擬制の論理 自由の不安 の商品レビュー
実証主義的思想史研究の限界と可能性を感じる一冊。著者は「思想作品そのものが内包している意図の解明に重点を置き、問題を人物像や社会背景などだけに還元する事は避けた」と自ら制約を設ける。結果、テクストベースの解釈に特化する事の限界が感じられ、政治史研究では見られない想像や推測を盛り込...
実証主義的思想史研究の限界と可能性を感じる一冊。著者は「思想作品そのものが内包している意図の解明に重点を置き、問題を人物像や社会背景などだけに還元する事は避けた」と自ら制約を設ける。結果、テクストベースの解釈に特化する事の限界が感じられ、政治史研究では見られない想像や推測を盛り込んだ解釈が展開されている。逆に言えば、かなり強引・無茶と思われる解釈もあって、これが許される思想史研究の「自由度の高さ」も感じる。また、古今東西のありとあらゆる関係史料を用いて論が繰り返されたり、時には脱線したりする点には少々冗長に感じる部分もある。それでも、著者の研究手法にはその問題意識も含めて「ここまでやるのか」という驚きもあり、ある意味では他の追随を許さないオリジナリティーも感じる。大変に読み応えのある一冊である。
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