1,800円以上の注文で送料無料

シナリオ入門 の商品レビュー

5

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2015/12/26

2004年購入。途中まで読んで10年あまり放置していたものを再読。本日読了。 なぜこれを買ったかというと、当時脚本がひどいアニメがあってそれを批評するための資料として。しかしそんなマイナスの動機では読みこなすことはできず。 再読したきっかけはここ数年のアニメの脚本の進歩を実感...

2004年購入。途中まで読んで10年あまり放置していたものを再読。本日読了。 なぜこれを買ったかというと、当時脚本がひどいアニメがあってそれを批評するための資料として。しかしそんなマイナスの動機では読みこなすことはできず。 再読したきっかけはここ数年のアニメの脚本の進歩を実感したから。アメリカにハリウッドあれば日本に深夜アニメあり。現在の日本のアニメの脚本技術は決して世界に対し引けをとらないと確信している。 その確信について理論的に裏付けてくれるのが本書。横書きのシド・フィールド氏のハリウッド流三幕構成論。 縦書きパートは日本の映画やドラマの脚本の1991年当時の記事。これはこれで、大御所脚本家のアンケート結果など面白い。 シド・フィールド氏の三幕構成論は1980年頃の脚本構成論で、その後も新しい理論が提唱されているらしいが、現在でも通用するもの。この本を買わずともwikipediaで概要が分かる。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%B9%95%E6%A7%8B%E6%88%90 私が注目しているのは、現在のヒットアニメがことごとくこの三幕構成に合致している点。これは偶然の一致ではなく、各脚本家が意図してそのようにシリーズ構成を行っていると考える。 例をいくつか。 『魔法少女まどか☆マギカ』、脚本虚淵玄。 第一幕:3話まで、プロットポイント1:マミる。 第二幕:9話まで、ミッドポイント:6話、ソウルジェムが変身アイテムではなく魔法少女の本体と判明、以後魔法少女が人間やめていることが分かる。プロットポイント2は魔女オクタヴィア討伐。 第三幕:10~12話、ほむらの正体判明から魔法少女問題の最終解決。 『ガールズ&パンツァー』、脚本吉田玲子。 第一幕:3話まで、プロットポイント1:校内模擬戦。大洗女子で西住みほが戦車道に復帰。本人はあまり気が進まなかったが生徒会と友達は乗り気。結局みほが戦車道のリーダーに。 第二幕:9話まで、ミッドポイント:6話、サンダース校戦。ここまでは苦戦はするがみほの経験により勝てる。聖グロリアーナ女学院戦は負けるが敢闘を評価される。いずれにせよ、前半は戦車道の明るい面が強調される。後半はプラウダ校と黒森峰校という勝つためなら手段を選ばない(ルールの範囲内だが)敵との戦い。戦車道の闇の部分が見えてくる。一方で大洗女子の結束が強まる。プロットポイント2:プラウダ校に辛勝。 第三幕:10~12話、黒森峰校戦を通してみほが自分の戦車道を見つける。 『ビビッドレッド・オペレーション』、シリーズ構成吉野弘幸。 第一幕:4話まで、プロットポイント1:ひまわりちゃんを助けて4人の信頼の絆を結ぶ。 第二幕:10話まで、ミッドポイント:7話、リーダーのあかねが負傷。プロットポイント2:黒騎れい捕縛、あかねたちの正体がばれてれいが感じ始めていた友情が裏切られる。 第三幕:11~12話、友情パワーが世界を救う。 『響け!ユーフォニアム』、脚本花田十輝。 第一幕:4話まで、プロットポイント1:滝先生が吹奏楽部の練習の成果を認める。 第二幕:10話まで、ミッドポイント:7話、吹奏楽部の過去のいざこざ判明、部長が落ち込んで立ち直る。そして7話ラストで加藤ちゃんが久美子に秀一との関係を尋ねる。これをきっかけに以後久美子と麗奈の関係が急に深まり、吹奏楽部の群像劇から2人の物語に変わる(1話アバンもこの2人から始まった)。プロットポイント2:滝先生と麗奈の不適切な関係疑惑浮上。 第三幕:11~13話、久美子と麗奈の悲願達成。 シド・フィールド氏の理論は2時間の映画のためのものであるにもかかわらず、1クールの深夜アニメも同じ理論でかっちり構成がなされていることに驚く。それも複数の脚本家の作品にわたって。 「アニメは3話までで判断しろ」といわれるのは第一幕でいかに上手に作品世界を説明できているかが評価に大きくかかわるから。実際、ほとんどの名作アニメが3話までにファンの心を掴んでいる。 推測するに、三幕構成は、人が問題に直面し、それを把握して解決方法を模索し、解決する、という脳の働きの順番にうまく整合しているからではないかと考えている。 いずれにしても、シナリオの構成論は映像メディアの脚本を批評する上で必要となる基礎知識だと考えるので、多くの人に知っておいてほしい。

Posted byブクログ