最後の資本主義 の商品レビュー
ライシュ氏の本はすでに日本語版で何冊か出ていますが、2017年時点では本書が最新になります。原題はSaving Capitalism、つまり資本主義を救え、ということです。ライシュ氏の主張を一言で言えば、今の資本主義は大多数の人間のための仕組みではなく、少数の富める人間のためのシ...
ライシュ氏の本はすでに日本語版で何冊か出ていますが、2017年時点では本書が最新になります。原題はSaving Capitalism、つまり資本主義を救え、ということです。ライシュ氏の主張を一言で言えば、今の資本主義は大多数の人間のための仕組みではなく、少数の富める人間のためのシステムになってしまっているから、そのルールを修正することで資本主義を健全な形に戻そう、ということです。その意味では、訳者解説の中にもありましたが、本人は共産主義者でもアナーキストでもなく、資本主義礼賛者であって、今の「ゆがんだ」資本主義を「健全な」資本主義に戻す必要がある、というのが主眼になっています。 また彼の主張の中心にあるのが、特に米国を中心に起こっている「自由主義」(右)vs.「政府の介入」(左)という政府の介入度合いをベースにした対立はまやかしであって、資本主義のルールが「誰を利するようになっているか」という視点で対立軸を考えるべきという主張でしょう。「自由主義」(右)vs.「政府の介入」(左)という視点は、特に知識人の間では根強く、おそらくその根底には、ハイエクvs.ケインズの論争があります。それに対してライシュの視点は、むしろ資本家と労働者の対立にフォーカスをあてたマルクス色が強いと言えるのかもしれません。ただ厳密に言えば、ライシュ氏自身も本書で述べているように、現代の資本主義では「資本家になった経営者」と労働者の対立と言った方がよいとは思います(つまりストップオプションを大量に付与された経営者と従業員の対立)。 本書で説得力があると感じたのは、米国が過去にも同様の境地に陥った際に、民主主義が最後は機能して、多数のための資本主義、つまり資本主義が民主主義と折り合いをつけた事例をいくつか紹介していることです(19世紀のジャクソニアンの登場など)。それらを事例に挙げながら、ライシュ氏は米国の資本主義はまだ終わっていない、今は修正の時である、と力説されていてそこは希望が持てる点でした。その意味では邦題の「最後の資本主義」というのは少し誤ったニュアンスを読者に与える気がしました。このタイトルだけを見てしまうと、あたかもライシュ氏はアンチ資本主義者であって、資本主義の終焉は近いぞ!と歓喜の声を上げている論者かのような印象を与えてしまいます。ですから邦題は素直に「資本主義を救え」のようなものにした方が著者のメッセージが伝わるのではないでしょうか。
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資本主義の根幹である自由主義は、所有権、独占、契約、破産、執行の5つで構成されているが、それらは富裕層、大手企業に利するようにルールが歪められており、中間層が没落しているというのが、本書の一貫した主張。 市場の失敗を抑制する手段として、公共事業の実施、財政政策、などの政府による介...
資本主義の根幹である自由主義は、所有権、独占、契約、破産、執行の5つで構成されているが、それらは富裕層、大手企業に利するようにルールが歪められており、中間層が没落しているというのが、本書の一貫した主張。 市場の失敗を抑制する手段として、公共事業の実施、財政政策、などの政府による介入があるが、政府自体も富裕層や大手企業など、自由市場から利益を享受しているグループと結託している。それ故に、政府も過度な自由主義を推進することになり、中間層・貧困層と富裕層との格差は拡大してしまう。 能力主義と自由主義が合わさることで、中間層・貧困層と富裕層の分断は一層進んでいる。多くの富を持つことが、価値であると考えられていることで、富を持たない人は、自身の能力不足・努力不足ゆえに、年収が低いのだと屈辱感を覚えてしまう。 マイケル・サンデルの「実力も運のうち」の主張と似ているが、本書は経済的な側面から過度な能力主義を批判している。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
少し前に読んだ「上級国民/下級国民」で本書に触れられていたので図書館で借りた。 ウォルマートの富豪トップ10人のうち6人が相続により莫大な財産を得て、しかも米国の下位42%が所有する富を上回っているという。株主への富豪は政治家とつながり自分たちにさらに有利になるように制度を変えてきた。1980年頃から企業は株価を上げることが使命であるという考え方に変わり、上げるべき労働者の賃金(富)が株主やCEOに吸い上げられ続けている。 トランプ政権は(超)富裕層と貧困層を基盤にしている。労働者の賃金を抑えつつ雇用を確保し、貧困労働者の指示を集め、一方で富裕層に有利になるよう立ち回っている。ライシュの主張にあるように中間層の存在感が希薄だ。 米国の労働長官やオバマ前大統領のアドバイザーを
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アメリカの格差がいかにすさまじいか実際のデータを交えて解説されている。 早く労働者階級から脱出したい。
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政治献金や天下りをエサに自分たちに有利なように市場のルールを変更する各業界の強欲さに呆れ返る 法律の成立を妨害し、法律を骨抜きにし、あるいは執行させないよう予算を削らせる 身勝手の極地だろう 歪んだ資本主義ではなく、資本主義を歪めたのだ こんな市場を誰が信じるというのか ビジネス...
政治献金や天下りをエサに自分たちに有利なように市場のルールを変更する各業界の強欲さに呆れ返る 法律の成立を妨害し、法律を骨抜きにし、あるいは執行させないよう予算を削らせる 身勝手の極地だろう 歪んだ資本主義ではなく、資本主義を歪めたのだ こんな市場を誰が信じるというのか ビジネスマンとしても大統領としてもトランプがでてきたのは当然だと思えた 市場万能という神話は誰がルールを決め、ルールを執行しているかを見過ごさせるというのはもっともな指摘だ 富裕層は嫌がらせのためにこんなことをしているのではない。 ただただ自分のことしか考えていないだけなのだ 昔のように下位層で連帯し、歪められたルールを元に戻すことが必要だというのは賛成する 訳者あとがきで日本はむしろ超富裕層の程度が弱まっているとあったが、これは日本人が逸脱を許さないことと金に対してマイナスイメージがあるせいかもしれない。
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拮抗勢力の衰退、労働組合、中小企業 ※健全で信頼されるカウンターパワーが必要 グローバル化と技術革新は遠心力を持つ、繁栄を分かち合うための抜本的手段が必要 ステークホルダー資本主義対株主資本主義、ステークホルダー資本主義を勝利させなければならない。 新たなルールの構築が必要
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ゲームのルールを作れるだけの権力を保有している人々に富が集まっている。 自由市場は荒野に自生しているわけではない。ルールが市場を創造している。国家がルールを定める。 小さな政府と大きな政府、自由か規制か、の選択は無意味。 どういうルールか、が問題。 市場支配力はどのくらいが適...
ゲームのルールを作れるだけの権力を保有している人々に富が集まっている。 自由市場は荒野に自生しているわけではない。ルールが市場を創造している。国家がルールを定める。 小さな政府と大きな政府、自由か規制か、の選択は無意味。 どういうルールか、が問題。 市場支配力はどのくらいが適当か。正解はわからない。 自己破産のルールの個人と企業の違い。 自由とは、誰にとっての自由か。企業の自由か普通に働く人の自由か。 自然産物には特許は与えられないのが変更された。肺炎球菌ワクチン。製薬会社が自社製品を処方した医師に報酬を払うことは合法。 ミッキーマウス法=著作権法が伸びている。 ゲーブル会社の独占により、ネットの料金が高く、スピードが遅い。 種子を産まない大豆のため、種子会社に依存する農家が増えた。 ICTの独占。アップル、グーグル、フェイスブック、ツイッター、アマゾン、アリババなど。 独占禁止法の適用に正解はない。政治的力を発揮させない視点。この視点を見失っている。経済力の横行によって暗に政治的独占が進行している。 新しい時代の倒産。大手航空会社のすべてが過去20年以内に一度は倒産している。大きすぎて潰せない。 学費ローンは解消できない。 執行の独占。 判事を選挙で選ぶようになった。 給料がその人の価値を決める、というのはトートロジー。CEOの高い報酬はストックオプションによる。 人件費を削るのが株価を上げる短期的な方法。その結果、ストックオプションで高い報酬を得る。売上を上げるよりも、短期的な株主へのリターンを選択する。 自社株買いなど、人件費が増大しないため、長期的な売り上げは上昇しない。 労働者の交渉力が弱まった。グローバル化による人件費の抑制。ドイツは労働組合のちからが強い。ウエルチは、業績が良いときでも人を入れ替える。 失業率が高いことも一因。 GMは労働組合があるが、ウォールマートにはない。 最低賃金を上げると失業が増える、のは言葉のあや。最低賃金は小売サービス業が多いので、雇用の減少はわずか。競争が激しいので物価の上昇もない。 所得格差と教育格差。 相続税の緩和で、働かないお金持ち増加。家族信託は最大90年であったのが無期限になった。王族信託によって、何世代も引き継げる。 私立大学は潤沢な寄付による基金がありその運用益は非課税。公立大学の基金はほとんどなく、補助金は削減されている。公立大学の学生が増えているため一人あたりの予算は少ない。 自由市場か政府か、というのは見せかけの選択。市場の設計、構築、機能させる選択肢が見えにくくなっている。 このままいくとどうなるか。 他人を大幅に裕福にするという理由で、自分にも少しは有利な話を断る1000ドルを二人で分割する実験。 相互不信感の中で、疑心暗鬼、不正行為の横行、などにより世の中はマイナスサムゲームになる。 草の根運動による政治力が減少した。人々は、労働組合、在郷軍人会のような組織にさく時間がない。 アメリカは二大政党以外の選択肢が生まれにくい仕組みになっている。 独占禁止法の活用。製薬会社、クレジットカード業界の寡占を防ぐ。グラススティーガル法を復活。フランチャイズ契約約款の改善、株価吊り上げのインサイダー取引の禁止、法の完全執行、罰金処罰による会社の違反の抑制。 従業員とCEOの報酬比率による法人税の増減。または労働者の給与を上げると法人税率が下がる仕組み。 会社は誰のものか。株主か、ステークホルダー全員か。 株主資本主義とステークホルダー資本主義との違い。合成の誤謬。 ロボットによる労働力の代替。ケインズの「余暇の使い方に悩むようになる」という予言が実現したら。 思考実験=すべてを作ることができる小さな箱があるとする(Ieverything=アラジンのランプの現代版)。ほしいものができても、失業していれば誰も買えない。 多数による大量生産と大量消費が、少数による無制限生産と、それを買える人だけの消費。 十分な拮抗勢力の台頭によって、バランスが保たれるはず。 知的財産の保護は、その1代限りでよい。 相続税の復活で、金持ちの固定化を防ぐ。 ベーシックインカムがあれば、芸術活動やボランティア活動に専念する人も増えるだろう。
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「暴走する資本主義」から10年。その後も富の格差は広がり続けている。本書のテーマは一貫して自由経済と政府の対立軸がなくなっていること。資本主義は自由経済によって健全な競争が保たれる前提だが、資本主義の勝者がゲームに勝つことよりルール(法律)を変えることを優先した場合、富は適切に配...
「暴走する資本主義」から10年。その後も富の格差は広がり続けている。本書のテーマは一貫して自由経済と政府の対立軸がなくなっていること。資本主義は自由経済によって健全な競争が保たれる前提だが、資本主義の勝者がゲームに勝つことよりルール(法律)を変えることを優先した場合、富は適切に配分されずに一部に集中し続けてしまう。 問題定義からその真因分析、そして目指すべき方針まで示された優良図書。
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25年ほど前に著者の本「ワークオブネイション」を大学時代に読み21世紀はグローバル化が進み、国家の最大の役割は人材をつくることになる、そしてもっとも付加価値の高い人材はシンボリックアナリストと呼ばれるものをつくるのではなく概念的思考をする人になる、という内容に衝撃をうけて自分のそ...
25年ほど前に著者の本「ワークオブネイション」を大学時代に読み21世紀はグローバル化が進み、国家の最大の役割は人材をつくることになる、そしてもっとも付加価値の高い人材はシンボリックアナリストと呼ばれるものをつくるのではなく概念的思考をする人になる、という内容に衝撃をうけて自分のその後の職業観、就職におおきく影響をされたとおもう。 あれから26年、著者の予言どおり、世界はグローバル化し、そしてシンボリック穴リストの職業としてインターネット関連、グローバルな金融、バイオなどまさに予言どおりとなっている。 しかしながらそれによって、あらたにシンボリックアナリストがあまりに力をもちすぎて、市場のルールを自らの都合の良いように策定していると主張。その結果、経済格差が進み中産階級が崩壊しつつあると。 自由主義か政府による管理かという二元論にいみはなく、自由主義とはいっても、だれかがだれかのためにルールを策定する、それは誰がだれのためにつくってるのか?ということをみるべきだと主張。たとえば金融業界が強くなれば金融に関する規制緩和が進むし、インターネット業界が強くなればねっとん関する規制緩和が進む。 いくら金融系の社長の能力がたかくても一般社員の1000倍の給料をとる理由はないと。 著者はあまりの巨大格差は資本主義の自壊をうむ、だからそれをふせがないといけない。とくにルールの策定に誰がどのようなロビー活動で影響をおよぼしてるかを情報開示して、チェックしなければと。最終的にはベーシックインカムのような所得を配る政策を実施。とくにAIによって労働力がおきかわるリスクがあるのでBIをすることで、人はついに労働から解放され、ボランティアや芸術に取り組む時代がくると主張。 グローバル化の実相を世界でもっとも早く予見した人が、そのあとの格差を予見できなかった悔恨の書ともいえるが、こういう知的巨人がクリントン政権で労働長官をつとめていたという人材の分厚さにアメリカ政治のすごさを感じる。
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米国で格差が広がっているのは、ウォール街などの富裕層が共和党だけではなくビル・クリントン大統領あたりから民主党にも膨大な献金を行い、富裕層に都合の悪い法律(グラススティーガル法など)は次々に骨抜きにして、特許権の延長などは富裕層に更に利益をもたらすように改訂して来た結果であり、神...
米国で格差が広がっているのは、ウォール街などの富裕層が共和党だけではなくビル・クリントン大統領あたりから民主党にも膨大な献金を行い、富裕層に都合の悪い法律(グラススティーガル法など)は次々に骨抜きにして、特許権の延長などは富裕層に更に利益をもたらすように改訂して来た結果であり、神の見えざる手の所業ではないと糾弾し、下位層から上位層への「事前配分」に終止符を打つ新しいルールを提唱している。トランプ旋風の背景がわかる好著です。著者はクリントン政権では労働長官を務め、オバマ政権ではアドバイザーを務めていたようですが。。。
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