歴史としての社会主義 の商品レビュー
ベルリン旅行の完結編として読んだ。 東ベルリンの博物館をはじめ、東ドイツ時代は負の歴史として語られることが多い。 本書では東ドイツ時代がオスタルギー【Ost(東)のノスタルジー】として語られることも含めて、東ドイツ時代が歴史、つまり過去のものになってしまったという点から東ドイツ時...
ベルリン旅行の完結編として読んだ。 東ベルリンの博物館をはじめ、東ドイツ時代は負の歴史として語られることが多い。 本書では東ドイツ時代がオスタルギー【Ost(東)のノスタルジー】として語られることも含めて、東ドイツ時代が歴史、つまり過去のものになってしまったという点から東ドイツ時代とその政体である社会主義について考察する。 以前に読んだ「ベルリン1989」と併せて、東ドイツ時代を暗黒の時代として葬り去ることなく、丁寧に市民生活を記述する。「ベルリン1989」がエスノグラフィーなら、エスノグラフィーから市民生活と非公式なネットワーク、社会インフラ、市民生活を読み解こうする書である。 ただのノスタルジーに浸ることなく、不足の社会が社会関係資本を持って補完されていたこと。文化・芸能が市民の手にあったことなど興味深い記述が多い。また、中間グループ(仕事場の班活動など)の章では、日本の高度経済成長期と比較しており、経済発展と個人主義の関係性について考えさせられるものも多い。 東ドイツ時代はそんなに悪くなかったものかもしれない。しかし、社会主義は構造的欠陥を克服できず、現存した社会主義としてもその内実は社会主義的であったとしても社会主義とは言い難いとノスタルジーをひっくり返す最終章のまとめ方も秀逸。
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