律子慕情 改訂新版 の商品レビュー

小池真理子(著者)

2023/07/30

ひとりの少女・律子の思春期と成長を描く物語。なのですが、これを単なる恋愛小説だとばかり思い込んで長年スルーしていたのはなんとも不覚でした。実はとてつもない密度を持ったジェントル・ゴーストストーリーなのです。
どの物語でも幽霊の影が見えます。だけれどどの幽霊も、決して怨むことも未練を持つこともなく、ただただ自分の愛しい人を見つめてそこにいる、ただそれだけなのです。その存在を感じ取る律子の方も恐怖や違和感を覚えるでもなく、ただその「人」がそこにいることを淡々と受け止める。その「人」がそこにいることが当たり前であるかのように。それがあまりに自然なので、こちらも幽霊に出現に対してまったく身構える気になりませんでした。
とても暖かい物語で、恐怖はもちろん悲愴さすらもないのですが。死んでしまう人たちがどの人も素敵なのが、唯一悲しいです。でもこれだけ素敵な人が周りにいる律子自身が、とても素敵な人なんですよねきっと。

2019/04/23

美人ではないのに男性を惹きつける不思議な魅力がある律子。彼女の成長に関わってきた男子、男性たちもまた魅力的です。亡くなった人と会える力、私も欲しい。