ザ・ストーリー の商品レビュー
ハリウッドで活躍するシナリオ講師ロバート・マッキーによる「ストーリーを語る」ための原則論。巷にあふれる創作指南書のように<三幕構成の比率>や<ターニングポイントの位置>といった公式を提示するのではなく、「ストーリーとは何か?」という根源的なテーマにもとづいて「内側から書く」ことを...
ハリウッドで活躍するシナリオ講師ロバート・マッキーによる「ストーリーを語る」ための原則論。巷にあふれる創作指南書のように<三幕構成の比率>や<ターニングポイントの位置>といった公式を提示するのではなく、「ストーリーとは何か?」という根源的なテーマにもとづいて「内側から書く」ことを論じる。 世の中にはプロだけでなく、アマチュアを含めて星の数ほどの創作者が存在する。意欲のある人はシド・フィールドやブレイク・スナイダーといった著名なシナリオ講師の参考書を手に(あるいはWikipediaで『三幕構成』のページを参照して)、物語の基本的なフォーマットを学ぼうとするだろう。しかし、そうしたフォーマットを厳守した作品が日々生み出されているにもかかわらず、人々の心をゆさぶり強烈な感情体験をさせるものは驚くほど少ない。多くの名作に共通している形式だからといって、ただ真似をしても意味がないのである(そもそも受け手は「この作品は中盤にミッドポイントが配置されているから」などという理由で感動を得るわけではない)。 ストーリーは数学とは違う。公式通りに書かれた作品が最適解とは限らない。本書で述べられるのは、ストーリーを構築するあらゆる要素の「原則」である。<葛藤を描くための原則>や<シーンをデザインするための原則>が次々と――もちろん、豊富な具体例をともなって紹介されている。機械的に公式をなぞるだけでは受け手の心に響かないが、原則を極めたうえで想像力を働かせれば多少なりとも最適解に近づくことができる。本書は「埋めるだけで素晴らしい作品が書けるようなリストを知りたい」「傑作のレシピを教えてほしい」という読者には期待外れかもしれない。だが物語の何たるかを学び、さらなる研鑽を積もうとする読者にとってはかけがえのない教師となってくれるはずだ。名著。
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(目指すべきゴールは?)……「よいストーリー」とは世界の人々が聞きたいと思う、語るに足るストーリーである。これを生み出すのは孤独な仕事だ。それにはまず才能が必要だ。だれも考えもしなかったような方法で物事をまとめ上げる創造力を備えていなければならない。 真実への愛――嘘はアーティストを駄目にする、人生の真実は、自分の心の奥深くにあるものも含め、すべて問い直す必要があることを認識する。ストーリーの「組み立て」は作曲に似ている。何を含めるか、何を除外するか、どういう順で並べるか、それが問題だ。 (成功する人としない人の分かれ目とは?)……状況説明にはペースの調整が必要である。説明を行うにも進行のパターンがある。重要性の低い事実は早い段階で、高い事実はもっとあとで知らせ、最も重要な事実は最後に知らせる。”顧客が知る必要のある情報、知りたいと思う情報だけを明らかにし、それ以上の情報を与えてはならない”。 (「語らず見せる」、そして気づかれない?)……成功する人としない人の分かれ目は仕事の仕方にある。内側から外に向かって書くのか、外側から内に向かって書くのか、それが問題だ。彼らは6か月の最初の4か月を、3インチ×5インチの大きさの何束ものカードにアイデアを書く作業にあてる。成功する脚本家が数束のカードに数か月かかりきりになるのには大きな理由がある。彼は自分の作品を”壊したい”のだ。才能はあっても”自分が書くものの90%はせいぜい凡庸でしかない”ことを彼は経験とすぐれたセンスから知っている。質の高い作品を地道に目指す彼は、”とても使い切れないほどのアイデアを生みだし、次に壊す”。
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