時間衝突 新版 の商品レビュー

バリントン・J.ベイリー(著者),大森望(訳者)

2024/06/12

ここ10数年の読書歴の中でもおそらく初めて。
読みかけのまま途中で「ギブ・アップ！」を宣言して本を放り出したくなったのは。
それでもなんとか、挫けそうな心に幾度となく鞭を打ちつつ、辛うじて最後の1ページまで読み終えることが出来たのは、両親から「テーブルに出された食事は、たとえそれがどれほど不味かろうが、残さず最後まで食べなさい」と厳しく躾けられた「戒律」みたいなものに突き動かされたから、だろうか。
一言で云えば、難し過ぎた。著者の独創性、アイディア、ビジョンについていけるだけの知識、理解力、想像力を持てぬ我が身の至らなさを痛感させられた。その意味では罪作りな一冊だ。読者を選ぶ本とも云えるだろう。
この一冊を初見で読後に「面白かった！」「楽しかった！」と心底喜べる読者を、ワタクシは心の底から深く静かに尊敬したい。

2019/09/20

「時間の流れが全宇宙で絶対に一つしかないと言っているのは誰だ」と著者が主張しているかのようなSF作品。複数の時間の流れが衝突する危機を迎える地球があり、航時マシンで過去や未来（ここでいう過去も未来も私たちが認識しているものとは違う概念なのだけれども）に行ったり、宇宙人や異種生物がいたりと、面白いものてんこ盛り感がある。時間の概念を変えることで、著者が奇想したものが驚くべき物語になる。

気になったのは人種差別的な内容があること。エンターテインメントの範囲ではあるが、白人がすべてで黄色人種は人間として扱われないのは、読んでいて辛かった。

2017/01/15

SF。時間。タイムトラベル。
背表紙のあらすじに惹かれて読みはじめ、あらすじ通りに進む4章までは非常に面白く読めた。
しかし、それ以降の章は人種間の抗争や政治的問題にテーマが移行し、好みではなかった。
アイデアを評価されるのは納得。
この作風なら、短編が合いそうな印象。

2016/11/26

トンデモ時間理論つぎつぎと繰り出され、イーガンみたいに「もっともらしさ」はないので難しく読む必要はなく、単純に楽しんで読めばよい。

2016/11/04

ホーガンほどバキバキのハードSFでもなく、『月は無慈悲な〜』のような政治色もほどよくありつつ、サラッと読めるおもしろSFだった。

2016/10/14

新装版。
復刊された『カエアンの聖衣』が面白かったので購入したが、色々な意味でぶっ飛んでいるというか、規格外の長編だった。ハヤカワからもまた出ると言うから、そっちも買おう……なんかこう、瑕疵はあるが面白過ぎるわw

2016/09/30

時間SFにはちがいないんだけど、じつはそこにはあまり重点がないような。いや、時間流が唯一のものではなくて、地球上で正反対の時間流が衝突しようとしている、というのはすごく衝撃の発想なんだけど、小説全体では、支配層と被支配層、人種差別、抵抗組織なんかの描かれるディストピアSFという色合いのほうが強かった。そうなると、舞台は宇宙でも（そして時間流をあやつるこまかい技術なんかがあったとしても）けっきょくは人間のどろどろか～という感じにもなってしまう（個人の感想です）。

レトルトシティ（なんでレトルトなんだろうｗ）の被支配層がテクノ系のオタクの集合体みたいな感じで、自分たちの仕事に誇りを持ち、上の世界でのうのうと暮らしている人間たちを哀れんでいる「自発的奴隷」っておもしろい(^_^;;　赤ん坊のときに分けられちゃうんだから、ひどい社会構造ではあるんだけど、低賃金長時間労働非正規雇用で若者が苦しんでいる今の日本よりマシだったりして、とか思っちゃった。

そういういろんな思考を誘発するのだから、やっぱりすぐれたSFなのかな。