ひつじのドリー の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
あんたは自分の息子よりも銃を愛しているんだね。 銃は自分では撃てないんだ。 撃て、引き金を引け、おれだけでは撃てないのがわからないのか? くつに住む一家 より 子供のための、と書かれていますが大人でも十分楽しめる、また考えさせられる小説、あるいは童話集のようでした。 ひつじが国連に行く、無生物である鍋が意志を持っている、犬や狐は人と言葉で疏通をかわす、など。擬人化という手法は確かにすんなりと子どもの心を掴むかもしれませんが、物語はどこまでもシュールでグロテスク。直接的な表現ではないにしろ、皮肉を込めて疑問を投げかけられているような気持ちになります。問いに答えはなく(正解はあるはずですが)、ただ考えることに意味があり、正しさに導くにはどうすれば良いか。 あとがきには、本書がイタリアの小中高で教材として扱われ、子どもたちと討論したりするそう。最も大切なことは対話なのかもしれません。
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“子どものための物語”ということで、読みやすく、サクサクあっという間に読み進む。 クローン技術で生まれた羊の騒動や、出身・容姿に自信がある鍋蓋が庶民のキッチンで不本意な使われ方をしたり、金持ちに飼われる血統書付の犬が友達の野良犬を救出する話など。 教訓譚のような、童話のような。 ...
“子どものための物語”ということで、読みやすく、サクサクあっという間に読み進む。 クローン技術で生まれた羊の騒動や、出身・容姿に自信がある鍋蓋が庶民のキッチンで不本意な使われ方をしたり、金持ちに飼われる血統書付の犬が友達の野良犬を救出する話など。 教訓譚のような、童話のような。 ほっこり心が温かくなると思ったら、かなりブラックな話もある。 不思議な読後感の短編集。
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子供に読んでほしいとのことですが、確かに小学生位の女の子に向かって書かれているんですけども、とにかくきっちり「現実」という毒が遠慮なくむしろ必要以上にリアルに描かれてるのが驚き。 色んな立場の動物や器物が主人公で「くつに住む一家」ってのはかなり残酷な話なんだけど、何かを暗示して...
子供に読んでほしいとのことですが、確かに小学生位の女の子に向かって書かれているんですけども、とにかくきっちり「現実」という毒が遠慮なくむしろ必要以上にリアルに描かれてるのが驚き。 色んな立場の動物や器物が主人公で「くつに住む一家」ってのはかなり残酷な話なんだけど、何かを暗示してるのかな?表面上はうまくやってるけど何かをきっかけに全て雪崩れのように壊れてしまうということを現してるのかな? ひたすら爽やかな作品もあり、苦悩する様子などの気持ちの面で、少女の年頃が感じとる感覚を繊細に表現している。
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著者、ダーチャ・マライーニはイタリアの作家・詩人・劇作家。 本書は「子どものための物語」として編まれた10の「教訓譚」である。 主人公は、ひつじであったり、エナメルのくつであったり、古ぼけたお鍋であったり、こびとであったり、さまざまである。どこか弱さを抱えたり、他者との違いに悩...
著者、ダーチャ・マライーニはイタリアの作家・詩人・劇作家。 本書は「子どものための物語」として編まれた10の「教訓譚」である。 主人公は、ひつじであったり、エナメルのくつであったり、古ぼけたお鍋であったり、こびとであったり、さまざまである。どこか弱さを抱えたり、他者との違いに悩んでいたり、世界と折り合えずに惑っているものが多い。 表題作の「ひつじのドリー」はもちろん、1996年にスコットランド・ロスリン研究所で誕生したクローン羊から採られている。 ひつじたちが住む牧場。ある日突然、そのうちの1頭である「ドリー」が2頭になる。どちらも自分が本物だと言って譲らない。さぁ、本物はどちらなんだ? 全般にどの作品もセピア色のいささかシュールな世界が広がる。 死んで毛皮のコートになった母ぎつねが縫い合わされて生き返ったり、こびと夫婦から異様に細長い子どもが生まれたり、キャベツと天使が入れ替わったり、マジカルな筋立ても多い。 挿画は日本版独自のもののようだが、この繊細で淋しく不思議なタッチが物語の世界観をよく表しているようにも思う。 「教訓譚」といえば教訓譚ではあるのだが、単純な文明批評というよりも、子どもたちが自分の頭で考えられるための種を蒔くような、そんな試みのようにも感じられる。 「ドリー」の話では、最終的に牧場主がすべてのひつじをクローンにしてしまい、牧場は大混乱に陥る。そこでおばあさん哲学者のひつじが解決に乗り出すのだが、彼女の出す結論がなかなか辛辣である。侃々諤々の人間たちを目の当たりにして、「結局人間たちも合意に至っていない。ひつじ仲間で解決しよう」と決めるのだ。 そう、どんな良識だって、他人から押しつけられるようなものではない。自分たちで考え、自分たちで折り合いを付けてこそ、価値があるものだろう。 友だちの野良犬を助けようと奮闘する血統書付きの犬。母を助けようと知恵を絞る子ぎつね。 困難があっても、彼らは自分の力で何とかしようと小さな足を踏みしめる。 そうしたお話にはふわりと優しい結末が訪れる。 個人的には「こびと夫婦の娘スピル」と「ローマの犬」がよかった。 不思議で独特な読後感は記憶に残りそうである。 *訳者あとがきにさらりと書いてあるのですが、著者は戦前からしばらく日本で暮らしていたのだそうです。父は民族学者でアイヌ文化研究のため来日。札幌で暮らし、後、京都に移り、その際に第二次大戦勃発。ところが両親がファシズム政権に抵抗して「忠誠書名」を拒んだために名古屋近郊の強制収容所に軟禁され、終戦までの2年を過ごします。そこで空襲や大地震の恐怖を味わい、小石をしゃぶって飢えを凌いだのだとか。そうした体験が後の創作活動に影響を与えているのは間違いなく、そう思って本書の作品を読み直すとまた一段深い味わいがあるように思います。 日本の幼少時の体験は、別途、本書の翻訳者が著者に聞き取った形の書籍があるようです。北大の宮澤・レーン事件の記載もあるようなので、機会があれば手に取ってみたいと思います。
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シュールな童話のような短編集。 「くつに住む一家」「こびと夫婦の娘スピル」「ローマの犬」「きつねの毛皮」がわりとすき。
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イタリアの高名な作家が、敢えて書いた児童文学というと、ついブッツアーティやカルヴィーノ級のものを期待してしまう。またはピウミーニやロダーリが書いたような、普通の児童文学ではなかなか出会えない一風変わったものなど。 期待が大きすぎたのか、途中でやめるほどつまらなくもないのだけど、そ...
イタリアの高名な作家が、敢えて書いた児童文学というと、ついブッツアーティやカルヴィーノ級のものを期待してしまう。またはピウミーニやロダーリが書いたような、普通の児童文学ではなかなか出会えない一風変わったものなど。 期待が大きすぎたのか、途中でやめるほどつまらなくもないのだけど、そこまで破天荒でもアイロニカルでもブラックでもないし、しゃれてもシュールでもないのだった。(いや、そこそこその要素はあるのだけど、期待したほどではないというか…) 挿絵はとてもいい。内容にもあっているし。「くつに住む一家」や「ローマのキャベツ」「きつねの毛皮」なんかはまあ面白かったかな…。再読するほどではないが。
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