未知への逸脱のために の商品レビュー
『未知への逸脱のために』に収録された二十篇は、様々な書籍からの引用を鏡として挟みつつ、六行詩から散文詩へ変化し、小説に接近したかと思うと発泡して溢れ出し、最後の「女人結界」ではこれまでの流れを一挙に再帰するように複数の形式が並べられる。そうした逸脱する形式の差異と、主題の周囲を巡...
『未知への逸脱のために』に収録された二十篇は、様々な書籍からの引用を鏡として挟みつつ、六行詩から散文詩へ変化し、小説に接近したかと思うと発泡して溢れ出し、最後の「女人結界」ではこれまでの流れを一挙に再帰するように複数の形式が並べられる。そうした逸脱する形式の差異と、主題の周囲を巡るように選び抜かれた言葉並びの乱反射によって、長い歳月に亘って取りこぼされ続けてきたものからなる断層の広がりを露わにする試みがなされている。そこに堆積して過去と未来を繋いでいるのは、喪失したことすら気づけない数多の事柄であるのかもしれない。そう切々と感じさせられた。(西島伝法)
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