日本環境教育小史 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
日本の環境教育の歴史的な展開を数多くの文献や筆者自身の調査研究の結果から整理したものであり、環境教育に関わる教員や研究者、非定型教育での実践者などにとってとても価値のある書籍です。 そもそも、環境教育とは何かという問題がある。その一つの答えとして、筆者は、ベオグラード憲章の記述から、制度的・行政的な方法や補助金などを「対症療法」として対比しつつ、環境問題を起こさない社会の基盤づくりという意味で、環境教育は「根本療法」であると述べています。 私が本書を通して最も考えさせられたことは、環境政策への環境教育の位置づけた場合の目標設定の在り方についてです。筆者は、1970年代から重視されてきた環境配慮行動に言及しながら、環境教育の結果・成果として「行動」を強調し過ぎる傾向を危惧しています。1977年の環境教育政府間会議(トビリシ会議)の成果であるトビリシ勧告では、環境教育の目的が1975年のベオグラード憲章よりも具体化され、気づき・関心、知識理解や態度の獲得に加え、「行為・行動の変革」が求められました。日本では、第1次『環境基本計画』(1994年)で環境教育が環境行政施策の1つの手法と位置づけられ、「行動」の過度の強調を生んでいったと本書では述べられている。環境行政施策に位置付ける場合、財政措置は教育部局以外で行われるケースが多いと思われるが、学習者の行動の変化とそれに伴う環境の保全の達成をどのように解釈していくかが重要な政策課題であると考えさせれれました。
Posted by
- 1