イエスの幼子時代 の商品レビュー
イネスは母というより人形を手に入れた少女みたい、というのはいい得て妙だが、唐突にテニスコートで頼み込まれ、次の日に家に来た時点で少なくとも情のある人だと思うし、ここまでしているのは偉いと思う。完璧な母親でなくてもこういう大人たちに孤児は救われるのだと思う。その後立派になるかどうか...
イネスは母というより人形を手に入れた少女みたい、というのはいい得て妙だが、唐突にテニスコートで頼み込まれ、次の日に家に来た時点で少なくとも情のある人だと思うし、ここまでしているのは偉いと思う。完璧な母親でなくてもこういう大人たちに孤児は救われるのだと思う。その後立派になるかどうかは本人にもかかっている。
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最初は判り易いディストピアものだと思っていた(私は無上春樹の「世界の終わり」と重なった)が、中盤以降の展開にチトがっかり。もちろんハッキリとさせないことで深みを増してもいるが、なぜ移住しなければならなかったのか、新世界の仕組みがどうなっているかなどはもう少し詳述しても良かったよう...
最初は判り易いディストピアものだと思っていた(私は無上春樹の「世界の終わり」と重なった)が、中盤以降の展開にチトがっかり。もちろんハッキリとさせないことで深みを増してもいるが、なぜ移住しなければならなかったのか、新世界の仕組みがどうなっているかなどはもう少し詳述しても良かったような気はする。 また、イネスとの出会い方が唐突過ぎるし、アナ、ダガ、エウヘニオとの関係がいまいち判然としないが、これらは聖書など西洋の歴史知識と教養があれば明瞭なのかもしれないし、続編のお楽しみということかもしれない。 とは言うものの、文中の引用、寓話、哲学談義などは稚拙な私でも知的好奇心をくすぐられたりして、さすがノーベル賞作家だとも思った。 続編の日本語版が非常に楽しみ。
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我々日本人には、もしや・・イエスとはこんな小僧だったのかも・・・と思わせられますが、国によっては冒涜にならないかしらん。 Jesusと言い切ってるわけですから・・・・。 もう読み進めていくには、くだらなくて・・・と思いきや、どんでん返しもなく、奇跡もなく、ただ、くだらないガキんち...
我々日本人には、もしや・・イエスとはこんな小僧だったのかも・・・と思わせられますが、国によっては冒涜にならないかしらん。 Jesusと言い切ってるわけですから・・・・。 もう読み進めていくには、くだらなくて・・・と思いきや、どんでん返しもなく、奇跡もなく、ただ、くだらないガキんちょにいらいらしながら読み終えた。 不思議な満足感が残ったのは不思議なくらい。
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クッツェーである。クッツェーといえば私にとっては『恥辱』だ。いえ、読んだわけではなく(すみません…)、書評を書いていた、とある書籍販売の小冊子で、料理本やダイエット本ばかりが売れるなか、小説としては驚異的に売れたので記憶に残ったのである。 その『恥辱』をすっとばして『イエスの幼子...
クッツェーである。クッツェーといえば私にとっては『恥辱』だ。いえ、読んだわけではなく(すみません…)、書評を書いていた、とある書籍販売の小冊子で、料理本やダイエット本ばかりが売れるなか、小説としては驚異的に売れたので記憶に残ったのである。 その『恥辱』をすっとばして『イエスの幼子時代』に挑む。人間としてのイエスを描くといえば、国家を巻き込む大論争を起こした、同じくノーベル賞作家サラマーゴの『イエスによる福音書』が思い出されるではないか、と、思いきや。 苦もなくすらすらと読める。 読める、だがしかし。 タイトルからして、出てくる5歳の身元不明の男児がおそらくイエスであろう。ここではダビードという名前だけれど。この子がまた、小賢しいことを言ったかと思えば、わがままだし、「なんでなんで」くんだし、でもやっぱり可愛いし、要するに普通の子なのである。途中で「おお、ここで水をワインに変えるのか」「よもやこの死人を生き還らせるのでは」みたいな期待することも最初はあったが、それもない。たまに、ふと「光」を感じることは、もちろんあるのだが。 身寄りのなさげなこのダビードの面倒を成り行きから見ることになったのは、初老の男、シモンである。二人は、どこぞからみんなで乗って来た船で乗り合わせたのだ。 たどり着いたのはなぜかスペイン語が公用語の地で、みんながそこそこ幸せで、だれも皮肉も意地悪も言わない、福祉で生活の面倒を全部見てもらえる(とはいえひどい水準だが)、いわば「楽園」なのである。 そして登場人物は、だれもその過去はさっぱりわからない。というか、自分たちでも覚えていない、気にしない。シモン以外は。 過去にいた世界は消滅したのだろうか?ということは、乗って来た船はいわばノアの箱舟なの? …よくわからない。 「なんでなんで」くんの質問にいらっと来つつも、ちゃあんと答えてあげるシモンに感心し、すいすいと軽妙な文章を読み進めながら…髪の毛を一本、だれかに引っ張られているような気持ちの悪さ、痛さが抜けないのだ。 そういえば、例の『恥辱』、評の冒頭が「不愉快な小説です」という衝撃的な文章だった。 『イエスの幼子時代』もまた、愉快でありながらたいへん不愉快な小説であり、そこが魅力の摩訶不思議な小説なのであった。
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朝日新聞に読後のロス状態から未だ回復できていないとまで書いてあったので早速購入したのだが… 読み始めから違和感を覚える。イネスとの出会いや子育てなと、どう考えてもあり得ないだろう?!と思い続けながら次への展開を期待するも、そのまま終了。ダビードなど、中国語で言う所の“小皇帝”状...
朝日新聞に読後のロス状態から未だ回復できていないとまで書いてあったので早速購入したのだが… 読み始めから違和感を覚える。イネスとの出会いや子育てなと、どう考えてもあり得ないだろう?!と思い続けながら次への展開を期待するも、そのまま終了。ダビードなど、中国語で言う所の“小皇帝”状態。 確かに途中途中で、妙に達観した、それ程年寄りでもないのに年寄りを演じるシモンの考え方や性への衝動に考えを同じくするところもあるけれど、最後にはその様なわかったことを言う彼に対しても腹立たしく感じてくる。 イエスの幼少期にあって、ナザレの住民が感じていた違和感を、現代の私達に対して同じレベルで感じられる様に考えて創作しているとしたら、ある意味では作者の目的は果たされているだろう。 しかしながら、神という絶対者を感じさせない人の集合体の中では、突飛な思い付きの連続としか思えない。
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世界の二重性(現実と夢、理想と建前、合法と違法・・・・)は最近のブームなのか。松山巌『ちちんぷいぷい』もそうだったし。まあ、今の現実社会がダブル・スタンダードだからな。
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非常に面白くて、あっと言う間に読了。この本、読むタイミングで感じ方が変わる本だと思います。寓話的小説ですが、イーヨー的なやりとりが多く、でもテンポよく、読みやすかったです。クッツェー、もう少し読んでみようかな?
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