大東亜忍法帖(上) の商品レビュー

荒山徹(著者)

2020/03/24

http://denki.txt-nifty.com/mitamond/2016/10/post-2c25.html

2016/10/30

クトゥルー小説レーベルが贈る、荒山徹の山風オマージュ歴史活劇（朝鮮要素抜き。

荒山作品の特徴として、大きい部分としては朝鮮史が絡む作品が多いことがあるのですが、もう一つ、作中所々に他の歴史伝記小説や昭和のTVドラマ、映画等へのリスペクトを惜しげもなく盛り込むことがあります。本作においては、後者の要素が他作品に比べて抜きんでて凄まじい。

なんで幕末時代伝記読んでて『ガンダム』のジャブローのネーミング由来を知ることになってしまったんだ俺は。

「敵の編成」が終わった後、彼らが集合するシーンについては某TVドラマをたとえに用いてテーマソングの作曲者まで指定してあったりで捧腹絶倒ものなのですが、しかしそれがかえってこの重要なシーンに「決して忘れえぬインパクト」を与えているあたり油断がならない。

登場人物にも有名な人が多いし、実は荒山作品の入門編としては(ある意味)とっつきやすい部分もあるかもしれません。

しかし気付けば「クトゥルー」というジャンルも相当懐の深いものになっているのだなぁ…

2016/10/26

この作品、山田風太郎の名作『魔界転生』とクトゥルーをコラボしたものだ、という事だ。
その真価ははおそらく下巻でということなのだろう。
というのは、上巻にはあからさまなクトゥルーは出ていない。チラッチラッと、「出たか？」という断片的要素が登場するくらいなのだ。
しかし、面白い。
怪しげな陰陽師が世界を転覆せしめるため、手駒を集めるというのが上巻だ。
舞台は明治維新前後。
集められる手駒は、なんと、その時代の名剣士たち！
誰がいるのか？
たとえば、千葉周作。
たとえば、土方歳三。
たとえば、人斬り以蔵。
総勢、十二名がどうやって集められるのか？
ひとりひとりのシチュエーションが凝っている！
十二回きっちりやってくれているところも嬉しい。
奇しくも、佐幕派、倒幕派が半々となり、そこも面白い。
プラス、特別出演の鯨さんが非常に美味しいキャラとなっている。
彼のルサンチマンは、共感する人も多いかもしれない。
なお、陰陽師の台詞には、「？」と思われる部分が幾つかある。
おそらく、下巻に通じる伏線と思われる。
刮目して下巻を待て。