幻想の坩堝 の商品レビュー
ベルギー・フランス語圏の幻想小説アンソロジー。奇妙な物語、じわりと不穏な物語が多いです。 お気に入りはエドモン・ピカール「陪審員」。陪審員として判断を下したものの、それが正しかったのかを悩み亡霊に苦しめられる医師の物語。そもそも彼が陪審員に選ばれた経緯にも不気味なものがあって、と...
ベルギー・フランス語圏の幻想小説アンソロジー。奇妙な物語、じわりと不穏な物語が多いです。 お気に入りはエドモン・ピカール「陪審員」。陪審員として判断を下したものの、それが正しかったのかを悩み亡霊に苦しめられる医師の物語。そもそも彼が陪審員に選ばれた経緯にも不気味なものがあって、とても嫌な物語でした。じわじわと不吉が押し寄せてくる感じがたまりません。 フランス・エレンス「分身」は風変わりな物語でした。分身は分身だけれど、まさかこういう分かれ方をするというのは思いもよらなかった。怖くはないものの、なんだか切ない気がします。
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出身地域の公用語に関わらず、 19世紀末から20世紀半ば過ぎくらいまでに フランス語で文芸活動を行った ベルギー出身作家の作品を集めたアンソロジー。 多くはその時代のインテリ層の 神経症的な不安を描出しているように受け取れた。 ノーベル文学賞作家マーテルランク(メーテルリンク)が...
出身地域の公用語に関わらず、 19世紀末から20世紀半ば過ぎくらいまでに フランス語で文芸活動を行った ベルギー出身作家の作品を集めたアンソロジー。 多くはその時代のインテリ層の 神経症的な不安を描出しているように受け取れた。 ノーベル文学賞作家マーテルランク(メーテルリンク)が 阿片に耽溺して夢と無意識の世界を探ろうとする話 (「夢の研究」)を書いていたことに驚いた。 地味だが、しみじみ怖かったのは エドモン・ピカールの朗読劇「陪審員」。 裁判に参加して被告に有罪を突き付けた医師が 罪悪感に苛まれ、 幻聴や幻覚に怯えるようになっていくストーリー。 海辺の街の春分のカーニヴァルに幻惑される ミシェル・ド・ゲルドロード「魔術」が、 祭の夜が放つ魔法と、 朝になって街から憑き物が落ちた様子とのコントラストが 素晴らしく、面白かった。
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