日影丈吉 幻影の城館 の商品レビュー
小説の世界に引き込む技の妙という点で最も信頼できる作家の一人ではないかと思う。本書では例えば『吉備津の釜』のようなウルトラCは見られないが、『異邦の人』のラストで典型的に見られるようなある種ブラックな社会批評眼をベースに正攻法で世界を作る腕の冴えには唸らされる。
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収録されている作品がどの程度バラエティに富むか、という観点からみると、先に読んだ『日影丈吉傑作館』のほうに軍配は上がるが、こちらも「謎を解き切らない余韻」や、"妖しい"女性の魅力(決して「魔性の女」のステレオタイプに嵌らないのが良い)。 お気に入りは異色のクリ...
収録されている作品がどの程度バラエティに富むか、という観点からみると、先に読んだ『日影丈吉傑作館』のほうに軍配は上がるが、こちらも「謎を解き切らない余韻」や、"妖しい"女性の魅力(決して「魔性の女」のステレオタイプに嵌らないのが良い)。 お気に入りは異色のクリスマスストーリー「変身」、妖しい女性モノからは「ふかい穴」
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個人的には「傑作館」のほうが好き。評価する方も居られるが、女性の描かれ方や末路が、私にはどうも癪に触ってなんだか集中しきれないし、少年の推理にも、前の編にあった神秘性が寡ない。それでも気に入ったのは、「崩壊」と「冥府の犬」。同じく不思議の要素を持っていて、前者は澁澤龍彦を、後者は...
個人的には「傑作館」のほうが好き。評価する方も居られるが、女性の描かれ方や末路が、私にはどうも癪に触ってなんだか集中しきれないし、少年の推理にも、前の編にあった神秘性が寡ない。それでも気に入ったのは、「崩壊」と「冥府の犬」。同じく不思議の要素を持っていて、前者は澁澤龍彦を、後者は京極夏彦(後者は現代の作家だけれど)の作風を連想させる。
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1950~60年代の日本を包んでいた独特な空気の下、思春期の少年が大人の女に対して抱くミステリアスなエロティシズム…、のようなものが漂う作品が多い。 文体は流麗で、幻想的な世界からは様式美も感じられる。
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『日影丈吉傑作館』に続く河出文庫の短編集。 前作より本書の方が作品のセレクトとしては好みだった。解説ではオチに関してやや批判的なことが書かれている『オウボエを吹く馬』も、個人的には好きだ。但し批判そのものは的確だろうとは思う。 それ以外では、『匂う女』『崩壊』『蟻の道』『冥府の犬...
『日影丈吉傑作館』に続く河出文庫の短編集。 前作より本書の方が作品のセレクトとしては好みだった。解説ではオチに関してやや批判的なことが書かれている『オウボエを吹く馬』も、個人的には好きだ。但し批判そのものは的確だろうとは思う。 それ以外では、『匂う女』『崩壊』『蟻の道』『冥府の犬』が印象に残っている。台湾ものはエキゾチシズムもあって良かった。
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