カンプノウの灯火 の商品レビュー
変わった切り口のドキュメンタリーで一気に読みきった。サッカーのメッシといえば、FCバルセロナの生んだ100年に一人の選手として有名だが、今回はメッシともにバルサ下部組織に在籍し、同じく将来を有望視された選手たちの物語。 彼らは現在はそれぞれの立場でそれぞれの暮らしを営んでいる。職...
変わった切り口のドキュメンタリーで一気に読みきった。サッカーのメッシといえば、FCバルセロナの生んだ100年に一人の選手として有名だが、今回はメッシともにバルサ下部組織に在籍し、同じく将来を有望視された選手たちの物語。 彼らは現在はそれぞれの立場でそれぞれの暮らしを営んでいる。職業は多岐にわたり、ボクシングトレーナー、肉屋、電気工、サッカークラブの指導員、動物飼育士、給食世話係、警察官、など。 当時多くの選手が暮らしたマシア(選手寮)の寮長はこう語る。 "Hay vida mas alla del Barca" バルサの先にも人生は続く。 バルサに入った選手の中で、プロとして成功できるのは10人に一人くらいである。才能はもちろん必要だが、運と、指導者との相性も必要である。それも踏まえて寮長は選手たちに人間的に成長するように接していた。 かつてはカンプノウ(バルセロナのホームスタジアム)のピッチにたつことを目指した選手たちだが、今の暮らしは決して悲観的ではなく前向きなものである。ボクシングジムで教えるディオンはスペイン南部で移民の少年たちにボクシングを教え(ともすれば非行に走りそうな子供たちに夢を与え)、フェランは肉屋の傍らかつて心理的重圧からバルサをさったことを踏まえスポーツ心理学を勉強している。 人生はいろいろな方向に向かう船にあちこち乗り換えて進むような気がして、あるとき乗り合わせた船にずっと乗り続けるものもあれば、どこかでやむなく乗り換え別の目的地へ向かうものもいる。最終的にはどこに向かっていても、どこにたどりついても、自分が納得した道ならそれでいい。
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あらゆるスポーツの若年層の選手育成に関わる方に読んで頂きたい内容です。主題はメッシととともに、バルセロナで練習に励み、しかしプロサッカー選手に慣れなかった人たちの物語です。エリートの子供たちが抱えるプレッシャー、親子の関係など対処すべき問題はとても多いです。そしてこの本の奥深さは...
あらゆるスポーツの若年層の選手育成に関わる方に読んで頂きたい内容です。主題はメッシととともに、バルセロナで練習に励み、しかしプロサッカー選手に慣れなかった人たちの物語です。エリートの子供たちが抱えるプレッシャー、親子の関係など対処すべき問題はとても多いです。そしてこの本の奥深さは、そこからスペイン経済の停滞とカタルーニャ独立まで触れ、スポーツと社会が切っても切れない状況にあるということを、我々大人に突きつけてくれます。ぜひ、ご一読を(2016/12/4読了)
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失敗したらどうなるのか知りたい。 悪趣味な好奇心だけど、新卒で入った大企業を辞めて失業保険をもらいながら職業訓練校へ通う毎日。転職活動の最中、自己を分析し、世の中の仕事を調べ、多くの人の成功事例を読み漁る中で出てきた疑問だった。 メッシになれなかったらどうなるのか?仕事を変えて...
失敗したらどうなるのか知りたい。 悪趣味な好奇心だけど、新卒で入った大企業を辞めて失業保険をもらいながら職業訓練校へ通う毎日。転職活動の最中、自己を分析し、世の中の仕事を調べ、多くの人の成功事例を読み漁る中で出てきた疑問だった。 メッシになれなかったらどうなるのか?仕事を変えて失敗したらどうなるのか? 結局その後無事転職をして、さらにその後転職をして3社目の会社で社会人12年目を迎えているわけだけど、今の所の答えは自分さえしっかりしていれば大したことは起きそうにない。ということにはなりそうだ。
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『誰もがメッシになれるわけじゃないんだ。それは辛い現実かもしれない。でもな、アミーゴ、だからこそ人生ってのはおもしれえんだ。』 ヨハン・クライフによってトップチームの戦略と精神を徹底させたFCバルセロナの下部組織。世界中から集められた13歳からの少年たちはカンプノウのピッチにい...
『誰もがメッシになれるわけじゃないんだ。それは辛い現実かもしれない。でもな、アミーゴ、だからこそ人生ってのはおもしれえんだ。』 ヨハン・クライフによってトップチームの戦略と精神を徹底させたFCバルセロナの下部組織。世界中から集められた13歳からの少年たちはカンプノウのピッチにいつか立ってプレーする、という夢に向かって生き馬の目を射抜くような生活の中に放り込まれる。 そして史上稀なる天賦の才能を持ったメッシと同時期にバルサに所属していた、今は名もなき少年たちのその後の人生を追う。 下部組織からトップチームに這い上がれるのはほんの10%、そこからスターになるのはまた更にほんのひと握りなのだ。 苛烈なプレッシャーを背負い込み、10代前半の少年たちが家族と離れてサッカー漬けの生活を共にする。 彼らの大半は「メッシとの思い出を語らされる」というその後の人生を歩んでいる。でも決して彼ら本人にスポットライトが当たることはない。 肉屋、動物飼育員、給食世話係、ビール会社営業、ボクシングジムオーナー…メッシになれなかった彼等はそれでも一時期夢見たあの時代の思い出を抱きつつもしっかりと自分の人生を切り開いている。 多少文章が抒情的に過ぎるきらいはあるもののこのテーマには合っていて、彼ら一人一人の人生が一編の映画のごとく照らし出され心に沁みていく。
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読み友の推薦で読んでみた。 ”リオネル・メッシと一緒に同クラブに所属していた元少年たちの現在の姿を追ったルポ” とのこと。 想像のとおり ”プロ選手という夢を絶たれた者たちのほとんどが、サッカーとは無縁の仕事をし、ごく一般の市民として生活をする。”姿を追う。 そして、その読み友...
読み友の推薦で読んでみた。 ”リオネル・メッシと一緒に同クラブに所属していた元少年たちの現在の姿を追ったルポ” とのこと。 想像のとおり ”プロ選手という夢を絶たれた者たちのほとんどが、サッカーとは無縁の仕事をし、ごく一般の市民として生活をする。”姿を追う。 そして、その読み友の言うように ”「村で一番」だった子が全国から精鋭が集まってきたクラブの中で精神的に打ちのめされてしまう様子は読んでいて辛くなってしまいました。” ”サッカーのことがわからなくても、十分に読み応えのある本”だとは思うが、それで作者は何を言いたかった? 夢がかなわない現実の受け入れ方? 次の夢に向かって気持ちを切り替える方? 読み友は ”大人はそれをどのタイミングで子供たちに教えればいいのか” を考えさせられたようだ。 読む前の注意として ”なんだか無駄な比喩が多いことかな。できそこないの村上春樹みたい。” とのことだったが、このあたり? ”「本当に、うまかったんだけどな」と、昔の恋人を懐かしむにたいにダニは言った。” ”「誰に会う?」と彼は呟いた。モンシロチョウのため息よりは少し大きいというくらいの声だった。” 確かに、無駄、っちゅーか中途半端(笑)
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かつてメッシとともにカンプノウを夢見た少年らが、その後どのように暮らしているのかを追ったルポ集である。 世界最高とも目されるバルサの下部組織(カンテラ)であっても、そこに集った子供たちはほとんどがカンプノウの舞台を踏めずに去ることとなる。それどころか、メッシの同年代、つまりこ...
かつてメッシとともにカンプノウを夢見た少年らが、その後どのように暮らしているのかを追ったルポ集である。 世界最高とも目されるバルサの下部組織(カンテラ)であっても、そこに集った子供たちはほとんどがカンプノウの舞台を踏めずに去ることとなる。それどころか、メッシの同年代、つまりこのルポ当時29歳となるかつての綺羅星たちは、その多くがサッカーの世界から足を洗っている。 そのそれぞれの事情を洗いながら、そこに見えてくる背景をえぐっていく内容は大変読み応えがあった。サッカー選手と精神疾患の問題、カタルーニャ独立の問題、増え続けるイスラム系の移民の問題。2016年現在のスペインを見ていくうえでも面白い一冊だった。 リーガ・エスパニョーラを放映しているWOWOWが放送していた番組に「メッシに魅せられて」というものがあったが、そこでメッシと再会を果たしていたかつてのチームメイトらに直接会って話を聞いてきている。 その意味で、あのドキュメンタリーを興味深く読んだリーガファンは読んで楽しめる一冊だろう。あのドキュメンタリーに比べるとずいぶんドライな書き口であるが、それを含めて面白いルポである。
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