奴隷船の歴史 の商品レビュー
奴隷貿易の歴史書である。人類の歴史には様々なブラック稼業、闇の生業があるが、人身売買は、その最たるものの一つである。奴隷は部族の首長から売り飛ばされた人々に加え、理由もなく拉致された人々もいた。奴隷船は移動する牢獄であり、数百人の奴隷がすし詰めに詰め込まれ恐怖によって統制される地...
奴隷貿易の歴史書である。人類の歴史には様々なブラック稼業、闇の生業があるが、人身売買は、その最たるものの一つである。奴隷は部族の首長から売り飛ばされた人々に加え、理由もなく拉致された人々もいた。奴隷船は移動する牢獄であり、数百人の奴隷がすし詰めに詰め込まれ恐怖によって統制される地獄の旅だった。奴隷達は様々な形で抵抗した。様々な言語集団出身の奴隷達が意思の疎通を図りつつ組織して反乱を超すこともあった。絶食して自ら死を選ぶ奴隷も大勢存在した(マーカス・レディカー著、上野直子訳『奴隷船の歴史』みすず書房、2016年)。 奴隷の多くは西インド諸島などのプランテーションで砂糖の生産に従事させられた。英国では紅茶が普及し、紅茶に入れるために砂糖の需要が増大した。それは奴隷労働に支えられているものであった。日本では江戸時代に琉球や奄美大島の砂糖が求められたが、これも薩摩藩による植民地支配の構造がある。一方で讃岐国阿野郡林田村などの讃岐和三盆は村民を豊かにする砂糖生産であった。 紅茶の茶葉は清国から輸入した。この結果、英国から清国に銀が流出し、英国は貿易赤字となった。この対策として英国商人は依存性薬物で違法ドラッグの阿片を輸出するという卑怯で破廉恥な手段に出た。阿片はケシの実から取った液汁を乾燥させてつくる麻薬である。英国の紅茶文化は人身売買と違法ドラッグ密売という二つの不道徳から成り立っていた。 さらに英国は清国に阿片を密売するために植民地化したインド農民に前金を出してケシを栽培させた。英国の阿片密売は清国を崩壊させただけでなく、インド農民を従属させ、インドの植民地支配を強化する罪深さもあった。
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長かったー。最終章だけ読んでもよいかも。読み出もある。奴隷船では船長は暴君になる、いつ暴動が起こるかわからない、水夫の死亡率も高い。英国のリバプールは一時期奴隷貿易の一大拠点となって、この町で奴隷貿易廃止運動のための調査を始めた紳士は「町の栄華を危機に陥れる」と見なされて妨害にあ...
長かったー。最終章だけ読んでもよいかも。読み出もある。奴隷船では船長は暴君になる、いつ暴動が起こるかわからない、水夫の死亡率も高い。英国のリバプールは一時期奴隷貿易の一大拠点となって、この町で奴隷貿易廃止運動のための調査を始めた紳士は「町の栄華を危機に陥れる」と見なされて妨害にあったり命を狙われたりした。(経済原理主義は今も同じ。。。)それでも余計奮い立って、奴隷船の間取り図を描いた。船倉にびっしりと寝かされた奴隷を描いた誇張のない静かな絵は社会に大きな衝撃を与えた…。議会では「黒人は奴隷にならなければアフリカで早死にする」とか「イギリスがやらなければ敵国(フランス)がやる」とか議論のすり替えがされて、政治はこのころから変わらないのかなと歴史に学ぶことの大切さを感じた1冊でした。
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歴史は過去だが、現在は過去から創られている。 多くの人の犠牲の上に現在が創られていることを胸に刻んでおくべきであることを痛感させられる力作。 訳者にも脱帽。
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