近代日本の私学と教員養成 の商品レビュー
本書は、戦前の私学における教員養成に関する大学・各学校を分析対象として、官立の旧帝大・高等師範と比較しながら輩出する人材を層別化した研究だった。貴重な史料を基に集計されたデータから、高師の補完機関として位置付けられていた私学が、教員社会における校長に昇進しにくいノンエリート層を生...
本書は、戦前の私学における教員養成に関する大学・各学校を分析対象として、官立の旧帝大・高等師範と比較しながら輩出する人材を層別化した研究だった。貴重な史料を基に集計されたデータから、高師の補完機関として位置付けられていた私学が、教員社会における校長に昇進しにくいノンエリート層を生み、彼らが比較的よくない待遇に甘んじながら、良い意味で教師としての多様性を保持していた機能を指摘した。その教育の特徴としては、5章の夜間部の例でもわかるように学習上のかなりの負担が求められた。しかし、私学の高師部は、戦中までに、高等教育機関のヒエラルキーとして比較的低い地位はほぼ固定された。新制大学となった後もどこかでその出自を思い出してしまうのが「教育学部」なのだろう。 なお、著者による博士論文をリライトされた本書から、その学位を得るまでの長い道のりを追体験できよう。
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