野草の手紙 新版 の商品レビュー
韓国人の著者ファン・デグォンは、1985年に 国家安全企画部(KCIA)によって国家反逆罪で 投獄されてしまいます。 拷問の末、無期懲役の判決を受けた後、 韓国の民主主義政権が誕生するまでの13年余りを 独房で過ごします。 その間に刑務所に咲く野草や虫たちに目をやり、 育て、研...
韓国人の著者ファン・デグォンは、1985年に 国家安全企画部(KCIA)によって国家反逆罪で 投獄されてしまいます。 拷問の末、無期懲役の判決を受けた後、 韓国の民主主義政権が誕生するまでの13年余りを 独房で過ごします。 その間に刑務所に咲く野草や虫たちに目をやり、 育て、研究することに没頭します。 野草の薬草としての効用を自らの体を使って 試すことによって健康を取り戻し、 この観察による一部始終を妹に向けて 手紙にしたためて送りました。 著者は野草や虫を驚くほど細やかに観察することで、 自然との関わりや人としての在り方について 独自の悟りを開いていきます。 妹への手紙には、ユーモアを交えながら優しい口調で 語りかけるように、野草や虫たちの観察日記とも 呼べるような内容を綴っています。 どの手紙も穏やかで面白く、前向きで、境遇を嘆く言葉は ほとんど見られません。 独房で暮らしている人が書いているということを うっかり忘れてしまうほど。 その世界は広大で、むしろ豊かさを感じさせるのです。 偉大な自然の力は足元に咲く小さな野草ひとつ、 小さな虫1匹にも宿り、それは独房にいながらにして 無限の宇宙を感じることに繋がるようです。 人の傲慢さに気付き、自然とひとつになる 素晴らしさについて語るファン・デグォンの言葉を 読んでいるとワンネスを思わずにはいられません。 コロナ禍のステイホームで始めたベランダ・ガーデニング 初心者の私には興味深いことがたくさん書かれていました。 でも虫についてだけは共感するのは難しく、 己の未熟さを感じました。 とても著者の境地には近づけそうにありません。
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