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「正しい政策」がないならどうすべきか の商品レビュー

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2022/02/05

公共政策について、倫理学や哲学がどのように貢献できるのかを、様々なイシューに即して論じた本。本書の立場は、つづめて言えば、問題解決型のアプローチである。つまり、各イシューに関して一般的な哲学的原理を提示してから個別の問題に応用していくという流れではなく、何が問題になっているのか、...

公共政策について、倫理学や哲学がどのように貢献できるのかを、様々なイシューに即して論じた本。本書の立場は、つづめて言えば、問題解決型のアプローチである。つまり、各イシューに関して一般的な哲学的原理を提示してから個別の問題に応用していくという流れではなく、何が問題になっているのか、その状況の理解に努めながら、その問題に対する解決案の様々な立場のメリットとデメリットを比較考量し、議論のすり合わせを行っていくという流れである。またもう一つの特徴として、経験的実証的な知見の重視が挙げられる。ギャンブルや犯罪の章では特に顕著であるが、常識的な見解に反する立場を擁護する際には、経験的な知見を交えながらそれを行なっている。しかし総じて、原理原則に基づく社会の抜本的な刷新ではなく、人々の常識的な判断を尊重しながら、部分的な改善を目指していくというスタイルが貫かれている。

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2021/05/31

知人から借りて読了。訳語なのもあり難しい部分もあったが、印象に残った議論はいくつかあった。個人的には、「安全性」の章で出てくる電車事故の事例が印象的。

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2020/01/07

「哲学者たちは世界を様々に解釈してきただけだったが、大事なことは世界を変えることだ」というマルクスの言葉が端的に引用されるように、社会、とりわけ政策にどう哲学的思索を反映させるかということを情熱をもって取り組んでいる。読み慣れるまで少しとっつきにくいが面白い。 とはいえ哲学者は概...

「哲学者たちは世界を様々に解釈してきただけだったが、大事なことは世界を変えることだ」というマルクスの言葉が端的に引用されるように、社会、とりわけ政策にどう哲学的思索を反映させるかということを情熱をもって取り組んでいる。読み慣れるまで少しとっつきにくいが面白い。 とはいえ哲学者は概して意見の一致よりも独創性を重視する個人主義者かつ論争家であり、彼らは意見の一致を退屈で面白くないものと考えがちだ。妥協は哲学者にとってなじみの概念ではない、のだからこれがいかに挑戦的なテーマであったかうかがわれる。 印象に残った一節(解説より) 「さまざまな政策的課題の背景には道徳的な価値の対立があることを知り、そしてそこに道徳的価値の多元主義−諸価値の対立を収めることのできる至上にして唯一の価値はないこと−を認め、さらには、それゆえに絶対に正しい唯一の政策上の解決策や態度はないことを理解する」「最善の正義を目指すよりも明白な不正義を減らすべく、漸進的な改革を目指す方が重要」

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2018/10/13

いただきもの。英国の政治哲学者ジョナサン・ウルフの著作。公共政策における哲学者の役割を、筆者が参加したいくつかのプロジェクト(動物実験、ギャンブル等々)の議論を通して考えるもの。実際に政策作りに近いところにいたので、ベンタムやミルと比べると原理的というよりは折衷的に見えるが、その...

いただきもの。英国の政治哲学者ジョナサン・ウルフの著作。公共政策における哲学者の役割を、筆者が参加したいくつかのプロジェクト(動物実験、ギャンブル等々)の議論を通して考えるもの。実際に政策作りに近いところにいたので、ベンタムやミルと比べると原理的というよりは折衷的に見えるが、その分現実的でもある。よく見習うことにしよう。

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2018/04/13

一見正しい政策がありそうな問題にも多数の論点があって、そんなに簡単じゃない、という話が延々と続くので、スゴい体力、集中力を求められる本です。休み休みでないと読めません。

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2017/05/26

政治哲学なる学問があり、イギリスでは実際に哲学者が政治の決定に参画して、影響を及ぼしていることに大変驚いた! 日本の政治では、利害関係者や、該当の分野のいわゆる専門家、政治学者、経済学者が委員会等に参加しているが、哲学者が入っているケースは知らない。 この本で展開されているように...

政治哲学なる学問があり、イギリスでは実際に哲学者が政治の決定に参画して、影響を及ぼしていることに大変驚いた! 日本の政治では、利害関係者や、該当の分野のいわゆる専門家、政治学者、経済学者が委員会等に参加しているが、哲学者が入っているケースは知らない。 この本で展開されているように、動物の取り扱いや生殖医療等、倫理的な価値判断が入り、何が正義か一概には決まらない課題が多くなっている。そんな時に、哲学者が論点を整理し、多様な問題点を提起してくれるのであれば、身のある議論ができるのではないたろうか。 生殖医療、AIの軍事利用等、ますます倫理的な価値判断が問われる局面が増えているが、議論を先送りして規制が後追いになってしまっている。取り返しがつかなくなる前に、国会等でもっと身のある議論を行うべきであろう。

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