花闇 の商品レビュー
皆川博子先生の性癖どストライクなんだろうな、三代目澤村田之助…。 実在の人物の一代記、というていだからか全速前進な皆川節でないように感じた。 いや、時代小説で初期長編小説だからかもだけども。
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3,4年前に隙間時間に読もうと思って買っていたけど挫折してた本。 最近ドラマの仁を見直してて、澤村田之助…?どっかで聞いたぞ…?花闇じゃん!?となり、即再チャレンジすることに。 いやー面白かった〜! 挫折してたのが意味わからないくらい面白かった〜! 本当私隙間時間に読むの向いてない。 没入しちゃうから一気見しかできない。 幕末〜明治に実在した歌舞伎役者で、女形だった3代目澤村田之助の生涯を描いた本。その影として、世話をこなす自身も女形の市川三すじが主人公。 舞台上の怪我が原因で四肢を失いながらも舞台に立ち続けた田之助の激動の人生が三すじ目線で描かれているのだけど、この三すじもなかなかに拗らせている。 そのこじらせ目線で感情剥き出しに描かれているので、生々しいにも程がある。 三すじは田之助を尊敬し、愛し(色んな意味で。)、彼のために尽くす一方、妬み、憎しみといった暗い感情も持つ。だから、ある場面では田之助を敬愛しながら、別の場面では田之助の不運に対し「ざまみろ」と思うこともある。 読者にとっての語り部たる三すじの田之助に抱く感情がこんな感じでユラユラしているのが面白くてたまらない。 登場人物に月岡芳年もいる。以前、友人から月岡芳年の描く赤色はすごい、と教わったことがあって、それ以来作者を知らない状態で作品を見ても、芳年の作品だとわかるようになった。 芳年の赤がなぜあんなに美しいのか、花闇で答え合わせをできた気がする。(たとえ創作であっても、花闇の芳年の描写と美しい赤の理由は私的にかなりふに落ちた) 皆川博子先生、美しい表現だけじゃなくて、歌舞伎を知らない私でもめちゃくちゃ楽しめたので、いろんな作品読んでいこうと思う!
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実在の名女形、三代目澤村田之助。脱疽で四肢を失いながらも舞台に立ち続けた彼の生きざまが、幼少期から見つめ、のちには弟子として傍らから離れなかった三すじの視点で語られます。文字の間に芝居の艶やかな仕草がひらりひらりと見えてくる言葉の選びの見事なこと。一緒に舞台を楽しみながら三すじと...
実在の名女形、三代目澤村田之助。脱疽で四肢を失いながらも舞台に立ち続けた彼の生きざまが、幼少期から見つめ、のちには弟子として傍らから離れなかった三すじの視点で語られます。文字の間に芝居の艶やかな仕草がひらりひらりと見えてくる言葉の選びの見事なこと。一緒に舞台を楽しみながら三すじとなって田之助に寄り添い、後半は一緒に痛みを感じながら壮絶な人生を見届けました。一見必要のなさそうなプロローグとエピローグが読後とても響いてきて、皆川さんらしくてとても好きです。まさしく花と闇、皆川さんだからこその一冊だと思います。
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以前、恋紅を読んだ時に出てきた澤村田之助。「次はあれをやろうこれをやろう」と舞台について話す様子を読みながら、芝居馬鹿はいつの時代も変わらない馬鹿なのだなと思ったりした。全盛期の田之助は傲慢で、子供で、さっぱり惹かれないけれど、心まで腐らせてしまった、最期の田之助は何とも魅力的だ...
以前、恋紅を読んだ時に出てきた澤村田之助。「次はあれをやろうこれをやろう」と舞台について話す様子を読みながら、芝居馬鹿はいつの時代も変わらない馬鹿なのだなと思ったりした。全盛期の田之助は傲慢で、子供で、さっぱり惹かれないけれど、心まで腐らせてしまった、最期の田之助は何とも魅力的だと感じた。
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四肢を失いながらも舞台に立ち続けたという、三代目澤村田之助。 幕末から明治にかけて生きたその俳優の存在を、不勉強ながら初めて知った。 実在の人物でありながら、その生き様があまりにドラマティック過ぎて、ともすれば描写が陳腐になりがちな題材だと思うが、皆川博子氏の筆さばきにそのような...
四肢を失いながらも舞台に立ち続けたという、三代目澤村田之助。 幕末から明治にかけて生きたその俳優の存在を、不勉強ながら初めて知った。 実在の人物でありながら、その生き様があまりにドラマティック過ぎて、ともすれば描写が陳腐になりがちな題材だと思うが、皆川博子氏の筆さばきにそのような心配は無用で、本当に田之助や三すじ、権之助たちが自分の身近にいるかのように、この上なくリアルに感じられる。 幼少時より妖しさを以て放たれる艶やかな美貌、傑出した芸を持ちながらもどこか一部が欠落し傲岸不遜な人格、病を患い周囲の空気が徐々に変貌していくにつれて崩れ始める心身の均衡…。 それを傍で冷徹とも言える眼差しで見つめ、支え続けた三すじの存在。 さらには、他の高名な大立者たちや大部屋俳優らが息づく、芝居小屋の糜爛した熱気。 すべてが生き生きと、確かな実在感を持って迫りくる。 それと同時に、すべてが幻、虚無なのではないか、という相反する感覚を強迫観念のように捻じ込んでくるところもまた皆川節であり、人という生き物の業を上手く描き切っていると思う。 時代が下った場面をプロローグとエピローグに配し、本筋を挟み込む入れ子構造は言うなればありがちな構成ではあるが、それがここまで効果を発揮することは少ないのではないだろうか。 終章に入り、結びに向けて急速に高まる緊張感は尋常ではない。 これぞ小説家の技術の粋というものか。
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実在の人物、歌舞伎役者の澤村田之助を描いた作品。美貌の天才女形が壊疽により四肢を切断し尚、舞台に立ち続け、狂死する、という実話がベース。 四肢を切断しても田之助の歌舞伎にかける情熱がいささかも衰えず、あらん限りの知恵と工夫を重ねて舞台に立ち続ける様子に驚愕した。これだけの才能があ...
実在の人物、歌舞伎役者の澤村田之助を描いた作品。美貌の天才女形が壊疽により四肢を切断し尚、舞台に立ち続け、狂死する、という実話がベース。 四肢を切断しても田之助の歌舞伎にかける情熱がいささかも衰えず、あらん限りの知恵と工夫を重ねて舞台に立ち続ける様子に驚愕した。これだけの才能がありながら、さぞ無念だったことだろう…。 序章を読んで、どんな恐ろしい事になるのかと読み終えるのが怖かったが、さすが皆川先生、きれいに終わらせてくれた。ホッとした~。
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歌舞伎というあんまり馴染みのないモチーフのせいか、ちょっと硬めの文章のせいかなかなか入ってこず……。 読み終えるのに時間ばっかりかかってあんまり内容理解できんかったな。 全体的に淡々としてるからか。うーむ。 四肢を失ってもなお舞台に立つことをやめない田之助の執念が怖くもあり、変...
歌舞伎というあんまり馴染みのないモチーフのせいか、ちょっと硬めの文章のせいかなかなか入ってこず……。 読み終えるのに時間ばっかりかかってあんまり内容理解できんかったな。 全体的に淡々としてるからか。うーむ。 四肢を失ってもなお舞台に立つことをやめない田之助の執念が怖くもあり、変容していく芸の形が美しく咲き誇り、やがて腐乱していく様が物悲しくもあった。
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幕末から明治にかけての歌舞伎界.三代目澤村田之助の壮絶な演じることへの妄執を三すじの目をとうして物語る.愛憎半ばする気持ちを芳年に訴えるところが哀れでもあり,そこまで拘れる人に出会えたことは幸せでもあるのだろう.美しさとは何かという事をとことん突き詰めた芸,この何かに魅入られた世...
幕末から明治にかけての歌舞伎界.三代目澤村田之助の壮絶な演じることへの妄執を三すじの目をとうして物語る.愛憎半ばする気持ちを芳年に訴えるところが哀れでもあり,そこまで拘れる人に出会えたことは幸せでもあるのだろう.美しさとは何かという事をとことん突き詰めた芸,この何かに魅入られた世界,怖いようである.
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澤村田之助、という名を、寡聞にしてこの作品ではじめて知った。歌舞伎も、日本文化のひとつとしての興味こそあれ、見に行ったことさえまだない。当然、世界として体験することもはじめてで、慣れない雰囲気にしばらくは戸惑った。 しかし、物語を通して垣間見せてもらった世界には、見るものを引き摺...
澤村田之助、という名を、寡聞にしてこの作品ではじめて知った。歌舞伎も、日本文化のひとつとしての興味こそあれ、見に行ったことさえまだない。当然、世界として体験することもはじめてで、慣れない雰囲気にしばらくは戸惑った。 しかし、物語を通して垣間見せてもらった世界には、見るものを引き摺り込む凄みがあり、また、巨大なエネルギーが渦を巻いていた。数々の御題目への自主的恭順を経て「きれい」になってしまった現代では感じにくくなっているものだと思う。ナマの感情、熱、冷徹、喧騒、におい……皆川作品ではそうした「生きている」人間が、完成された物語の奥でたしかに息づいている。右へ倣えに変化していくことのできる「社会慣れ」したひとびとへの戸惑いや抵抗の気持ちを抱きながら。……というのは安直すぎる感想だろうか?
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三代目澤村田之助を主人公にした時代小説。 中公文庫、集英社文庫と2度に渡り文庫化されているが(単行本は中央公論社刊)、暫く品切れ状態だったようで、このたび、河出文庫から復刊された。 手元にあるのは確か中公文庫版だったと思うのだが、初めて読んだ時と同様、読んでいると田之助を始めとす...
三代目澤村田之助を主人公にした時代小説。 中公文庫、集英社文庫と2度に渡り文庫化されているが(単行本は中央公論社刊)、暫く品切れ状態だったようで、このたび、河出文庫から復刊された。 手元にあるのは確か中公文庫版だったと思うのだが、初めて読んだ時と同様、読んでいると田之助を始めとする登場人物の『業』にぞくぞくする。視点が付き人というのもいい。 カバーの絵は随分とモダンになったが、これはこれで好きだ。
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