貧困世代 の商品レビュー
社会的弱者層の貧困問題の研究者であり、かつNPOの代表として彼らへの支援を行っている著者による、「貧困世代」の若者たちの実態と対策を述べた本。 2013年刊行。 「貧困世代」(Poor Generation)は、著者の創作語であり、1973年以降に生まれた日本の若者たちを指す。...
社会的弱者層の貧困問題の研究者であり、かつNPOの代表として彼らへの支援を行っている著者による、「貧困世代」の若者たちの実態と対策を述べた本。 2013年刊行。 「貧困世代」(Poor Generation)は、著者の創作語であり、1973年以降に生まれた日本の若者たちを指す。 現在の52歳以降で、約3600万人存在している。 貧困世代は、教育や国主導の福祉から排除され、奨学金返済や年金保険料支払いの重苦を背負っている。劣化した雇用・労働環境におかれ、家族機能の縮小、住宅政策の不備によって追い詰められている世代だ。 この現実を反映するように、若年層(15〜34歳)の自殺率は10万人あたり20人で、2位のカナダに8ポイントの差を開けて先進国の中でもっとも高い。 また、直近20年間で20〜24歳男女の貧困率が10ポイント上がっている。 本書は、「貧困世代」の実状を、統計データと著者の教育者、支援の現場にいる立場としての経験から描いている。 この説得力は高く、著者が提起する課題がよく理解できた。派生して「少子化」「ブラックバイト」(ここで問題にも切り込んでおり、著者の実例から帰納的に導出される全体像は興味深い内容だった。 ただし、この対策については白紙も良いところで、示唆のある提言はほとんどなかった。 奨学金を現在のローンから、スカラシップ(給付型)に変えるという「What」は良いが、どうやって実現するか「How」の説得力がない。 その財源に富裕層への金融所得課税強化や企業の内部留保への課税強化を使うと言っているが、この意義が分からない。 今求められているのは増税による投資の増加ではなく、支出の見直し、リターンが見込めるところへの投資を増やしていくことが必要だ。 具体的には、社会保障制度の大規模な縮小、或いは廃止が必要だと考える。 既に日本の国民負担率は50%を超えて、60%に届く勢いである。自分の努力で稼いだ額の6割が掠め取られ、それが自分たちではなく老人を生かすために使われている。 こんな理不尽なことはない。 生涯のうちにどれぐらい社会保障を負担して、どのくらい受益を受けるかを世代別に算出する「世代会計」という考え方がある。 これを算出・比較したカリフォルニア大学の研究に依ると、日本は世代会計格差が先進諸国の中でぶっちぎりのトップで、ジュニア層はシニア層の2.69倍の負担をしているという結果だった。 このファクトにどんな反論が出来るのか? 若年層の犠牲によって老人を生かしていることの紛れもない証明である。 本書で提示されるように、出自によって享受できる教育水準が異なることもまた事実である。 だから、「機会」の平等は成し遂げるべきである。親の収入や資質によって、子どもたちの選択肢が一才狭められることがない社会を実現しなければならない。 しかし、「結果」に対しての補償は不要である。 何十年も生きた人間が恵まれないことを憐んでやる必要はない。 一定水準の教育の機会を与えられ、まともな環境で働くことができた中で自分の収入が劣るのは、本人の努力不足以外の何者でもない。 日本には良い言葉がある、「自業自得」だ。 長生きも贅沢だ。 老いてからも長生きしたいと願うなら、若いうちに努力して、競争に勝ち、高い収入を得るべきだ。間違っても見知らぬ若者の犠牲の上に長寿を得たいなどと願うべきではないし、社会はそれを許してはならない。 繰り返すようだが、本書が提示する「貧困世代」への課題意識と、それを裏付ける経験とデータは素晴らしい。 しかし、対策は的外れだ。 我々は、本書のようなファクトを集めながら、いかにそれを解消するべきかを論じていくべきだ。
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衣食住を整えるために精一杯で、健康で文化的な最低限度の生活ができかねる若者がいる日本の現状に暗い気持ちになった。 年代が貧困世代にあたるので、この内容は切実だった。現状を直視し向き合うことは、痛みを伴うことでもあるけれど、現状を知ることは次のステップへ進める糧になる。
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高齢者や障害者に対する社会保障は高いが健常な若者世帯には明確なセーフティネットが不足している。若いから頑張れるというのは経済成長が止まった現代では通用しないだろう。 しかし若者の貧困は本当に困っているかサボっているのかの線引きが難しそうだ。
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現代がいかに若者にとって厳しい時代なのか、そして国としての対策がいかに遅れているかについてかかれた本。 現状に厳しさについて学べるので、とてもためになった。 しかし北欧ではこんなに福祉が充実してますよ、と書かてれいる箇所が多いのだが、北欧では税率が70%くらいあるので、その辺も...
現代がいかに若者にとって厳しい時代なのか、そして国としての対策がいかに遅れているかについてかかれた本。 現状に厳しさについて学べるので、とてもためになった。 しかし北欧ではこんなに福祉が充実してますよ、と書かてれいる箇所が多いのだが、北欧では税率が70%くらいあるので、その辺もきちんと検証したものも読んでみたい。 現状は厳しく、そしてこれからさらに悪くなるだろうと思うと暗澹たる気持ちになる。その中で何が出来るのかを、きちんと考えていかなくてはならないと思う。
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社会福祉士の資格を有し、社会的弱者への支援活動を各方面で繰り広げるソーシャルワーカーの藤田氏が、2015年にベストセラーとなった著書・『下流老人』に続いて世に出した第二弾。複雑な家庭環境や不運により就職すら出来ない若者たち・ブラック企業で精神を病んでしまう若者たちには住居さえ与え...
社会福祉士の資格を有し、社会的弱者への支援活動を各方面で繰り広げるソーシャルワーカーの藤田氏が、2015年にベストセラーとなった著書・『下流老人』に続いて世に出した第二弾。複雑な家庭環境や不運により就職すら出来ない若者たち・ブラック企業で精神を病んでしまう若者たちには住居さえ与えられず、路頭に迷って行き着くのはネットカフェ・脱法ハウス・そして生活保護...。ひとつ上のシニア世代から見れば「努力不足」や「自己責任」と映るかも知れないが、今や若者の貧困は21世紀に入って激変した社会環境によって構造的に生まれた「災厄」であると分析する。現代の日本社会から「強いられた貧困」に直面する世代(プア・ジェネレーション)の実態を明らかにして、彼ら・彼女らに一体何が起こっているのかをレポートする。
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社会的事象としては「ふむぶむそうなんだな全くだ」と思いつつ、その解決策としては「ん〜そうかな〜」という余韻が残る。社会の現状を「まず知る」ための一冊として。
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若者たちの貧困を克服するためには社会構造を変えることが必要です。そのために何をすべきかを本書は語ってくれます。
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色々と納得させられたり、考えさせられました。 子育てしている中で薄々感じている、周囲の境遇や、 何かふと、レールから外れてしまった後の苦しさや怖さの正体を、 活字として知れた感覚でした。 自分(40代後半)も、比較的貧しい境遇のなか、生き抜いてきた思いがあるし、 親の世代は更...
色々と納得させられたり、考えさせられました。 子育てしている中で薄々感じている、周囲の境遇や、 何かふと、レールから外れてしまった後の苦しさや怖さの正体を、 活字として知れた感覚でした。 自分(40代後半)も、比較的貧しい境遇のなか、生き抜いてきた思いがあるし、 親の世代は更に、苦労しながら頑張って育ててくれていたことを 同じ世代になり、子どもを育てる中で、より深く感じていますが、 今の子供たちは、より搾取的で複雑な環境に置かれている事を知り 愕然としました。 まずは自分の子ども、周囲の子供たちを丁寧に見守りたいです。 住宅の問題や、奨学金ローンの件など、もっと改善できるのではないか? 生まれてきた人が、そのまま当たり前に暮らせる環境を整備することが 政治や福祉の原点ではないのか? なぜ日本では、頑張らなければ暮らせない社会なのか? そもそも、の所を、考えさせられ、変えていく必要性を強く感じました。
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●『下流老人』の著者の次作とあって、すぐに読んでみた。 ●「貧困世代」問題が、「下流老人」以上の日本の問題であることを理解する。 ●後半が少しまどろっこしく、前著『下流老人』の内容ほどインパクトがなかった。
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アルバイト労働も正社員労働も、一昔前と比較すると条件が劣悪になってきていて、働けども働けども昇給はなく、家を持つことはおろか結婚も出産もできない… 悪条件の労働に加えて、奨学金の返済や実家の貧困も重なると、もう目もあてられない状況で豊かな生活を送るビジョンが全く見えない… 今の...
アルバイト労働も正社員労働も、一昔前と比較すると条件が劣悪になってきていて、働けども働けども昇給はなく、家を持つことはおろか結婚も出産もできない… 悪条件の労働に加えて、奨学金の返済や実家の貧困も重なると、もう目もあてられない状況で豊かな生活を送るビジョンが全く見えない… 今の20~30代は、そのような「貧困世代」になってしまっているというのが反貧困のNPOに属する筆者が見てきた現実のようです。 富の再分配システムに問題があるというのが筆者の指摘ですが、高等教育の機会均等はより徹底されるべきというのは私も同意するところです。
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