下級武士の食日記 増補版 の商品レビュー
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下級武士という庶民に近い階級の生活内容は面白かった。 食事の描写が上手く、読んでいるとお腹が空く。 幕末という時期もあってか、肉を当たり前のように食べており、それまでイメージしていたものとは違うことにも驚いた。 御三家の藩士で江戸勤めということと、「衣紋方」という職業(?)のためなのか、かなりお気楽な生活をしておりうらやましい。 個人的には昔の食事は現代ほどうまくないと思っているが、それでも作中の食事の様子は美味しそうで(たまにひどい目に遭っているが)、帰宅途中に読むのは空腹感が増して辛くなるほど。具体的な食事の様子が描写されているわけでもないのに、無性に食べたくなる。 食べているものは魚や魚介、味噌や蕎麦など質素な物が多いが、よく酒も飲んでおり、仕事も半日なので生活を楽しんでいるようである。 伴四郎は終盤の長州征伐時にも戦闘の直前までお気楽な様子を見せており、豪胆なのかすさまじく鈍感なのかよくわからないところがある。日記を細かく付ける点や、普段の生活、家族への贈り物などから神経質(マメ)な性格であるはずなので、この戦時の態度や藩主との接見時の態度など、時折見せる肝が据わった様子に大人物のような印象も受ける(本人の日記なので良いように脚色されているだけかもしれないが) 気に入らない点は二つあり、一つはルビが振られている部分が少ないこと。 古い時代の風俗や地名などはルビが無いと読めないものも多く、物語への没入感がそがれる。 もう一つは、説明不足な部分がある点。当時の貨幣価値の現代への換算や、江戸期の中でも前期と幕末では(インフレにより)全く貨幣価値が異なることの説明がある(←この説明は簡潔ながらわかりやすくて良かった)一方で、時間や当時の風俗に関しては説明不足な点がある。 特に時間については現代の時間の注が付いていなければ全く不明という不親切さで、これも物語への入り込みを浅くする感じがする。
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幕末。桜田門外ノ変の少し後の江戸。 単身赴任中の和歌山藩士の日記をもとに、当時の食生活が詳しく書かれています。おもしろい。こんなにのんびりした幕末もあったのか。等身大の武士の暮らしが、とても魅力的です。 違う角度からの幕末を楽しめました。
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残された日記兼家計簿から食生活や当時の文化を読み解いていく感じが磯田道史さんの著作を読んでるときを思い出しました。こちらはまだはっきり日記ですが...。昔の暮らしが分かるのはこうやって研究して分かりやすく伝えてくれる研究者の方々がいるからなんだなとしみじみ。内容自体は当時の生活を...
残された日記兼家計簿から食生活や当時の文化を読み解いていく感じが磯田道史さんの著作を読んでるときを思い出しました。こちらはまだはっきり日記ですが...。昔の暮らしが分かるのはこうやって研究して分かりやすく伝えてくれる研究者の方々がいるからなんだなとしみじみ。内容自体は当時の生活を楽しみながらさらっと読めるご飯本です。
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どじょうや寿司 そば 団子などの外食買い食いから 質素倹約を主とした長屋の自炊食生活まで 勿論金額も書いてあるので すっごく面白い 食がメインの日記ですが 上司(叔父)や同僚への愚痴もあり 和歌山の妻子を思ったり すごく共感できる
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江戸時代の下級武士の生活が垣間見得て、おもしろかった。いつの時代も食は、癒しになり得るんだなと思いながら、孤独のグルメを彷彿とさせました。
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幕末の和歌山藩士、酒井伴四郎が江戸へ単身赴任することに。その時の日記をもとに、庶民がどのような食生活をしていたのかを紹介する。
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下級武士でも結構楽しそうないい生活してるね。御三家だから?江戸時代の人が何食べて何してるか伺えて楽しかった。
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幕末に紀州藩の衣紋係りで江戸藩邸に出府してきた下級武士の日常生活を中心に江戸時代の文化や生活習慣などをわかりやすく解説した一冊。 日誌の内容を解説・分析した本は他にもあるが、この一冊はそこから話題を江戸の名産物、酒、食文化(紀州と江戸の比較も)、貨幣制度、江戸詰武士の生活ぶり、出入りの商人、江戸の観光地などに話を広げて説明しているので、当時の生活が分かりやすい。 また、今回の改版に伴って巻末に主人公の2度目の江戸出府、第二次長州征伐の様子なども少し記述されていて、面白い。 この時代の資料がもっと発見されて、また本が出版されることを期待します。
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下級武士の日記から,江戸での暮らし,食生活,日々の仕事などを読み取る. 仕事といえども今のサラリーマンのような詰め詰めで働いているわけでもなく,のんびりしていた雰囲気. 食生活も読んでいて現代の一般市民とあまり変わらないのかなと言う印象.自炊し,たまにご馳走やお酒をいただき,時...
下級武士の日記から,江戸での暮らし,食生活,日々の仕事などを読み取る. 仕事といえども今のサラリーマンのような詰め詰めで働いているわけでもなく,のんびりしていた雰囲気. 食生活も読んでいて現代の一般市民とあまり変わらないのかなと言う印象.自炊し,たまにご馳走やお酒をいただき,時には外から出来合いのものを買ったり外食し,たまに飲み過ぎで失敗する. 江戸時代は戦争がないから武士は消費するだけの存在だったとどこかで聞いたことがある.(この本の主人公は江戸で装束関係の仕事をたまにやっていた.装飾関係の公務員といったところか) この人は下級武士だからまだマシだったんだろうけど日記を書き記せるほどの学や余裕すらない農民や漁師がこの人たちを支えていたんだろうなあ. 料理のバリエーションはとても豊富.ウナギ,寿司,天ぷら,そばといった馴染み深い料理も多々. 食材も豊富で陸の肉,海の肉,果実,野菜などなど.ただし現代では当たり前だけど当時の日本にはなかった食材は当然出てこないのでそういうところが和食らしさに繋がるんだろう.牛肉,ニンジン,ジャガイモ,ピーマン,白菜,キャベツなどは見かけない. 肉ぐいは禁忌:ただし猪や鹿は滋養強壮・薬という位置付けで食べられていた.
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食べるのが好きだったんだろうな、と思ってしまう。 幕末の動乱期とは思えないほどのどかな雰囲気。 下級武士のせいか、生活ぶりが何となく現代の私たちとも共通する部分があって親しみを感じる。 時代背景などの解説も丁寧で、二度美味しい感じがする。
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