 (ちなみに、90年代のプーチンに反米思想をうかがわせるような言動は見られない。また、国家としてのロシアもNATO拡大が自国にとって安全保障上の脅威となるとも考えていなかった。彼は西側の自由主義・個人主義・私有財産という概念を拒絶していないし、むしろロシアの価値観と並行して取り入れるべきものだとすら考えていた。 99年のユーゴ空爆はたしかにロシアを驚かせたが、プーチンの西欧を見る目が変わったのは2000年代のブッシュ政権以降である。とりわけ11〜12年の抗議デモは、西欧諸国がロシア都市部のインテリ層とその支持者を通じてプーチンの大統領再就任を阻止しようとしている、という見方を彼に植え付けた。)

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2022/05/01

プーチンのペルソナを国家主義者、歴史家、サバイバリスト、アウトサイダー、自由経済主義者、ケースオフィサーの組み合わせとして分析。筆者はプーチンを現実主義者としているが、今般のウクライナ侵略はペルソナの変化(パラノイア的歴史家)なのかもしれない。本文中の興味深い点は以下のとおり。 ...

プーチンのペルソナを国家主義者、歴史家、サバイバリスト、アウトサイダー、自由経済主義者、ケースオフィサーの組み合わせとして分析。筆者はプーチンを現実主義者としているが、今般のウクライナ侵略はペルソナの変化(パラノイア的歴史家)なのかもしれない。本文中の興味深い点は以下のとおり。 ・プーチンにとって重要なのは情報が真実かどうかよりも周りの反応。 ・プーチンは副市長時代の失敗により、天然資源の備蓄が不可欠で、民間企業は当てにならないことを学んだ。 ・プーチンは96年、オリガルヒの掌握という明確な目的のもとに、アウトサイダーとしてモスクワに呼び寄せられた。 ・ドレスデン勤務のために80年代後半のゴルバチョフ主導の楽観主義時代の経験がすっぽり抜けている。 ・プーチンが大統領として優先したのはウクライナを迂回した欧州の新しいパイプラインを敷設すること。 ・プーチンが米に否定的な感情を持ち脅威を認識するようになったのは2000年代。2006年にはパリクラブへの国際債務返済。2008年には「ウクライナは国家ですらない」とブッシュに言明。 ・2011年の抗議デモは情報空間の力を甘くみすぎていた。 ・56年にハンガリー介入や68年のプラハ介入を反露感情を引き起こした大きな過ちと認識。

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2022/04/01

flier要約 https://www.flierinc.com/summary/2955 ==== フィオナ・ヒル(Fiona Hill) 1965年生まれ、米ブルッキングス研究所/米国・欧州センター ディレクター クリフォード・G・ガディ(Clifford G. Gadd...

flier要約 https://www.flierinc.com/summary/2955 ==== フィオナ・ヒル(Fiona Hill) 1965年生まれ、米ブルッキングス研究所/米国・欧州センター ディレクター クリフォード・G・ガディ(Clifford G. Gaddy) 1946年生まれ、米ブルッキングス研究所/シニア・フェロー ==== 謎に包まれた指導者、と言うイメージがあるプーチン氏を細かに紹介した書籍。 テレビもラジオも新聞もネットニュースも見ない私は、今世界で起こっていることがどういうことで、それがなぜ起こって、今後どうなっていくのか全くなくわかっていない。 その中でまずはプーチン氏と言う人はどういう人物なのかに興味を持って読んでみた。 プーチン氏はもともと情報が少なくまたその情報も改ざんされている可能性が高く結局どういう人物なのかはあまりわからなかったが、その中でも本書は プーチン氏の思考回路や世界観の全体像に迫るため、「国家主義者」「歴史家」「サバイバリスト」「アウトサイダー」「自由経済主義者」「ケース・オフィサー」という6つの側面から多角的に分析しており分かりやすかった。 思った事は大きな流れに飲み込まれてしまうとその流れに逆らうことができないと言うこと。 (個人の意思やスキルとは関係がないこと) 私の好きな小説家で誉田哲也さんがいる。 その中で出てくるガンテツのことを思い出した。 彼はもともと優秀で熱心な刑事だったがそれが故に認められてしまい公安に配属になる。そこから刑事人生が変わっていく。自分の意思とは関係なく周りの環境や、人事によって変わるのは本の中でもテレビの中でも自分自身もそうなんだろうと言うように感じた。 だから、その人個人だけが悪い、その人個人だけがすごい、と言うことってやっぱりあんまりないんだなと本書を読んで感じた。

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2022/02/27

1985年にゴルバチョフが書記長となって1989年にベルリンの壁崩壊、エリツィンによる混乱の1990年代にソ連が崩壊し、2000年にプーチンがロシア大統領に。以来20年以上にわたってロシアを支配するプーチン(1952年生69歳)。その出自と足取りを追う。2014年のウクライナ危機...

1985年にゴルバチョフが書記長となって1989年にベルリンの壁崩壊、エリツィンによる混乱の1990年代にソ連が崩壊し、2000年にプーチンがロシア大統領に。以来20年以上にわたってロシアを支配するプーチン(1952年生69歳)。その出自と足取りを追う。2014年のウクライナ危機を含む二段組500ページの詳細なプーチン解剖。 第1部 工作員、現る 第1部は2013年12月の原書初版部分であり、プーチンの出自とロシアの大統領として権力を握るまで、そしてその握り方をプーチンの多面性(6つの顔)から分析する。 ①プーチンとは何者なのか? ②ボリス・エリツィンと動乱時代 ③~⑧プーチンの6つの顔 国家主羲者・歴史家・サバイバリスト・アウトサイダー・自由経済主義者・ケース・オフィサー(工作員) ⑨プーチンが支配するシステム ゴルバチョフ時代とエリツィンの混乱時代を東ドイツ・ドレスデンでKGBの工作員として過ごし、いいタイミングでレニングラード(ペテルブルグ)に戻り、KGBの指令もあって市長の補佐から副市長へ。そこで身に付けた独特の資本主義観(インドのジュガールに近い)によりものごとの取りまとめ屋(ケース・オフィサー)の能力を買われクレムリンへ。エリツィンが裏取引で国有財産を払い下げたことでできた財閥(オリガルヒ)をコントロールし評価をあげたからなのか、ぎりぎりのところはわからないがなぜかエリツィンに選ばれて大統領補佐から2000年に大統領に。 KGBらしく弱みをつかんで、あるいは一緒になって非合法なことをやり、それを相手の弱みとしてつかむことでコントロールするのが基本の手法のように書かれているが、いつでもそういうわけでもなさそう。エリツィンも弱みをつかまれていたのか。 いかにも「ロシア的な国家愛」と「KGB的な人使いの手法」と「非欧米的なやったもん勝ち資本主義観」・・極端にまとめればそういうことになるのか。複雑すぎてレビューもしづらい。 第2部 工作員、始動 第2部は2014年のクリミア併合・ウクライナ危機(今となっては第一次ウクライナ危機か)勃発を受けて2015年2月に大幅増補された部分。 ⑩ステークホルダーたちの反乱、⑪プーチンの世界、⑫プーチンの「アメリカ教育」、⑬ロシア、復活、⑭国外のエ作員、エピローグ 2008年のグルジア戦争で欧米・NATOの弱腰を見抜くも、アラブの春のような強制的民主化(裏にアメリカがいるとプーチンは思っている)に危機の前兆をみたプーチンは2012年にいったんメドベージェフに譲った大統領に復帰。国内からは大きな非難を受けるがさまざまに強行し、2014年のソチ五輪開催で完全に既成事実化。オリンピック終了後わずか3カ月でクリミア進攻しロシア化。同時にウクライナ東部のロシア人居住地域に進攻。マレーシア機の撃墜もうやむやに。 その8年後の今、2022年にまさに第二次ウクライナ危機で2月22日の今日、東部のドネツク、ルガンスクのロシア人支配地域の独立を一方的に承認。 西側では善ととらえている諸外国の民主主義や自由市場を促進するという西側の政治体制の本質部分がプーチンの世界ではまったく善ではない。プーチンの作り上げた(あるいはロシア的な)閉鎖的なワンマン・ネットワークや経済の「みかじめ料」制度の上に成り立つロシアの政治体制にとって、民主主義や自由市場の促進は明らかに脅威だということ。そして、そんなロシアの有様をプーチン自身はロシアとしての正義だと認識しているということ(ここが、西側の人間にはわかりにくい)。そのロシア主義の先にグルジア戦争がありウクライナ危機がある。(習近平の中国もかなり似ている) プーチンが2000年に大統領になって22年・・・。ロシア人もうんざりしているのではないかという気がするが・・・。https://www.shinchosha.co.jp/book/507011/ 読了後、NHK BS世界のドキュメンタリーで放映されたO・ストーンによるプーチンへのインタビュー「オリバー・ストーン オン プーチン(前後編)」(録画)を再度視聴した。編集のせいもあるのだろうが、プーチンの受け答えのよどみなさは、この本の著者が主張する「プーチンは西側民主主義のことがわからない」というのはアメリカの研究者の一方的な見方かもなどとも思う。

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2018/11/19
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・歴史に造形が深い。偉人の回顧録も読む。(歴史家) ・レニングラード包囲で、兄が犠牲に(サバイバリスト) ・東ドイツで共産主義体制化の破綻を経験(自由経済主義者)

Posted byブクログ

2018/05/15

プーチンは、西側の指導者との接触が少なく、その動機や思惑を理解できてない。欧米がロシアを封じ込めようとしており、その手段は軍事以外の方法(民主化運動の支援等)で行われていると考えている。プーチンはロシアの国益のためには、欧米の弱点を探し、欧米のリーダーや市民を脅すことをやる。 プ...

プーチンは、西側の指導者との接触が少なく、その動機や思惑を理解できてない。欧米がロシアを封じ込めようとしており、その手段は軍事以外の方法(民主化運動の支援等)で行われていると考えている。プーチンはロシアの国益のためには、欧米の弱点を探し、欧米のリーダーや市民を脅すことをやる。 プーチンのこれまでやってきた事は、この本の見方でほぼ説明できると思う。また、トランプのロシアゲートについても、いかにもやりそうと言え、ますます疑念が深まった。今更だが、エリツィンの頃に支援の手を差し伸べて、もっとうまく西側に取り込んでいればこんな事にはならなかったのではと思う。

Posted byブクログ

2017/09/11

[多様な顔,統合された人格]世界で最も影響力のある人物とも言われるロシアのプーチン大統領を,6つのペルソナ(人格・仮面の意)を持つ人物として読み解こうと試みた大作。現代ロシアを考察する上で,欧米においては非常に高く評価されている作品でもあります。著者は,トランプ政権下で米NSCの...

[多様な顔,統合された人格]世界で最も影響力のある人物とも言われるロシアのプーチン大統領を,6つのペルソナ(人格・仮面の意)を持つ人物として読み解こうと試みた大作。現代ロシアを考察する上で,欧米においては非常に高く評価されている作品でもあります。著者は,トランプ政権下で米NSCのロシア・欧州上級部長に任命されたフィオナ・ヒルとブルッキングス研究所のシニア・フェローを務めたクリフォード・G・ガディ。訳者は,濱野大道と千葉敏生。原題は,『Mr. Putin: Operative in the Kremlin』。 非常に実証的かつ体系的にまとめられているプーチン大統領理解のための必読書といった感のある一冊でした。プーチン大統領を一刀両断的に捉えることなく,その複雑さを受け入れながら解説を進めていく筆に,真摯かつ高度な学究姿勢が伺えるかと。解説書的な記述ではないため,読んでいて面白い点も高評価のポイントです。 〜本書の執筆を通してわかったのは,ウラジーミル・プーチンにとって大事なのは,情報が真実かどうかではなく,彼の言動を相手がどうとらえるかである,ということだ。プーチンにとって興味があるのは,特定の現実を伝えることよりも,その情報に対する周りの反応を確かめることなのだ。〜 分厚いですがロシア入門書としても実は良いのかも☆5つ

Posted byブクログ

2017/08/27
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戦略家としてだけでなく、様々な顔を持つプーチンの研究本。読み応えのある、お勧めの1冊。これを読むと、「では、プーチンの弱点とは何か」を深く考えさせられる。

Posted byブクログ