偶然短歌 の商品レビュー
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日本語版wikipediaから五七五七七になっている部分を抽出した歌集。 これをやってみようと思ったこと自体がすでに面白い。 短歌自体の面白さを味わうもよし、短歌から何について解説したページなのか推測するもよしで2回味わえる歌集。 下の2つが特にお気に入り アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、中央アジア、およびシベリア ある道を右に曲がれば東大で、まっすぐ行けば公園なのね
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任意の文章から、偶然五七五七七になっている箇所を取り出すことのできるプログラムを作成した「いなにわ」さんが、そのプログラムにWikipediaの文章を食べさせた結果、生まれた「偶然短歌」はおよそ五千首。その中から、「せきしろ」さんが百首を厳選し、鑑賞文をそえる、という本。フォロ...
任意の文章から、偶然五七五七七になっている箇所を取り出すことのできるプログラムを作成した「いなにわ」さんが、そのプログラムにWikipediaの文章を食べさせた結果、生まれた「偶然短歌」はおよそ五千首。その中から、「せきしろ」さんが百首を厳選し、鑑賞文をそえる、という本。フォローしている方々のレビューで知り、入手。ケラケラ笑ったり、思いがけずじーんとしたりしながらサクサクっと読了でき、とても面白かった。 せきしろさんのコメントが良いとか、Wikipediaの何の項目の説明かがわかる瞬間もまた楽しいとか、いろいろおもしろポイントはあるが、私はリズムのことだけに絞って語ります。 というのも実は、短歌/和歌の五七五七七の気持ち良さの謎については、一昨年だったか、ふと興味を持って、わりとちゃんとした学術的な二冊の本(『七五調のアジア』『七五調の謎をとく』)を読み、一通りの納得をした。そして細かいことは忘れた。が、印象深く覚えていることのひとつに、「和歌はアシンメトリー」という指摘がある。生まれた時から日本語で生きてきた私としては、五七五七七ほど安定したリズムはない!という感覚だったので、アシンメトリーという言葉にはじめは違和感を覚えたが、そのとき引き合いに出されていたのは中国古典詩(五言絶句とか七言絶句とかいうあれ)で、そうした漢詩の世界では対句のシンメトリー性が重視されると述べられていた。そう言われると、確かに和歌のリズムはスパンッと二つに割り切れない、非対称の形をしている。気持ちがいいし安定しているのに非対称、このやや外してる感が短歌/和歌のかっこよさなのかもしれない。 「偶然短歌」が短歌たる所以は五七五七七であることにしかない。だから、この「非対称性」も偶然短歌を味わうにあたってかなり重要なファクターとなるはずである。私が「アシンメトリー(非対称性)」というキーワードを思い出すに至った偶然短歌をいくつか引用する。 正しいが、人々が持つ宇宙への夢に対する配慮に欠けた ★初句の五音でひと呼吸おきたくなる本能に「従ってしまっていいんだ!」ということを示してくれる優しい読点。だが、その内容は、いきなり「正しい」+逆説の「が」というインパクトの強さ。初句つよ型。 その他自己又は他人の徳性を害する行為、つまりは不良 むしろただひたすら酒を消費する場に変質し、いわば効率 港では他船がいない状況はそうは望めず、また風も吹く ★逆に、タメ(読点)のあとの結句が全てを持って行くタイプ。はじめの二つは、思い切った言い切りがかっこいいし、三つめのは、せきしろさんいわく「ダメ押し感がハンパない」。 演習は前者にあたり、作文や感想文は後者にあたる ★一見対句風だが、当然長さは非対称だし、前者と後者の切れ目が微妙に落ち着かない場所にあるのがまたいい。 こうして並べてみると、要は句切れがどこにあるかで味わいが違いますねという話で、日頃から短歌に親しんでいる方にとっては当たり前のことだったかもしれない。作歌をする方ならこうしたことをも計算して作るのだろう。だが、誰の何の作為もなくできてしまった、というかリズムだけ当てはめて読み手が短歌に仕立て上げただけの偶然短歌だからこそ、読点のアシストも利いて、効果が際立っているような気がする。 こうして偶然短歌を延々と鑑賞していると、変拍子的なビートというのか、あるいはグルーヴ感とでもいうのか、そんなようなものが自分の内に生じてきて、せきしろさんのコメントパートを読んでいても「なんだここは七五調じゃないじゃん」と物足りなさまで感じてくる始末だった。あー楽しかった。
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ブク友の5552のレビューを読んで気になって購入した。 ウィキペディアの文章の中から、偶然57577になっているものを「短歌」とみなしたものを「偶然短歌」と呼んでいる。 凄く面白かった。時として、偶然は必然を越えてくる。少し紹介したい。 “演習は前者にあたり、作文や感想文は...
ブク友の5552のレビューを読んで気になって購入した。 ウィキペディアの文章の中から、偶然57577になっているものを「短歌」とみなしたものを「偶然短歌」と呼んでいる。 凄く面白かった。時として、偶然は必然を越えてくる。少し紹介したい。 “演習は前者にあたり、作文や感想文は後者にあたる” ちょっと何言ってるかわからない、そんな短歌。 “泣き言や空想ばかり書いているジャーナリストの連中が何” この偶然短歌は「リシャルト・カプシチンスキ」について書かれた文章から切り取られているが、リシャルト・カプシチンスキって何? “ギタリスト二人のうちのどちらかがリードギターの役割となる” 意味深い事を言っているような気もするが、偶然短歌はあくまで、何も考えてはいない。
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この作品では引用元はすべてWikipediaだが、街の注意書きとか何気ない文言にも偶然短歌が紛れてるんだろうな。これを読んでしばらくは文章を七五調で読んでしまうようになった。
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――Wikipediaには短歌という財宝が眠っている――― 皆さんもたぶん、お世話になっているだろうWikipedia。 そのWikipediaから、57577の短歌のリズムになる文章を抽出するコンピュータープログラムを作り、『偶然短歌』と名付け、『偶然短歌bot』として話題になった約5000首の中から100首を厳選。又吉直樹さんや西加奈子さんとの共著もあるせきしろさんが、コメントをつけた。 「アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、中央アジア、およびシベリア」―――『モロカン派』 お、国名を並べただけで短歌になってる! 「正しいが、人々が待つ宇宙への夢に対する配慮に欠けた」―――『冥王星』 この偶然短歌は冥王星が惑星でなくなったことに対する松本零士の言葉から生まれたものらしい。 「その人の読む法華経を聞きながら眠りについて、そしてそのまま」―――『櫻間伴馬』 歌から受けるイメージのまま。 櫻間伴馬の最後のときが描写されている。 ……………………………………………………… まるで短歌を詠みはじめたばかりの初心者のように、なんでもない文章から57577を汲み上げてゆくプログラムが愛しい。 思いがけず詩的なものもあり、クイズの問題のようなものもある。 ここには抜粋してないが、せきしろさんのコメントが面白さを倍増している。 何度も声を立てて笑った。 さて、最後に問題。 この文章の中から短歌をみつけよう! 「踊り念仏は鎌倉時代には一遍上人が全国に広めたが、一遍や同行の尼僧らは念仏で救済される喜びに衣服もはだけ激しく踊り狂い、法悦境へと庶民を巻き込んで大ブームを引き起こした。」―――『盆踊り』 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ 「念仏で/救済される/喜びに/衣服もはだけ/激しく踊り」
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Wikipediaの記載から抽出された短歌集。 文章の中からこういう短歌を見つけ出すのは、少し楽しい。
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ウィキペディアの中でたまたま「5・7・5・7・7」のリズムになっている言葉を集めた1冊。 何の変哲もない文章の中に含まれた「偶然短歌」をお楽しみください。(浦河町)
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これはこれで興味深く、時に指摘で想像を喚起してくれる歌もあった。でも前提をおさえた上で楽しむ、別のアートかもしれない。
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いなにわ氏の作ったウィキペディアの記述の中から短歌の形をとる文章を抜き出すプログラムから生まれた偶然短歌に、せきしろ氏が解説をつけた本。 短歌について詳しいわけでは全くないけど、もともと短歌のリズムが好きで、加藤千恵や枡野浩一の本が大好きだった。だから偶然短歌botもフォローして...
いなにわ氏の作ったウィキペディアの記述の中から短歌の形をとる文章を抜き出すプログラムから生まれた偶然短歌に、せきしろ氏が解説をつけた本。 短歌について詳しいわけでは全くないけど、もともと短歌のリズムが好きで、加藤千恵や枡野浩一の本が大好きだった。だから偶然短歌botもフォローしていたのだけどまとめた本があったとは。なんとも言えない哀愁と美しさがあるんだよなあ。そこについた解説がさらに面白くて、爆笑しつつ感心もした。
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いなにわさんの作った、 「普通の文章の中から57577を無作為に切り取って 短歌として抜き出す」 というプログラムを元に、 Wikiを材料に生まれた、 膨大な短歌の中から100首を選りすぐり せきしろさんのコメントを付けてまとめた本。 視点が面白くて、実際選ばれた短歌も味わいがあ...
いなにわさんの作った、 「普通の文章の中から57577を無作為に切り取って 短歌として抜き出す」 というプログラムを元に、 Wikiを材料に生まれた、 膨大な短歌の中から100首を選りすぐり せきしろさんのコメントを付けてまとめた本。 視点が面白くて、実際選ばれた短歌も味わいがあって楽しい。 これコメントいるのかなあと。 ツッコミや、そこから妄想を広げる形、 内容と出典のギャップを突くのは面白いと思うけど。 「ときに偶然短歌は○○の事実を教えてくれる」 ってわりと出てくる言葉なんだけど これ元ネタがWikiだし。 文章が途切れているかたちで切り取られた短歌も そのまま文章が途切れてると考えて、 前後を気にするコメントが多いのも不思議で。 むしろ倒置法とか体言止め的に完結したものとして 味わう方が面白くないか?と思ったり。 元の文章の一部なのに別物、というのが このプログラムの、「偶然短歌」の、肝なんじゃないの。 あとがきを読むと、依頼されてのコメントだったようで、 自身でも苦労しているのが分かりました。 読んで面白いと思うかどうかは、 せきしろさんとセンスを共有できるかどうかなんだと思います。 私は、ちょっと合わないようです。 Twitterで「偶然短歌bot」というのがありましたが、 横書き改行なしだと、空気感が出てこないですね。 やはり余白たっぷり、縦書き、(ときに改行)ありのほうが 想像をかきたてられます。
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