きみがぼくを見つける の商品レビュー

サラ・ボーム(著者),加藤洋子(訳者)

2019/05/14

知的障害を持つ老人と片目の犬の物語。草原に小春日和の温かな風が吹き抜ける感じの柔らかな文体なのに、綴られている物語はすごく寂しくて悲しい。亡くなってしまった父親との思い出、面倒を見てくれていた近所のおばさん、掃除もされずに積もった埃やガラクタにも小さな思いが詰まっている。だから忘れられないし、片付けられない。そんな思い出深い場所から、ある理由で逃避行を余儀なくされる。凄く、凄く切ない。「たぶん、ぼくにはどこにも行く場所がないし、行っても無駄なんだ。」最後の数ページでは涙が止まらなかった。
本来なら、社会的弱者には、手を差し伸べて周りで庇護していかなければならない。そんな当たり前の事は頭では理解しているのだが…しかし、自分に守るものが出来たとき(子供や、家族)、やはりriskはできるだけ排除しようとするのだろう。きっとそれが現実なのだ…。

2017/01/16

海辺にひとり暮らす「ぼく」は、雑貨店の貼り紙で見つけた犬を連れ、奇妙な逃避行を開始する。なぜ「ぼく」は「きみ(犬)」を求めたのか? 圧倒的な孤独の底から浮かび上がる、胸揺さぶる驚くべき秘密――。ブッカー賞受賞作家アン・エンライトが「真昼の炎のような作品。美しく、不意を衝く。目に見えないほど幽かなのに、その威力たるや測り知れない」と激賞した、アイルランド文学の話題作。

2017/01/08

世捨て人のように一人で暮らす主人公は、犬の保護センターで片目の犬を引き取り二人で世を避けて暮らす。
そして、自分の育った家を訪ねる旅に出る。

暗くつらい男の人生と犬の接点。男を育て上げた人生の原点をを訪ねる旅の終わりは衝撃でした。

2016/12/18

イギリスの作家サラ・ボーム、2015年発表の小説。

知的障害者の初老の男性と片目で不細工な犬の悲しい物語り。人嫌いで孤独で臆病な男の語りは、しかし詩的で繊細な感動に満ち、限りなく美しい。この文体でもっと心暖まる物語りを読みたかった・・・。