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分解する の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2022/07/04

何だか繋がりがないような、よく分からないような短編集で「どういうことだろう?」と思いながら読んでいた。「分解する」と「設計図」と「フランス語講座」は物語として面白かった。他は難しかった。

Posted byブクログ

2020/06/07

リディア・デイヴィスが1986年に発表した、実質デビュー作にあたる短篇集。 長篇『話の終わり』を思わせる、男女に関する考察的なエッセイめいた断片や、姉と妹、母と娘という役割をめぐる思索、あるいは独身男性の少し滑稽な生活の記録など、同じテーマが変奏されて何度も現れる。一つ一つの...

リディア・デイヴィスが1986年に発表した、実質デビュー作にあたる短篇集。 長篇『話の終わり』を思わせる、男女に関する考察的なエッセイめいた断片や、姉と妹、母と娘という役割をめぐる思索、あるいは独身男性の少し滑稽な生活の記録など、同じテーマが変奏されて何度も現れる。一つ一つの短い作品がどうというよりも、一冊分の集合体が有機的な関係性を作り上げていて、それが表現しようとしているのはとてもパーソナルな事柄のようだ。でもリディア・デイヴィス本人に生々しく触れているというのではない。この本自体が一つの人格を有していると言ったら良いか。 表題作「分解する」は一つの恋のはじまりから終わりまでを回想し、かかった“費用”を計算する男の話で、クスッとするオチも含め、胸がチクリと痛む寂しさがあった。「設計図」はミルハウザー作品を思わせる、孤独な男と幻影のBL。外国語教育のテキストをパロった「フランス語講座 その1」は、ラストに並んだ単語の羅列だけで一気に不穏になる切れ味がよかった。

Posted byブクログ

2019/03/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1986年(30歳くらいのころ)に発表した短編集。 なんとこれがデビュー作。このときからすでに、固有名詞が出てこないですね。実体験と虚構の間を揺れるような文体。 「バードフ氏、ドイツに行く」とか「フランス語講座 その1――Le Meurtre」の彼女特有の話の運び?も好きですが、「話」の微細な感情の描写は天才的だなと思いました。 オースターとのやりとりがモデルであると思われるエピソードも多く、やたらと男女がすれ違ったり別れたりする話が多いです。 「夫を訪ねる」が実話だと考えると、お互いに新しいパートナーが居なければ、この夫婦が離婚する理由ってなかったのかも、とやや残念に思ったりもします。

Posted byブクログ

2019/02/03

日常会話のはずが、酒を酌み交わしているかのように腹の内を見せてくる。排出するものは違うが、内面的な感覚、感受性が本谷有希子さんに共通するものがあると思う。それにしても読みやすいのは、皆が共通して持っている心の動きが描かれているからだろうか。そういう物は足元を掬われないように人は隠...

日常会話のはずが、酒を酌み交わしているかのように腹の内を見せてくる。排出するものは違うが、内面的な感覚、感受性が本谷有希子さんに共通するものがあると思う。それにしても読みやすいのは、皆が共通して持っている心の動きが描かれているからだろうか。そういう物は足元を掬われないように人は隠して生きるものだ。彼女らは自分に対して誠実であるため、例え初対面の人間が自分の内側を覗きこむことがあっても、怖れない。実はそういう深遠にあるものが人としての輪郭を作っているのだと思うよ!

Posted byブクログ

2017/09/14

人のはっきりしない思考を言語かしたらこうなるのでは?と思わせる著者の文体。 その中にひたる心地よさってありますよね。

Posted byブクログ

2016/10/19

『でももちろん、すべての答えを合わせれば、それが正しい答えになるのかもしれない。もしこんな問いに正しい答えが本当にあるのなら』―『私に関するいくつかの好ましくない点』 リディア・デイヴィスは日常に潜み通常は表に出てくることのない非日常性を言葉に変換する。変換されなければ気にも止...

『でももちろん、すべての答えを合わせれば、それが正しい答えになるのかもしれない。もしこんな問いに正しい答えが本当にあるのなら』―『私に関するいくつかの好ましくない点』 リディア・デイヴィスは日常に潜み通常は表に出てくることのない非日常性を言葉に変換する。変換されなければ気にも止めなかった筈の一風変わった思念は、言葉によって形を与えられこちらの日常にずかずかと、あるいはするすると侵入して来る。侵食され情緒不安定な状態に追い込まれることは妙に心地よい。誰の頭の中にだって多少変な妄想や思い込みはあるとは思うけれど、それは意識の片隅にも昇らないまま霧散する類いの、あるいは慌てて頭から振り払う類いのこと。それが形になることで返ってきれいさっぱりと処分されたような心持ちになるのかも知れない。もちろんそんな泡沫のような想いを書き留めるには、常に不安定な自己とそれを冷静に見つめる自己の二つの立場を取り続けなければならない。そんな状態をリディア・デイヴィスは、怒っている時も泣いている時も常に保持しているかのようだ。頓珍漢な話だが、頭の片隅で芸の為なら女房も云々という古い歌がかかる。 リディア・デイヴィスは「話の終わり」以来、岸本佐知子による翻訳をいつも楽しみに待っている作家だ。訳出は前後したが、この実質的なデビュー作で改めて既に存分に「らしさ」が表れていることが再確認出来る。この日常の中の非日常を掬い上げる感じは、柴崎友香の特に初期の作品を連想させもするけれど、柴崎友香が常に変わり続ける景色を優れた動体視力で掴み取るのに対して、リディア・デイヴィスの目に映る景色はほとんど動かない。動かないからこそ、そこに重ね合わせる、展開し得たかも知れないことを次々と思い浮かべ、それを漏れなく書き付ける。そしてありとあらゆることが起こり得たかも知れない可能性に満ちた世界を、少しばかり哀愁を帯びた調子で語る。言ってみればアイロニカルで、きっとへそ曲がりな人に受ける作家なのかなとも思う。もちろん自分も天邪鬼なのでいつも新刊を心待ちにしているのだけれど。 言葉は放たれた途端に輪郭がぼやけ、文脈の中に吸収されて行く定めと思うのだが、リディア・デイヴィスの言葉は常に硬質で輪郭を失うことがない。袖でこすったり雨に濡れたりしてもぼやけることはなく、発した側の想いは種々あれども定まっている。たとえ、何も決められない人物が描かれていたとしても、その定まった感じは揺るがない。そんな印象の中で少しばかり異質なのは、時々登場するポール・オースターを連想する人物にまつわる話。そこでは言葉そのものが常に行く先を迷っている印象を受ける。もちろん、この有名な元夫婦の読者としては誰でもが抱く、少々下世話な興味による想像なのだと自らを戒めて読むのだけれど、その過去と現在がない混ぜになった感情には、今尚くすぶる何かがあるのかとすら思わせる迷いがあるように思う。もっともそれすら作品に描き起こすタフさには感服するのだけれど。そして相変わらず岸本さんの翻訳はいいね。

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2016/10/02

この本は著者のデビュー作で、他の短編集「ほとんど記憶のない女」、「サミュエル・ジョンソンが怒っている」よりアクが少ない気がする。 何かに固執したり、あらぬことを考え過ぎたり、人間の心の中って限りなく広いんだと痛感する。 「意識と無意識のあいだー小さな男」の不眠描写に身につまされる...

この本は著者のデビュー作で、他の短編集「ほとんど記憶のない女」、「サミュエル・ジョンソンが怒っている」よりアクが少ない気がする。 何かに固執したり、あらぬことを考え過ぎたり、人間の心の中って限りなく広いんだと痛感する。 「意識と無意識のあいだー小さな男」の不眠描写に身につまされる。

Posted byブクログ

2016/06/28

クスっと笑っちゃうもの、ちょっと意地悪なもの、不思議な気分の残るもの、今のは何だったの?なもの…などいろいろ並んでいるが、私は「姉と妹」のような”ちょっと意地悪”系が好き。

Posted byブクログ

2016/06/28

リディア・デイヴィスのデビュー作(※「実質的な」という注釈がついているが)。 ユニークな短編で知られる著者だが、デビュー作である本書の頃から、はっきりとその傾向が見られる……というか、ある意味では一番『濃い』かもしれない。 『分解する』『バードフ氏、ドイツに行く』『魚』『街の仕事...

リディア・デイヴィスのデビュー作(※「実質的な」という注釈がついているが)。 ユニークな短編で知られる著者だが、デビュー作である本書の頃から、はっきりとその傾向が見られる……というか、ある意味では一番『濃い』かもしれない。 『分解する』『バードフ氏、ドイツに行く』『魚』『街の仕事』辺りにその『濃さ』がよく出ている気がする。 それにしても、リディア・デイヴィスの描く恋愛(夫婦)関係は、基本的に破綻していることが多いのが不思議。

Posted byブクログ