あるアーティストと悪がきだったぼくのこと の商品レビュー
シェーン・ピーコック作、ソフィ・カーソン絵、おびただす訳『あるアーティストと悪がきだったぼくのこと:アルル時代のファン・ゴッホの物語(RIKUYOSHA Children & YA Books)』(六曜社) 2016.8.25第1刷 2020.1.28読了 ゴッホの絵...
シェーン・ピーコック作、ソフィ・カーソン絵、おびただす訳『あるアーティストと悪がきだったぼくのこと:アルル時代のファン・ゴッホの物語(RIKUYOSHA Children & YA Books)』(六曜社) 2016.8.25第1刷 2020.1.28読了 ゴッホの絵に関する絵本かと思って借りてみたら、ゴッホをテーマにした創作絵本だった。アルル時代の、おそらくはゴーギャンと共同生活を送る前のゴッホと、悪がきだった「ぼく」の出会いの物語。ゴッホはアスペルガー症候群だったという説もあるが、作者によれば、ゴッホはアルルでも公然といじめの標的にされていたらしい。少年だった「ぼく」は、大人と一緒になってゴッホをからかい続けるただの悪がきだった。 ところが、ある時、創作に没頭しているゴッホのカンバスを背中ごしに盗み見て、ゴッホの見ている世界を知る。「ぼく」もよく知っているはずのこの世界を、ゴッホがどういう風に見て、どういう風に描いているのか。ゴッホの眼を通して映る世界の美しさを知ると共に、自分の醜さを思い知る「ぼく」。後年、孫を引き連れて、ゴッホの絵の前に立ち、当時の過ちを悔い、いまだに深い反省の中にいる「ぼく」は、もう決して彼のことを笑ったりしないと誓う。その間に要した時間は50年か60年か。「ぼく」はきっと辛い人生を送ったに違いない。世界の美しさなんて知らずに、自分の醜さに気付かなかった方がどんなにか幸せな人生を歩めたことだろう。でも、「ぼく」は不幸にも知ってしまった。「ぼく」は不幸な人生だったかもしれないが、人間の一生は幸か不幸かでしか測れないのだろうか。「そうではない」とこの絵本は言っている。この世界の真実に気付いてしまったという不幸が「ぼく」を大人にさせた。「ぼく」には、いまだに生き続ける意味があって、守るべきものが確かにあるということを知ったのだ。 URL:https://id.ndl.go.jp/bib/027535308
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原題はThe Artist and Me ゴッホをからかい、あざ笑っていた少年の話。 背中ごしにゴッホの絵をのぞいた少年は、ゴッホの描く絵に圧倒されます。 「これまでの世界が、いっしゅんにして ぐんぐん大きくなり、どんどんかがやき はじめたのですから・・・
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