とっぴんぱらりの風太郎(下) の商品レビュー
気合いの入った力作! ですが…:
2022年5月読了。 「鴨川ホルモー」で心を奪われて以来、ずっとずっと大好きだったのですが、「偉大なる…」で心底ガッカリしてしまい、万城目先生の著作からは一歩引いておりました。 ある日、「久々の大作!」と書店で見かけて購入したものの、長らく積ん読しておりましたが、縁有...
2022年5月読了。 「鴨川ホルモー」で心を奪われて以来、ずっとずっと大好きだったのですが、「偉大なる…」で心底ガッカリしてしまい、万城目先生の著作からは一歩引いておりました。 ある日、「久々の大作!」と書店で見かけて購入したものの、長らく積ん読しておりましたが、縁有って今回読破いたしました。 「本当は熱い歴史小説が書きたいんだけど、時代的にありきたりに思われたら嫌だから、作者独特のとてもヒン曲がった角度から歴史を描く」と云う稀有な作家さんだとズ~ッと思ってきたのですが、 やっぱり此処(大坂の陣の時の京大坂!!!)の部分だけは、同時代の視点で描かなくてはいけないと、思い入れ充分で望まれたんだろうなぁと推察しました。 いつもの万城目テイストに、「トヨトミ…」へと繋がる物話をこのボリュームで描ききった労力には、先ず拍手を送りたいです。 ですが、今回の小説を読んでいて強く感じたのは、いつもの万城目テイストと、この時代の(正にこの時期の)錯綜する政治情勢や混沌とする戦争状態とでは、物語として快適に読み進められるペースが合っていない印象を強く感じました。 京都の市井の生活から、大坂の陣前後の世相をふんわりイメージさせながら始まるのは、いつも通りで良かったですし(京~大坂間の物理的・心理的な距離感の表現は最高です)、 いろんな意味で拗らせている主人公も「正に万城目テイスト」なのですが、物語後半、世相や戦況が差し迫って来るに従って「そこいら辺に拘る気持ちも分かるけど、事態が切迫してきてるんだから、もう少し話をテキパキ進めてくれない?!」と、かえってストレスを感じてしまう部分が、残念ながら少なく有りませんでした。 登場人物も、(歴史上の)有名人をほぼ一切出さないので、前半部のニートな主人公と伊賀仲間との関係性を読ませる部分では良くても、戦争が本格化する後半に入ると、状況の推移がほぼ又聞きに成り、その時点で誰(武将達)が何処に居るのかすら曖昧になり、こんな戦時下でそんなに個人的な人間関係の話やケンカをする余裕が有るの?!と疑問に思いました。 更に、終盤の落城前後ですが、人物の会話が長過ぎて、「あの~、後ろは多分ドッカンドッカン燃え盛っているし、寄せ手や兵士も殺到してると思うんですけど、そんなに延び延び皆さん会話していて大丈夫なんですか?」と聞きたくなるぐらい、話が進まない! …これは流石に読んでいてストレスを感じました。 特に終盤部等は、アクション重視の描写にすればかなりの大迫力に成ったと思いますし、会話を控えればもっと(亡くなっていく)人物への想いなんかもググッと盛り上がったと思うのですが、 「戦う者同士が、戦場の真っ只中でこんなお喋りしてたら、戦が終わっちゃうよ?」「大坂城って、燃え落ちそうに成ってからが強い、スゴい耐火構造にでも成ってたの?」と云う嫌味が言いたくなるくらいのもどかしさが残りました。 物語としても、突飛な展開は無く、ほぼ歴史通りに終わっていきますので、前半から出てくる様々な忍び仲間は、こういう最期ならわざわざ必要だったかな?と感じさせる点も有り、前半と後半の繋がりが上手く行っていない印象を受けました。 「トヨトミ…」へと続く物語だとしても、こんなにキャラが死ななくても良かったのかな?とか、 逆に、キャラ数を出し過ぎちゃった為に「皆生き残りました!」じゃ「戦争なのに?!」って成るから無理矢理死なせたゃったのかな? 等、読後もモヤモヤ感が止まりません…。 大好きな作家さんですので、悪口みたいな事は決して言いたくないのですが、評価は評価ですので残念ですが、こうなりました。 最後に、これはこの作品とは直接関係無い話なので恐縮ですが、ず~っと気になっている事があって、(万城目さん原作の)映画かドラマの最後で、富士山の麓に大きな十字架がいくつも立っているのが映る描写が有ったのですが、アレはいつか何かで使われるんでしょうかね?
左衛門佐
本書、文句なく面白い。タイトルが気になって「とっぴんぱらり」を検索した。意外に多くの方が同じ行動をとられている。「とっぴんぱらりのぷぅ」で昔話の「めでたし、めでたし」にあたるそうだ。主人公の風太郎をぷうたろうと読ませていることに合点がいった。 落ちこぼれ忍者の風太郎が意とせず巻き...
本書、文句なく面白い。タイトルが気になって「とっぴんぱらり」を検索した。意外に多くの方が同じ行動をとられている。「とっぴんぱらりのぷぅ」で昔話の「めでたし、めでたし」にあたるそうだ。主人公の風太郎をぷうたろうと読ませていることに合点がいった。 落ちこぼれ忍者の風太郎が意とせず巻き込まれる数々の難題に立ち向かう。主人公はいわゆるいい人なのだ。本人は不遇を周りの厄介者のせいと思っているが、恐らく本当に不遇なのは捨ておけず関わってしまう周りの人々なのだろう。楽しく読めるが、悲しい物語。このギャップに心が揺れる。タイトルのようなハッピーエンドかどうかは読まれた方々にお任せしたい。蝉左右衛門の生き様に痺れた。
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上巻とは違うテンションの高さ。こんなに面白い小説、久々に読んだ。下巻は壮大なクライマックスに向けて、これまでの登場人物が絡みあって、物語が進んでいく。めちゃくちゃ面白かった!
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
なんという大作でしょうか。大作であり、傑作だと思いました。史実とひょうたんを絡めたフィクションですが、壮大な物語です。 上巻でも書きましたが、再読です。詳細は全然覚えていませんでした。 黒弓の境遇やこれから成し遂げたいことを風太郎に話すところは、ラストシーンを覚えているだけに辛く悲しかったです。 芥下が風太郎に「必ず戻るのじゃ」と言うシーンもラストを覚えているだけに辛くて辛くて。 本阿弥光悦が風太郎に見た「暗さ」は風太郎の運命を物語っていたのでしょうか。 我が子を託した忍び4人にあたたかな声をかけ、最期の別れを告げるひさご様に泣かずにはいられなかった。 詳細を覚えてはいなくても、ラストを鮮明に覚えているだけに、下巻は読みながらずっと辛かったです。上巻のようにクスッと笑えるところも少なかったように思います。 本当は、因心居士からの依頼と、ねね様からの依頼を成し遂げた後は少なくとも風太郎と蝉と黒弓は無事に生きて都に帰ることもできたはず。なのに、これまでの風太郎の人生を映し出すかのように、最後も流れのままに、ひさご様のお子を連れ出す任務を背負うこととなり、辛く悲しい結末を迎えることになります。この、流れのままに運命に逆らわず乗っかっていってしまう風太郎が悲しくもあり、風太郎らしくもあると思いました。他の誰でもない、ひさご様の頼みゆえ、その重い任務を引き受けてしまった伊賀の忍びたちですが、「伊賀」というしがらみから解き放たれ、采女の指示ではなく、自分の意志で戦うことを決めた姿に悲しみとともに、胸が熱くなりました。それは風太郎だけでなく、常世も蝉も、そして黒弓も同じで、赤子を守り抜くことを「自分たち」で決めたのです。蝉が、ひさご様から名を呼ばれ感謝され、初めて人として扱われた気がする、ということを風太郎に言うシーンがありますが、伊賀の忍び達のこれまでの境遇を物語っていますね。 それにしても憎き残菊たち・・・ 前回読んだとき、私は風太郎はその後助かったのではないかと思っていました。そう思いたかったのも多分にありますが。夫に「ねぇねぇ、風太郎は死んでないよね?」と先に読んだ夫に聞いたりしました。今回レビューを書くにあたって、Wikiをのぞいてみたら、はっきり「息を引き取る」とあり、少なからずショックでした。じゃ、黒弓は?せめて最後をきちんと見ていない黒弓はなんとか生き延びて、天川の母上のところに戻れたんじゃないの?!そう思いたい気持ちでいっぱいです、今でも。だって、黒弓ってこの物語の中でずっと、憎めない個性的な、独特のキャラだったでしょ・・・。 でもたぶん、たぶん生き残ったのは百市だけ。ひさご様の赤子を守るということをやり遂げた風太郎、常世、蝉、黒弓は立派な死に様だったといえるのでしょう。史実の中にもこうした無名の勇者たちがたくさんいたんだろうなと思いを馳せました。 あぁ、辛いけど、素晴らしい大作でした。
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下巻は「大坂冬の陣」終結から始まる。太閤未亡人の依頼で案内した貴人に再会し、再び京に戻った風太郎だったが、月次組の襲撃を受けて瀕死の重傷を負う。何とか命は取り留めるが、因心居士との約束を果たすべく再び大坂へ向かう事に…。 下巻は「大坂夏の陣」の終末を描き、風太郎ら伊賀忍者たちの...
下巻は「大坂冬の陣」終結から始まる。太閤未亡人の依頼で案内した貴人に再会し、再び京に戻った風太郎だったが、月次組の襲撃を受けて瀕死の重傷を負う。何とか命は取り留めるが、因心居士との約束を果たすべく再び大坂へ向かう事に…。 下巻は「大坂夏の陣」の終末を描き、風太郎ら伊賀忍者たちの決死の戦いが繰り広げられる。忍び同士の戦いは陰惨なものにならざるを得ず、白土三平の「忍風武芸帖」を思い出しました。 読んだのは単行本だったので一気読みでした。読み終わって改めて感じたのは、著者がとても丁寧にプロットを組んで物語を作っていること。登場人物の台詞が色々な所で伏線になっていて、後になってそれらがきちんと回収されている。また、「幻術」を物語の重要なアイテムにしているけれど、出来事の解決策として安易に使っていない点も良いと思いました。 【余談】 大坂の地理等に疎いので、重要な舞台となる「巳さん」という神社、初めて知りました。並行して読んでいる「プリンセス•トヨトミ」でも重要な場所として出て来ますね。ある意味ではこの物語が「前日譚」であるという見方もできる。大阪出身の著者の、地元愛が感じられる作りだと思いました。
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一章、二章あたりは、物語がどう進んでいくのか分からず読みにくさがあった。大きく物語が動き出してからは面白く読めた。 風太郎の勘所の悪さや鈍感さには少しイライラしましたが、やはり物語にはどうしても必要な設定。
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上巻は少し手こずったが、下巻はさくさく。 結果的に面白かった。 何気にプリンセストヨトミにつながってて感動。
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万城目学さんの『とっぴんぱらりの風太郎(ぷうたろう)』 『鹿男あをによし』と共にこの作品も心に残る作品となりそう! じわじわ来てる、来てる。。。 家にあるのは文庫本2冊ではなく、750頁程の辞書のような分厚い単行本 なかなか気が進まず手が出なかったんだけど、意を決して読んだ 読ん...
万城目学さんの『とっぴんぱらりの風太郎(ぷうたろう)』 『鹿男あをによし』と共にこの作品も心に残る作品となりそう! じわじわ来てる、来てる。。。 家にあるのは文庫本2冊ではなく、750頁程の辞書のような分厚い単行本 なかなか気が進まず手が出なかったんだけど、意を決して読んだ 読んで良かったーッ(❃´◡`❃) タイトルからして軽いノリなのかなと思ったけれど、意外とシリアス それでも登場人物がみんな個性的なので面白い(個人的には黒弓推し) 時代は、豊臣から徳川へ天下が移り変わる 忍びの世界も色々あって、時代の移り変わりもあって、風太郎は伊賀を追い出されてしまう 一つのひょうたんから話が始まり、自分で人生の道を選んでいるかと思っていたのに実は振り回されていて、あとは騙されたり、斬ったり斬られたりと怒涛の展開 ラストは「ひょうたん屋を営みながら、風太郎と芥下と赤子は幸せに暮らしたとさ」となるであろうと想像していたが。。。 『とっぴんぱらりの風太郎』を読了後に『プリンセス・トヨトミ』を読むといいみたい 知らずに『プリンセス・トヨトミ』を読んでしまったけれど、仕方ない
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あらーー(・ω・)意外なテイスト。 あれよあれよと展開して終った。寂しい。お笑いドタバタも好きだけど、こういうもの好き。 人は見かけによるし、見かけによらない。
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プリンセス・トヨトミや鴨川ホルモーなどの作家さんには珍しいハードボイルドと表現していいような時代小説。 今回は伊賀で育てられた風太郎という、何も成し遂げたことのない忍びが成長していく話。 色々な特殊な能力を持つ忍びの仲間や敵が出てきて、最後に伏線を回収していく物語。 あまりにも人...
プリンセス・トヨトミや鴨川ホルモーなどの作家さんには珍しいハードボイルドと表現していいような時代小説。 今回は伊賀で育てられた風太郎という、何も成し遂げたことのない忍びが成長していく話。 色々な特殊な能力を持つ忍びの仲間や敵が出てきて、最後に伏線を回収していく物語。 あまりにも人が死にすぎるため、笑顔で読むことはできなかったが、入り込んでドキドキした。
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