とろめき商店街 の商品レビュー
お馴染みの下町人情路線で描いた「寅さん」な主人公
一人旅があればホテルを舞台にしたり、あるいは村の淫習があるかと思えば夜這いの寝取られが出てきたりと幅広い題材から様々なテイストを挑戦的に上梓してきた竹書房文庫の葉月作品において6作目となる本作は『下町とろみつ通り』(2015年)以来の人情路線である。 今ではお馴染みと言える...
一人旅があればホテルを舞台にしたり、あるいは村の淫習があるかと思えば夜這いの寝取られが出てきたりと幅広い題材から様々なテイストを挑戦的に上梓してきた竹書房文庫の葉月作品において6作目となる本作は『下町とろみつ通り』(2015年)以来の人情路線である。 今ではお馴染みと言える下町のハートウォーミングな喧騒が描かれる中、今回は30歳の主人公をべらんめぇながら意気地がなくて惚れっぽいのにフラれてばかりという、まるで「寅さん」のような男にしているのが特徴。となれば隣の団子屋の看板娘で幼馴染み(27歳)はさしずめ「さくら」といったところか。では「マドンナ」は?となるが、高校時代は憧れの的で今は人妻の同級生が『帰ってきたマドンナ』(第一章の章題)として登場するのである。あと、ついでに言えば主人公と仲良しの同級生で焼き鳥屋の後継ぎは立場的に「タコ社長」かもしれない。 ただ、このマドンナも含めて基本的には1人1章のスタイル。次々と現れては主人公との情交を経て心と体を癒してもらい、新たな希望を得て去っていくヒロイン達である。これを恋の始まりと期待しては肩透かしを続ける主人公というお約束的な展開なのだが、子供の頃からずっと隣で見てきた幼馴染みが(他の作品では不憫な役回りも多いキャラだが)本作では最後にこっ恥ずかしくも素敵な結末へと導いている。 他にも家庭を顧みない夫に嫌気が差して家を飛び出してきた人妻(家事を完璧にこなす理想の主婦)や商店街の活性化のために派遣されてきたコンサルタントの女史(クールな美貌にギャップのある性癖)といったヒロイン達がアラサーの妙齢さで揃っているのだが、官能描写は総じて優しい。作風からすれば致し方ない面もあるとはいえ、せめて途中で体位を変化させるくらいの描写とボリュームは欲しかったように感じた。
DSK
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