日本近代の歴史(1) の商品レビュー
歴史専門出版社の吉川弘文館による通史「日本近代の歴史」シリーズ第1巻。対象時期は1867年-1873年、「慶応3年12月政変(王政復古政変)」から「明治6年10月政変(征韓論政変)」まで。この時期を含む通史は一般に、幕末期と合わせて1冊にまとめるか、あるいは維新期のみの場合でも...
歴史専門出版社の吉川弘文館による通史「日本近代の歴史」シリーズ第1巻。対象時期は1867年-1873年、「慶応3年12月政変(王政復古政変)」から「明治6年10月政変(征韓論政変)」まで。この時期を含む通史は一般に、幕末期と合わせて1冊にまとめるか、あるいは維新期のみの場合でも1877年の西南戦争まで含むことが多く、本書のような時期区分は異例と思われる(著者のあとがきによれば当初は幕末期も叙述する予定だったが、文量が大幅に超過しこのようになった次第という)。ただし、地租改正の展開に関しては1874年以降にも言及してはいる。 内容は専ら「国制」史中心で、維新期の統治機構のめまぐるしい変化を正確に跡付けている。江戸時代の政治システム(特に地方制度や土地制度)がどのように解体し、新しいシステムに移行したのか、一般向けの通史としてはかなり詳しく述べられており、この分野に関しては非常に勉強になる。他方、外交関係や社会史・生活史、あるいは文化史などは薄く、通史に「全体史」的な枠組を求める向きには不満が出よう。「縷述」「雁行」といった堅苦しい言い回しが多いのも、若い読み手には辛いかもしれない。
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