気骨 の商品レビュー
「刑事裁判の本質は権力批判である」。「筆者は、裁判官時代から、刑事裁判官の仕事の核心は、検察批判であると考えていた。」 この本は、変則的な作りになっていて、石松竹雄元裁判官が、①多大な影響を受けたという網田覚一元裁判官をその生い立ちから任官後退官までの軌跡を紹介しつつ、②石松さ...
「刑事裁判の本質は権力批判である」。「筆者は、裁判官時代から、刑事裁判官の仕事の核心は、検察批判であると考えていた。」 この本は、変則的な作りになっていて、石松竹雄元裁判官が、①多大な影響を受けたという網田覚一元裁判官をその生い立ちから任官後退官までの軌跡を紹介しつつ、②石松さん自身の経験を語り、さらに③安原浩元裁判官が、石松さんにインタビューした問答を随所に挟むという、3つの柱が入り混じったような構成になっている。 網田さんの、「自分にできないことは被告人に要求しない」、「法は人を生かすためにあるのであって、それを守ることによって人が死を選ばねばならぬような法の順守は人に要求できない」という信念(→闇米の裁判)。 専ら執行猶予にするために判決言渡しを10か月半後に指定するのはさすがに賛否両論…?(賛否両論どまりであれば訴訟指揮は尊重されるべしか。) 付審判請求手続の審理方式に関する裁判例は、この石坂裁判長によるものだった。なるほどという感。 ただ、どうかと思った点が2点ほど。1点目は、夫の妻への暴力が当たり前という感覚が何回か前面に出ていて(竹箒での殴打・剃刀で頭髪切り取った傷害に可罰的違法性がないという無罪判断)、記録として意味があったとしても、気分が悪かった。2点目は、堺支部で少年審判を担当されてた際、観護措置決定前の少年を施設の関係で堺拘置支所に72時間仮収容し、昼間座位を保ったまま独居して過ごさねばならないのを利用して、多く反省を得ていたということ。非行事実に関する審判も経ていないし観護措置決定の要否も未決定の段階での身柄拘束を「利用」するのはまさに人質司法と言われても仕方ないのでは。
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