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ハンドブック日本近代文学研究の方法 の商品レビュー

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2024/03/18

2016年初版。 近代文学作品に対するアプローチは近年多様化している。作家を中心に扱うものよりも、作家から自立したテクストを中心に把握するテクスト論が主流になってきている。さらに時代・社会的な文脈や文化的な記号性を重視するカルチュラル・スタディーズという読解も現れ、様々な研究が行...

2016年初版。 近代文学作品に対するアプローチは近年多様化している。作家を中心に扱うものよりも、作家から自立したテクストを中心に把握するテクスト論が主流になってきている。さらに時代・社会的な文脈や文化的な記号性を重視するカルチュラル・スタディーズという読解も現れ、様々な研究が行われている。 情報量の増えた現代、作家を知る手段も増えて詳細に研究され、作家論・作品論・文学史などを始めとするこれまでの研究に加え、サブカルチャーなどを研究の対象にするカルチュラル・スタディーズもますます広範囲に詳しく研究されるようになっている。 この本では研究分野を次のように、Ⅰテクストと読者、Ⅱ作者とその歴史、Ⅲ文化の諸相、Ⅳ歴史と社会、Ⅴ視覚の多様性、の5分野に分類し、さらにそれぞれが5章か6章の論文で構成されている。 ⅠやⅡの分野は伝統的、正統的な論文で歴史を感じる分野であったし、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴの分野はローカルまたは新しい時代の論文と言える。どれも研究としては重要であるはずだが、オリジナルの文学作品が全てなので完璧な論文というものはないという印象を受ける。個人的には作家論や作品論について興味があるし、テクスト論やカルチュラル・スタディーズというものを深めてみたいとも思った。 近代文学の多様な作品を独自の様々な方法で研究できるのが文学研究の特徴だし魅力だろうが、つまるところは文学作品が一番大事で、文学作品ありきの文学研究である、と思ったら元も子もないという気分になってきた。

Posted byブクログ

2018/03/23

最初に書いておくが、読み物として悪くない文章も、そこそこにある。 「卒論を書く人や他領域の人向け」と書いてあるけれど、これをハンドブックとして何かを調べるには個別の説明や解説が圧倒的に足りておらず、「論」としての性質が際立っている。 ハンドブックと題する以上、執筆者は禁欲して然...

最初に書いておくが、読み物として悪くない文章も、そこそこにある。 「卒論を書く人や他領域の人向け」と書いてあるけれど、これをハンドブックとして何かを調べるには個別の説明や解説が圧倒的に足りておらず、「論」としての性質が際立っている。 ハンドブックと題する以上、執筆者は禁欲して然るべきだった。 ちなみに、ある論考では、ネオリベラリズムとリベラリズムの区別がついていなかった。 「私たちのことを他分野の人に知ってもらいたい」と提示するのであれば、あなたたちも他分野のことをちゃんと知って書きましょうね、と卒論指導みたいなことを言いたくなった。 (言うまでもないことだが、ネオリベラリズムは小さな政府を求めるのに対して、リベラリズムは、必ずしも政府による規制(大きな政府)を排除するものではない。)

Posted byブクログ