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生命パラダイムから歴史と芸術を読む の商品レビュー

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2018/07/26

『歴史哲学への招待』(2013年、ミネルヴァ書房)と『芸術学事始め』(2015年、中公叢書)のほか、2編の論文を収録しています。 『歴史哲学への招待』は、著者自身の立場から歴史哲学の基本問題がわかりやすいことばで論じられています。著者は、歴史の叙述における解釈学的循環の問題につ...

『歴史哲学への招待』(2013年、ミネルヴァ書房)と『芸術学事始め』(2015年、中公叢書)のほか、2編の論文を収録しています。 『歴史哲学への招待』は、著者自身の立場から歴史哲学の基本問題がわかりやすいことばで論じられています。著者は、歴史の叙述における解釈学的循環の問題について解説するとともに、歴史のなかに生きるわれわれ自身が、みずからの置かれている歴史的状況を解釈し行為することで、新たに歴史をつくりあげていくと論じています。このことから、システム論的なことばを用いるならば、われわれの観測は内部観測であり、行為は内部行為であることから、自己観測系として歴史の動態がとらえられなければならないと著者は主張します。 『芸術学事始め』は、生命論的な立場から芸術の見方が論じられています。著者は、原始時代の人類が遺した遺物や、わが国の縄文時代につくられた土偶や土器、さらに能や人形浄瑠璃といったわが国の古典芸能をとりあげ、芸術が宗教的な起源をもっていると主張します。また、「見ること」と「作ること」の連続性を主張したフィードラーや西田幾多郎らの芸術論が参照されるとともに、ゴッホやセザンヌ、あるいは熊谷守一や田中一村といった芸術家の作品について考察をおこない、芸術家の創作活動を生命の自己表現としてとらえようとしています。さらに著者は、シュールレアリズムや現代アートについても言及し、それらが生命論的な意味における神と人間が乖離してしまった時代の芸術のありかたを示していると指摘しつつ、アクション・ペインティングなど偶然性をとりいれた芸術に、うしなわれた聖なるものへの祈りの意義を見いだそうとしています。

Posted byブクログ