アジア主義を問いなおす 増補 の商品レビュー
アジア主義を問い直す 本書を手に取る方にまずお伝えしたいのは、太平洋戦争中に喧伝された大東亜共栄圏という思想と、アジア主義は似て非なるものである。たしかに、アジア主義は大東亜共栄圏という思想を胚胎している。しかしながら、そこには本来、戦前の思想として一括りにして戦後社会の中で切...
アジア主義を問い直す 本書を手に取る方にまずお伝えしたいのは、太平洋戦争中に喧伝された大東亜共栄圏という思想と、アジア主義は似て非なるものである。たしかに、アジア主義は大東亜共栄圏という思想を胚胎している。しかしながら、そこには本来、戦前の思想として一括りにして戦後社会の中で切り捨ててはならない重要なエッセンスが隠されている。 本書は、アジア主義と言うものについて明治から現代まで、歴史の流れとともに解説するものである。特に興味深かったのは、昭和研究会によるアジア主義の思想的定義である。三木清は、アジア主義をリベラリズムとファシズムの止揚であり、欧米の帝国主義に対するアンチテーゼとして、東洋諸国がそれぞれ独立して平等な立場での東亜の統一、資本主義社会の是正を目的としているとした。これが、昭和研究会における当初のアジア主義である。そして、当時アジア主義に基づいて東亜の統一をした際の経済体制については、最大の交易国として、アメリカを想定していた。実際に、中国を蹂躙し、アメリカと戦争をした際に唱えられていた大東亜共栄圏という思想とは全くの正反対のものである。 そうしてみると、やはり未だ資本主義社会の是正という達成されていない課題を考える上では、アジア主義も一つの選択肢となりうるのではないか。帝国主義の世の中において、圧倒的な努力により追いつけ追い越せで、そのゲームの中でのトップに近い立場まで日本は来た。戦後も経済大国として躍進をした。しかしながら、現在はESGやサステナビリティのような新ルールにより、またしても日本は後れを取っていると指摘されている。日本は一度ルールを把握できれば強い。しかしながら、どうやってもルールを作る側には構造的に勝てない。そうした中で、ルールを作るという意味で、ビッグピクチャーが必要であり、アジア主義にはそのヒントがあるようにも感じた。
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