告発 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
本書で描かれているのは、北朝鮮の「差別」の現実であり、自分としても全く知らなかったことだった。政権への不満分子が許されないことは聞き及んでいたものの、本書に描かれているような「出自」がこれほど問題視されているとは、驚きであり、またリアルでもある。
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朝鮮在住の作家が北朝鮮の庶民の悲しみを「告発」するために書いた短編集。 筆者は朝鮮作家同盟に所属する、北朝鮮の公式の作家だ。 現在も北朝鮮に住んでおり、親戚が脱北する際に託した原稿が海外で翻訳されて出版された。 ペンネームは、北朝鮮に灯をともすという意味から韓国で「蛍」と名付けら...
朝鮮在住の作家が北朝鮮の庶民の悲しみを「告発」するために書いた短編集。 筆者は朝鮮作家同盟に所属する、北朝鮮の公式の作家だ。 現在も北朝鮮に住んでおり、親戚が脱北する際に託した原稿が海外で翻訳されて出版された。 ペンネームは、北朝鮮に灯をともすという意味から韓国で「蛍」と名付けられたという。 7編の小説は、北朝鮮の体制を正面から批判するものではない。その地で生きる庶民の悲しみ、鬱憤、絶望に焦点が当てられている。 例えば、解放後に祖父が豊かだったというだけで「敵対群衆」というもっとも低い成分(北朝鮮における身分)におかれて様々な不利益を受けている夫を労働党に入党させるため、地区の書記(役人のような者)に襲われても黙っているしかない女性。 例えば、故郷の地で「1号行事」(金日成による現地指導など)が行われるために、その地に出入りすることが許されず、危篤の母に会えなかった男性。 理不尽な制度のもとで息を殺すようにして生活する北の人々の姿が描かれる。 最後に、表紙に書かれている詩の一部を記しておきたい。 「才能ではなく怒りで インクとペンではなく 血の涙と骨で書いた わたしのこの手記」 彼のように北朝鮮に住む作家やジャーナリストによる告発が、今後も世に出てくることを願う。
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