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国語の冒険 の商品レビュー

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2021/03/12

筑波大附属小学校で長年国語を教え、国語に関する著書も多数出版されている白石範孝先生が、筑波附属小を定年退職されるにあたって出された本。 「なんのための国語なのか?」「なぜ、国語があいまいな教科になってしまったのか」など、白石先生が抱く国語への疑問と、その疑問からなぜ「用語」「方...

筑波大附属小学校で長年国語を教え、国語に関する著書も多数出版されている白石範孝先生が、筑波附属小を定年退職されるにあたって出された本。 「なんのための国語なのか?」「なぜ、国語があいまいな教科になってしまったのか」など、白石先生が抱く国語への疑問と、その疑問からなぜ「用語」「方法」「原理・原則」や「3段階の読み」「観点」などを生み出すに至り、こだわってきたのか、その思いが語られています。そこには白石先生が現在の日本の国語教育で課題と感じる「感覚とイメージ」の国語の授業への疑問と違和感が発端としてあるそうです。 それぞれの「用語」「方法」「観点」については他の書籍に詳しく記述されているのでそちらで確認してほしいですが、特にこの本の読みどころは合間に挟まれた《ミーティングルーム》。 白石先生と国語について研究をしあっている仲間(匿名ではあるが)との談話が載っています。 そこでは 「白石先生は、よく『国語も算数のように……』っておっしゃいますが、ちょっと誤解されてしまうんじゃないかと、最近思うようになったんです。」という質問や、接続語に着目して読むことをテクニックと指摘する声への白石先生の回答が書かれています。 そこを読むと、白石先生自身、ツールにこだわることの危険性を理解しつつも、それでもなお何も与えずに、ただ読みなさい、書きなさい、考えなさいと生徒にさせている国語への強い問題意識を持っていらっしゃることが分かりました。 白石先生の本を手にとったきっかけは、自分自身の授業が「感覚とイメージ」の国語の授業になっていると感じたことからでした。そこで白石先生の「用語」や「方法」などに基づいた授業方法を知り、授業づくりで大いに参考にさせていただきました。大変お世話になっていた者としては、上記のこだわりに至るまでの過程を知り、さらに頭が下がる思いです。 また、国語と道徳が混同してしまうこと(国語の読みで道徳教材を読んだり、国語で登場人物の気持ちに過度に踏み込んでしまうこと)を白石先生も若い時に経験し、今も道徳は苦手意識があることを知り、親近感を感じました。 白石先生の本だとおそらく『白石範孝の国語授業の教科書』(東洋館出版社)が有名だと思われますが、そこに載っている「物語の10の観点」「説明文の10の観点」「詩の5の観点」と本書に載っているそれらの観点の項目が若干変わっていました(「登場人物」と「語り手」が別々だったのが、「登場人物」と「語り手」を両方を含んだ「人物」の観点になっていたなど) 日々実践を見直されているのだと感服しました。 白石先生の国語への教育哲学を知りたい方はぜひ。

Posted byブクログ