殉教者 の商品レビュー
一人の殉教者の評伝であると同時に、老境に差し掛かった作者の信仰告白の書でもあるという印象を受けた。ネット上で「自爆テロみたいで怖い」というレビューが散見されるが、全くの的外れと言えよう。罪のない無関係な人々を巻き添えにする非情な暴力行為である自爆テロと、あくまでも非暴力・無抵抗に...
一人の殉教者の評伝であると同時に、老境に差し掛かった作者の信仰告白の書でもあるという印象を受けた。ネット上で「自爆テロみたいで怖い」というレビューが散見されるが、全くの的外れと言えよう。罪のない無関係な人々を巻き添えにする非情な暴力行為である自爆テロと、あくまでも非暴力・無抵抗に信仰告白をしつつ、命がけで心を同じくする人々と共に生きようとする本書の主人公とを、イコールで結んで考えられるということ自体が信じがたい発想である。
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図書館で借りた本。ペトロ岐部カスイの巡礼を書いた内容でその時々にいた場所や風土、キリシタンに対する扱いなども含め、殉教者たちの足取りが分かる。江戸時代初期に日本で初めて砂漠を歩いてエルサレム巡礼した人物?の可能性があり司祭にまでなった教養ある人。
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新聞の書評で知った本。 日本人で、江戸時代キリスト教迫害の嵐の中、 密かに長崎半島の南、野母港から、出航し フィリピン(マカオ)、マレーシア(マラッカ)、インド(ゴア) ホルムズ海峡を船員として働きながら渡り、 バグダッド、アレッポ、ダマスカス、エルサレム、 ガラリア湖、イスタンブールとラクダの隊商に 駱駝引きとして働きながら、 ヴェネチア、、ローマへと。 正式にイエスズ会に入会し、数々の試験を経て 正式に司祭になった初めての日本人。 加賀乙彦さん自身も、熱心なキリスト教徒なので その経緯やペトロ岐部河水のイエスの足跡を巡り それを肌で感じたいという、旅の詳細も実に詳しい。 往路よりも険しい復路。 そして、弾圧厳しい日本で、キリスト教徒を支えながらも 自らも激しい責め苦で命を落とす。 私はキリスト教徒でないから、教徒目線では見れなかったのですが キリストの足跡を追い、奇跡を目にし、 興奮する様子は今で言う所の ディープなアニメオタクにも似ている。 アニメの登場する場所を見に行って感激したり、 アニメの主人公の言動に感化されて、その文化さえ知ろうと するような熱心さ。アニメの主人公は決して諦めない。 厳しければ厳しいほど、苦難があればあるほど、 その信仰心に火がつき、情熱を持って立ち向かう。 キリストの立ち寄った場所に立つと、 その興奮は一気にボルテージが上がる。 ジョン万次郎にも似て、ペテロはその真面目な勉学家の一面は あった人々に感心され信頼も受ける。 信仰を脇に押しやって、アドベンチャーとしても面白い一冊。 シルクロードなどの旅については、推察の域をでないかもしれないが 陸を渡ってローマに着いたとか、ローマでの述懐から類推しての 物語構成なのだろう、実際はそう遠くはないだろう。 また、あの通信手段が少ない 江戸時代であっても、東回り、西廻りと通信内容が紛失しないよう 二つの書簡をローマへ送ったという。 日本でのキリスト教はまだまだ草生期、そんな異国でも キリスト教布教の為命を落としてまでも貢献した信者の名を 記録し称える為にこんな面倒なことをしていた。 殉教者がどれだけ、後進の信者に影響があったか。 また殉教の精神がどれだけ信者にとって尊いことだったか。 I・Sというイスラムのテロ集団はそんな信者の殉教という 精神的高みを悪用してると言われて久しいが、 実は古くからこのような考え方が広くあって、 宗教を問わず同じように、ずっと殉教者が多く存在し続けたのだ。 その点も興味深かった。
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