写真集 ブラジルの光、家族の風景 の商品レビュー
大原治雄はブラジル開拓農民写真家である。1927年にブラジルに渡り、開拓農民として働く傍ら、家族の記録や風景、抽象写真など2万点以上の写真を撮った。渡航後、70年あまりをブラジルで暮らして、1999年に90歳で没するまで、再び日本の地を踏むことはなかった。 ブラジルでは生前からよ...
大原治雄はブラジル開拓農民写真家である。1927年にブラジルに渡り、開拓農民として働く傍ら、家族の記録や風景、抽象写真など2万点以上の写真を撮った。渡航後、70年あまりをブラジルで暮らして、1999年に90歳で没するまで、再び日本の地を踏むことはなかった。 ブラジルでは生前からよく知られた写真家であり、死後、その作品は遺族からブラジルのモレイラ・サーレス財団に寄贈された。 2008年の日本ブラジル移民100周年に併せて、大々的な回顧展も行われた。 個人的には大原を知ったのは、2015年、日伯修好120年の節目に制作されたNHKの番組だった(『新天地に挑んだ日本人』)。番組で紹介された写真は、もっと見てみたいと思わせる魅力のあるものだった。 その翌年、大原の故郷である高知を含め、日本での巡回展が初めて行われた(NHKの日曜美術館でも紹介された)。 大原の生前は叶わなかった「里帰り」が、作品を通してなされた形だった。 本書はその図録にあたる写真集である。 収録作品はすべてモノクロで、4部構成。 「移住地」「コンポジション」「子どもたち」「家族」 と題される。 「移住地」では、大地に足を付け、厳しい環境で、皆で支え合う暮らしが映し出される。逆光を使った写真にインパクトがある。村の素人芝居が微笑ましい。 「コンポジション」は、自然や生活の中の構図をシャープに切り出した作品が多い。時に抽象的で、リズミカルな繰り返しや、規則性と不規則性のコントラストなどが心地よい。 「子どもたち」は、自身の子や親戚の子たちを愛情深く捉える。ネコにご飯を狙われていることにも気付かず遊び食べしている子、花を手にはにかむ子、並んで宿題に励む子を見つめるカメラが温かい。 「家族」では、ともにブラジルに渡った祖母、苦楽を共にした後に難病に倒れた妻が印象的。銀婚式を目前にした夫婦のシルエット写真が味わい深い。 モノクロのシャープな構図は、植田正治の「植田調」も思い出させるが、より「自然な」「作為を感じさせない」感じだろうか。 過酷な生活の中、農作業に励み、家族を愛した1人の写真家。 鋭い感性で撮り続けた写真からは、家族の温かで確かな「記憶」がにじみ出る。
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移民としてブラジルに渡り、妻と「日本に一度帰ろうね」と言いながらも帰ることのなかった、アマチュア写真家の秀逸な写真集。家族を中心に撮影された項目と物や風景をコンポジションとして捉えて、撮影されたものに目を見張った。家族に対して愛情を感じる写真たちに感動した。移民としてご苦労もあっ...
移民としてブラジルに渡り、妻と「日本に一度帰ろうね」と言いながらも帰ることのなかった、アマチュア写真家の秀逸な写真集。家族を中心に撮影された項目と物や風景をコンポジションとして捉えて、撮影されたものに目を見張った。家族に対して愛情を感じる写真たちに感動した。移民としてご苦労もあったことと思いますが、そんなことはあまり感じさせない、笑顔の多い写真たちで一読の価値ありです。
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移民として移住した、その場所で 働いて、食べて、眠って、睦みあって、起きて 働いて… そのまんまの日常をなんの衒いもなく写し撮っているだけ それなのに 心の底からじんわり揺り動かされるのは なぜだろう 何気ない日々がこんなにも美しい 何気ない一枚の写真が人生を肯定している 今の...
移民として移住した、その場所で 働いて、食べて、眠って、睦みあって、起きて 働いて… そのまんまの日常をなんの衒いもなく写し撮っているだけ それなのに 心の底からじんわり揺り動かされるのは なぜだろう 何気ない日々がこんなにも美しい 何気ない一枚の写真が人生を肯定している 今の私たちの暮らしに「それでいいのか!」 と 厳しい質問を突き付けられるようだ
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