宗教とは何か の商品レビュー
『宗教とはなにか―古代世界の神話と儀礼から』(1997年、NHKブックス)と『宗教をどう生きるか―仏教とキリスト教の思想から』(1998年、NHKブックス)の2作に加筆訂正をくわえて収録しているほか、2編の論考が収められています。 『宗教とはなにか』は、世界各地の神話を紹介しつ...
『宗教とはなにか―古代世界の神話と儀礼から』(1997年、NHKブックス)と『宗教をどう生きるか―仏教とキリスト教の思想から』(1998年、NHKブックス)の2作に加筆訂正をくわえて収録しているほか、2編の論考が収められています。 『宗教とはなにか』は、世界各地の神話を紹介しつつ、同時に、タイラーの「アニミズム」やマレットの「アニマティズム」、あるいはオットーやエリアーデの考察した聖なるものの顕現など、宗教学の諸成果を参照して、宗教が大いなる宇宙生命への畏怖と帰一の感情だとする著者の主張が展開されます。さらに著者は、大いなる宇宙生命への畏怖に始まった宗教が、仏教やキリスト教といった創唱宗教に至ると、人間の悪と罪に対する深い自覚が生まれてきたと論じています。 『宗教をどう生きるか』は、「続・宗教とは何か」というタイトルで収められており、仏教とキリスト教の思想についてわかりやすく解説されています。著者は「まえがき」で「自覚型宗教」と「信仰型宗教」の区別をおこなっています。前者は原始仏教や大乗仏教の相当部分をふくむもので、死や苦の問題から出発し、宇宙の根源的場に自己を放下することで、宇宙的な生命の働きが自己自身に内在していることを自覚することによって解脱や悟りが得られるとされています。これに対して後者は、キリスト教や浄土系仏教に代表されるもので、罪の意識から出発し、そこからの救いを神や仏などの絶対者に自己自身をまかせることが説かれています。本書はこうした二つの種類の宗教のありようがとりあげられていますが、両者とも宇宙の根源的生命への帰一を根本としていると述べられており、この点に著者の宗教のとらえかたが明瞭にうかがわれるように思います。
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