文楽の男 の商品レビュー
人形浄瑠璃の人間国宝であった人形遣いの吉田玉男(初世)が、自身が演じた男役についてインタビューに答える。それを通じて玉男本人の人柄も描き出そうという一冊。 自伝や芸談をまとめることを断ってきたが、山川静夫さんからの、たってのお申し出なので「お受けした次第」という、底本の発行が20...
人形浄瑠璃の人間国宝であった人形遣いの吉田玉男(初世)が、自身が演じた男役についてインタビューに答える。それを通じて玉男本人の人柄も描き出そうという一冊。 自伝や芸談をまとめることを断ってきたが、山川静夫さんからの、たってのお申し出なので「お受けした次第」という、底本の発行が2002年の本。 口下手だから人形遣いの道を選んだという逸話は、やっぱり感がすごい。人形を生き生きと見せるという意識かどうかは知らないが、顔を出して演じる「出遣い」でも、まるで黒衣のような雰囲気を醸し出していた人でしたね(ちらっと見たことがあるだけだが)。 伸びる弟子について聞かれて 「積極的というか。若い子供の時分から、介錯とかいろいろ仕事があるんやけど、ところが、怒られることも多い。それでも一回や二回怒られてもかまへん、と思ってるヤツと、そういう危険は避ける奴がいてね。『虎穴に入らずんば虎子を得ず』と一緒で、怒られるんやったら早いうちに怒られといたほうがいい。危険を避けていると、『なんやお前、三年もたっているのにまだそんなことでけへんのか』となる。引っ込み思案して危険を避けているのは、こっちも経験してきているから百も承知や。『ああ、あいつ善五郎しておるな』て。善五郎というのはさぼるヤツのこと。ことばの由来はどこからきてんのかな? 手を抜いているとあかんな。怒られるのは年齢(とし)のひとつでも若い時にやっておいたほうがエエ。」 内容もだけど、「善五郎」が気になる。
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