だれも語らなかったすしの世界 の商品レビュー
寿司の歴史の再考といったところの本です。 過去の文献を再定義したり、非常に狭い地域だけに 残されている、絶滅危惧種のようななれ鮨の紹介 など、確かに誰も過去には語っていなかったの だろうと、変なところで納得してしまう、寿司マニア のための一冊です。
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すしの本、といえば江戸前寿司、と思ったら大間違い。 大判横書きの学術書めいた内容である。すしの研究をみるとき、それは自然科学の分野からのアプローチと人文科学分野からのアプローチとに大別される、そうだ。 文化的だけみるなら後者だけでいいが、本書は両方を取り扱う。 で、江戸前寿...
すしの本、といえば江戸前寿司、と思ったら大間違い。 大判横書きの学術書めいた内容である。すしの研究をみるとき、それは自然科学の分野からのアプローチと人文科学分野からのアプローチとに大別される、そうだ。 文化的だけみるなら後者だけでいいが、本書は両方を取り扱う。 で、江戸前寿司なるものはほとんど出てこない。というか、江戸前寿司は定義がないそうだ。少し大きく広げて握りずし、としても、それ自体をすしの研究に登場させるだけで、論文ではないと思われる風潮すらあるそうだ。 というわけなので、基本的にはすしといってもなれずし、である。すしの前途は、一部の握りずし以外は風前の灯である。 僕はわりとなんでも食べるのだが、はじめて鮒ずしを食べたときにそのまずさ…って書いたらいけないか、独特の味についていけずにトラウマ化した。なんでも喰うはずの自分が崩れてショックだった。その話を知人にすると、それはきっとよほどまずい種類の鮒ずしにあたったのだ、ちゃんと作られた鮒ずしは美味しいが、手抜きをして鮒の種類が違うやつがあって、それはイケてないのだそうだ。でも再チャレンジ出来ていない。 本書は、すしは文化か、握りずしはどうか、などとアイデンティティを問いながら東西のすしを紹介し、民俗的視点で説く。そのこと自体は大変に興味深い。先日もとあるところで箱ずしをいただいた。海のないその地域で、どのようにしてそのすしが生まれたのか。地域のすしは本当に面白いのだ。 本書にはカラー写真もなく、まったくストイックな本ではあるが、それでも食欲が出ちゃうものだね、人って。
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