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桜奉行 の商品レビュー

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2017/02/01

初出は2014〜16年の月刊「陽気」(連載のタイトルは「まほらま」) 久しぶりに出久根さんの時代小説を読んだが、幕末の勘定奉行川路聖謨(としあきら)が奈良奉行を6年も勤めていたのは知らなかった。 素材は奈良在勤時の日記「寧府紀事」(寧楽=奈良)で、半月分ずつ江戸の留守宅の実母...

初出は2014〜16年の月刊「陽気」(連載のタイトルは「まほらま」) 久しぶりに出久根さんの時代小説を読んだが、幕末の勘定奉行川路聖謨(としあきら)が奈良奉行を6年も勤めていたのは知らなかった。 素材は奈良在勤時の日記「寧府紀事」(寧楽=奈良)で、半月分ずつ江戸の留守宅の実母に書き送ったと作者は書いている。 陵墓盗掘犯と密貿易グループの繋がりを突き止めて、京町奉行と協力して一網打尽にした事件が骨格となり、いろいろなエピソードが織り込まれている。佐渡奉行時代に救った青年に助けられた話は逸脱だと作者が書いているほどに重要な伏線になっているのだが、この部分はフィクション? 「桜奉行」のタイトルになった、奈良に桜が少ないのを嘆いて植樹活動をした話は巻末のページにエピソードとして載せられているのみで、月刊誌の連載も続いているらしいので、今後続編が出るのでしょう。

Posted byブクログ

2016/12/14

我われ著者のファンでなければ、いかにも物足りないに違いない。激動の幕末を生き、おそらく日本人として初めてピストル自殺をした男、川路聖謨の物語。功績としては、ロシア使節応接掛としてプチャーチンと応接し、日露和親条約に調印するなど華やかだが、それでも一般に知られているとは言えない。そ...

我われ著者のファンでなければ、いかにも物足りないに違いない。激動の幕末を生き、おそらく日本人として初めてピストル自殺をした男、川路聖謨の物語。功績としては、ロシア使節応接掛としてプチャーチンと応接し、日露和親条約に調印するなど華やかだが、それでも一般に知られているとは言えない。そうした偉人を取り上げ、かつその赫々たる部分ではなく、聖謨にとっては左遷であろう奈良奉行時代に、江戸住まいの母に読ませるために綴った日記『寧府紀事』を元に小説を仕上げている。よって、極めて日常的で歴史を揺るがす事象は描かれない。いかにも著者らしい。話が分かり思いやりのあるオヤジ奉行、その最期を想像させないほのぼのとした小説の締めくくりに、心温まる。

Posted byブクログ