吉里吉里人 の商品レビュー
ある六月上旬の早朝、上野発青森行急行「十和田3号」を一ノ関近くの赤壁で緊急停車させた男たちがいた。「あんだ旅券ば持って居だが」。実にこの日午前六時、東北の一寒村吉里吉里国は突如日本からの分離独立を宣言したのだった。政治に、経済に、農業に医学に言語に……大国日本のかかえる問題を鮮や...
ある六月上旬の早朝、上野発青森行急行「十和田3号」を一ノ関近くの赤壁で緊急停車させた男たちがいた。「あんだ旅券ば持って居だが」。実にこの日午前六時、東北の一寒村吉里吉里国は突如日本からの分離独立を宣言したのだった。政治に、経済に、農業に医学に言語に……大国日本のかかえる問題を鮮やかに撃つおかしくも感動的な新国家。
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文量が多く最初は非常に読みづらかった。やたらと話が脱線しストーリーがちっとも進まない。たった1日の出来事を時系列にのべるだけで、上下2段400ページ近くを費やしている。 しかし、後半部分は場面がテンポよく変化し、だんだんとページをめくるスピードも増した。 それでも、読み終えるまで...
文量が多く最初は非常に読みづらかった。やたらと話が脱線しストーリーがちっとも進まない。たった1日の出来事を時系列にのべるだけで、上下2段400ページ近くを費やしている。 しかし、後半部分は場面がテンポよく変化し、だんだんとページをめくるスピードも増した。 それでも、読み終えるまでに2週間かかったが… それにしてもすごいのは、文量の多さだけではない。この作品を執筆するにあたって作者は膨大な情報を収集し、選別していったのだろう。 法律や社会問題等、多岐にわたる分野の情報を駆使しているにもかかわらず、物語の中で絶えずユーモアが端々に散らばっている点に脱帽である。 あれだけ引っ張っていたにも関わらず、結末はあっという間で、意外だった。 そして、そこに笑いを用いながら世間に問題提起をするという、井上ひさし独特の作品性を感じた。
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