星空の演出家たち の商品レビュー
妖しさあふれる空を見て、星を見て、(電光ではない)月の光に照らされつつ・・・ゆっくりと想像を巡らせ、感性をを刺激される時間を作ろう。 「その人の有する人間力以上のものがその人から出てくることはない。魅力ある解説者になるためには、人間力を高めるための自己研鑽をし続けていく真摯な態度...
妖しさあふれる空を見て、星を見て、(電光ではない)月の光に照らされつつ・・・ゆっくりと想像を巡らせ、感性をを刺激される時間を作ろう。 「その人の有する人間力以上のものがその人から出てくることはない。魅力ある解説者になるためには、人間力を高めるための自己研鑽をし続けていく真摯な態度こそが大切。」
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頂き物を拝読。 プラネタリウム。どこか懐かしさを誘う名前である。 大きなドームの下に座ると、やがて空が暗くなり、満天の星が現れる。 プラネタリウムの星空には解説が欠かせない。 時に星座の神話を語り、時に彗星や流星群など話題の天文事象に触れ、時に宇宙の成り立ちに迫る。 ゆったりと...
頂き物を拝読。 プラネタリウム。どこか懐かしさを誘う名前である。 大きなドームの下に座ると、やがて空が暗くなり、満天の星が現れる。 プラネタリウムの星空には解説が欠かせない。 時に星座の神話を語り、時に彗星や流星群など話題の天文事象に触れ、時に宇宙の成り立ちに迫る。 ゆったりと星を眺め、大空に夢を馳せる、そんな施設がプラネタリウムだ。 世界最大のプラネタリウムが日本にある、というのは、本書を読むまで知らなかった。 しかも民間運営ではなく公共の施設だ。 その名は名古屋市科学館。ドーム直径は35mにも及ぶという。 さらに特筆すべきは、1回50分、日に数回の投影をすべて学芸員が「ナマ」で解説することだ。その内容には日々、新たな知見を取り込み、一度としてまったく同じになる回はない。 人気のプラネタリウムは、土日ともなれば毎回満員御礼となるし、平日であっても活況を呈する。 本書はそんな、「世界一」のプラネタリウムを持つ、名古屋市科学館54年の歴史のお話だ。 名古屋市科学館のプラネタリウムの歴史は、1952年に全国で2番目に登場した公立天文台、東山天文台の誕生に遡る。初代台長は、アマチュア天文家だった。彼は猛勉強の末、国際機関が正式に認定する観測機関として、天文台をスタートさせる。 7年後、市立科学館開設にあたり、手腕を買われた彼は、プラネタリウム設置の責任者となる。プラネタリウム自体が珍しかった時代。天文係のスタッフとなったのは、ほとんどが運営経験のない人たちだったが、共通するのは星空に深い関心を持つことだった。 設立当初から、各々が自分の言葉で観客に語りかける「生きた」解説をするのがモットーだった。その伝統が脈々と受け継がれていくことになる。 名古屋市科学館はまた、市民に対する啓蒙活動や、子供たちに科学の扉を開く活動も熱心に行われている。幼稚園・保育園、小学校向けの幼児投影、学習投影も人気だ。子供向けの「天文クラブ」や「サイエンスクラブ」は多くの子供を集めた。集まった子供達は時に、星を媒として、学校を超えてさまざまな活動に取り組んだ。そうした中から、実際に次世代の学芸員として、名古屋市科学館に戻ってきた人もいる。 人の思いが歴史を紡いでいく。 名古屋市科学館は取り立てて資金が潤沢というわけでも、人員が多いというわけでもない。 昭和にわっと数多く作られたプラネタリウムが、観客減少や資金難で次々に閉鎖されていく中、このプラネタリウムが残ってきたのはなぜか。 それは、おそらく、専門家の高度な知識を持ちつつ、観客の目線を常に考え、「生きた」プログラムを作っているためにほかならないだろう。 目指すところは「立派」な発表ではない。「見終わった人が、その日、星空を見てみたくなるような」投影だ。 彼らのそんな熱意は、大きなドーム建設につながる。2010年に科学館がリニューアルされるのに合わせ、プラネタリウムも新調されることになったのだ。 限りなく本物に近い星空はどのようにしたら作れるのか。投影機、スクリーン、音響。すべてにおいて、「最高」を求め、彼らは奔走する。 怪我、病気、事故、大震災の思わぬ影響、引っ越し期間の大幅短縮。 さまざまな苦難を乗り越え、2011年3月にようやくリニューアルオープンに辿り着く。オープン後、しばらく経っても引きも切らない観客にうれしい悲鳴の日々という。 このあたり、お仕事の裏側拝見という意味でも読ませるのだが、読んでいて心配になるほど、彼らがオーバーワークであるのがいささか気になった。どうか適度な休息を取り、息長くすてきな解説を続けていただきたいと願わずにいられない。 空を見上げる。 宇宙を思う。 この空を見上げている別の誰かがいることを思う。 宇宙への畏れやあこがれ、興味は、きっと人と人とをつなぐ。 そんなことを思わせてくれるに違いない名古屋市科学館。 いつの日か機会があればぜひ訪れてみたい。
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