図解入門よくわかる最新熱処理技術の基本と仕組み 第3版 の商品レビュー
学術関連の知識の整理を、図解をふんだんに使って、解説している本です。つい先週、勤務先の後輩から、熱処理について質問されて、以前それに関する学科を卒業したのですが、たどたどしく答えました。 その時は、昨年、同じ会社から出された「これだけ熱処理」という本のレビューを挙げていたので、...
学術関連の知識の整理を、図解をふんだんに使って、解説している本です。つい先週、勤務先の後輩から、熱処理について質問されて、以前それに関する学科を卒業したのですが、たどたどしく答えました。 その時は、昨年、同じ会社から出された「これだけ熱処理」という本のレビューを挙げていたので、それを見ながら説明して、なんとか切り抜けました。この本も、熱処理について詳しく書かれていてためになりそうです。 以下は気になったポイントです。 ・熱処理とは、「赤めて(熱して)冷す」こと、冷し方によって金属組織や硬さが異なる。冷し方は、1)炉冷(徐冷)、2)空冷、3)水冷(急冷)がある。炉冷の場合は、粗いパーライトとフェライト組織で硬い、空冷の場合は、密なパーライトとフェライトで炉冷より硬い、水冷の場合は、マルテンサイトで硬い組織となる(p11) ・熱処理技術の三大分類は、1)標準化処理(焼なまし・焼ならし)、2)硬化・強靭化処理(焼入・焼き戻し、調質)、3)表面硬化処理(浸炭焼入れ・焼き戻し、高周波焼入れ・焼き戻し、窒化・軟窒化、表面改質)(p11) ・炭素の含有量が0.02%以下だと「鉄」、0.02-2.1%だと「鋼」、それ以上を鋳鉄という(p22) ・常温の鋼では、Cはセメンタイトを形成し、オーステナイトに加熱されるとその中に固溶し、徐冷するとフェライト・セメンタイト、急冷すると固溶したままとなる(p24、26) ・鉄-炭素系平衡状態図、炭素含有量によって析出する組織が異なる。共析反応を起こすC:0.77%がポイント(p31,33) ・焼きなましは、目的に応じて5種類の方法(拡散・完全・球状化・等温・応力除去)があり、加熱温度が異なる(p59) ・焼きならしは、粗大化した結晶粒を微細化するのが目的、冷却は空冷。熱間鍛造して、機械加工に入る前に行われる(p68) ・焼き戻しは、硬さを減じるかわりに、粘性をもたせる。内部応力を減少させ、経変変化を防ぐ等が目的(p78) ・JISで決められた特殊鋼の記号と表示例、K:工具、D:ダイス(金型)、U:ユース、J:ジャーナル(軸受)、S:ステンレス、C:キャスト(鋳造)等(p93) ・Cr-Ni系ステンレス鋼(オーステナイト系)は、SUS316(18Cr-12Ni-2.5Mo)、SUS304(18Cr-8Ni)、SUS302(18-8-高C)、マルテンサイト系は、SUS440C(18Cr-1C)、フェライト系は、SUS430(18Cr)がある(p111) ・DLC(ダイヤモンド・ライクカーボン)は、高熱伝導率により、摩擦熱を拡散させて接触による昇熱を防ぐ。また硬さが高いので耐摩耗性に優れるので、ドライ切削が可能になる。低温処理が可能なので、表面硬さ低下を伴わない、高寿命化を可能にしている(p206) 2016年7月18日作成
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