『深い河』創作日記 の商品レビュー
『深い河』は、こんなにも綿密に計画立てて書かれた小説だったのか。 少し前に読んだ、とあるファンタジー小説の作者は、「頭の中で、登場人物が勝手にしゃべって動き出すんです」とあとがきで述べていたが、対して『深い河』は、「ここはキリストのあの場面と重なるような構成にしよう」、「ここで、...
『深い河』は、こんなにも綿密に計画立てて書かれた小説だったのか。 少し前に読んだ、とあるファンタジー小説の作者は、「頭の中で、登場人物が勝手にしゃべって動き出すんです」とあとがきで述べていたが、対して『深い河』は、「ここはキリストのあの場面と重なるような構成にしよう」、「ここで、彼にこんな恋愛沙汰を起こさせるとドラマチックになるか」など、色々と検討されていたようで、そのファンタジー小説の作家と作品を作る過程が違い過ぎて、いろんな小説家がいるんだなと思う。 こんなにも細かな仕掛けが隠されているのなんて、またもう一度『深い河』を読み直したくなる(キリスト教についてもっと知っていれば、さらに感動するんだろうな…)。計画されていたけど、採用されなかった筋書きなんかも思い返しながら再読するのも楽しそう。 『沈黙』、『侍』、『スキャンダル』も読んでみたい。
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解説にあるように、もう自分の人生の残り少なさを実感しながら身を削って小説を完成させる老作家、を日記体で書き上げた小説のような読後感が、まぎれもなく日記なのにかかわらず、ある。 日記だけでは量が足りず、三浦朱門と河合隼雄の対談がついているのだが、これが埋め草にもなっていない。河合隼...
解説にあるように、もう自分の人生の残り少なさを実感しながら身を削って小説を完成させる老作家、を日記体で書き上げた小説のような読後感が、まぎれもなく日記なのにかかわらず、ある。 日記だけでは量が足りず、三浦朱門と河合隼雄の対談がついているのだが、これが埋め草にもなっていない。河合隼雄のコメントはまぁ首肯できないこともないのだが、三浦朱門は「作家の日記」とかの存在を知らないのだろうか?! ーなんかこの人の俗物ぶりが鼻につくだけで、面白くもなんともない。ない方がいいくらいに思う。
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「深い河」を読んだ勢いでこれも読んだ。作家の創作日記を読むのは初めてであった。作家がどのような気持ちで小説を書いているのかなどを知れて面白かった。 でも、日記よりも宗教の根本にあるもの、の方が響いた。
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遠藤周作最後の作品となる”深い河”創作日記。病魔と闘い老年の辛さのなかで書き上げた壮絶の日々。華々しい成果の裏側に、こんなにもみじめさと情けなさと向き合う毎日があったとは、想像もつかなかった。自身の大部分を投影した小説と言われる所以が理解できる気がした。 また、宗教とは何か?を...
遠藤周作最後の作品となる”深い河”創作日記。病魔と闘い老年の辛さのなかで書き上げた壮絶の日々。華々しい成果の裏側に、こんなにもみじめさと情けなさと向き合う毎日があったとは、想像もつかなかった。自身の大部分を投影した小説と言われる所以が理解できる気がした。 また、宗教とは何か?を考えるうえで、20ページにわたり纏まっている著者の宗教観は非常に勉強になった。(以下抜粋) 宗教とは思想ではなく、無意識である。 目に見えないものが何かを通してささやいてくる。ある行為や出来事を通して語ってくる。それを私は宗教性という。 ・・これまで宗教的対立とみなされて来たことは、実は本当は宗教的対立ではなく、それぞれの文化、言語の違いによる、宗教から見るといわれない対立だと言えるのではないか。
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