モンゴル帝国と長いその後 の商品レビュー
海の世界史に対抗する、陸の世界史。 定説、思い込みを乗り越え、モンゴルが残したものを見つめなおそうとする本作。 著者の思い入れが強く出過ぎている感もあるが、従来語られてきたモンゴル観が剥落し、歴史を見つめる目が少し変わった気がする。
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モンゴル帝国の範囲は広すぎて、その中で興亡する民族や国が多過ぎて、混乱した。途中でこの著者のシルクロードに関する本にも手をつけてしまったので余計に混乱した。 とにかく最後まで読み終えた。デジタル本でシリーズ全巻揃えたので、あと17冊ある
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ユーラシア大陸全体をダイナミックに動かしたモンゴル帝国。 現在の中東情勢、中央アジアに影響を与えていたとは。
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モンゴル帝国はユーラシアからヨーロッパにかかる広大な世界を征服し、統治した。 本書は、疾風怒濤のごとく各地へ攻め入って暴れまくり殺しまくったという、モンゴルの従来のイメージを全く覆すもの。 当時はヨーロッパもロシアもたいした文明国ではなく、また、モンゴルが野蛮なやり方で諸国を蹂躙したという事実はなく、なるべく戦わずに調略などを駆使して勢力を拡大した。 著者は従来の「西洋中心主義」の歴史のあり方に強く抗議・詠嘆しつつ、モンゴルがユーラシア大陸全体に残した遺産について指摘している。 広い世界を支配したチンギス・カンの系譜は長く尊崇され、後世まで統治者たちはこれを無視できず、栄光を継承しようとしたという。 個人的には、モンゴルは教科書の世界史上では一瞬にして過ぎる部分なので、それこそ出来上がった世界に一時的に入ってきて、すぐに去っていったイメージだった。しかし、これを読んでモンゴルが世界史に果たした重要性がおぼろげながらわかってきた。 そもそもユーラシアを東から西まで眺めて書かれた世界史の本はこれが初めてだ。著者はその状況そのものを嘆いてこれを書いたのだろう。 本書の記述は現イランのホーラーサーンに拠点をおいたフレグ・ウルスにおいている。 フレグ・ウルスはイスラムに改宗して統治しやすさを狙ったこともあるが、芯からイスラム政権になったとは言えず、ネストリウス派キリスト教を擁護しヨーロッパへ使節を派遣したこともある。 政権内にはイラン人はじめ様々な民族・宗教の人材を登用し、使用言語はこの頃の共通語であるペルシャ語だった。 東方の元と史料の言語が違うため、モンゴル帝国全体のシステムを解明する研究が今ひとつなのだとか。これがもっと進めば、さらにモンゴルのイメージを変える事実が出てくるかもしれない。 要は、世界史研究の穴であり、研究不足! 全体を見られる研究者がいないというのは、わかる。本も少ないけれど、もっと読んでみたいと思った。 エジプトのマムルーク朝というのは、実はキプチャクの草原からやってきた遊牧民であり……など、ところどころに「えっ、そうなの?」という情報が入っていて面白かった。 ただし、本書は周辺や後世への影響について書いているため、モンゴル史そのものについてはやや薄い印象。 モンゴル史は別の本で先に読んだほうが良かったかも。
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モンゴル軍の軍事的な意味での強さが伝わっているのは、ヨーロッパやロシアが自国の歴史を喧伝するために過大評価してきたもの、つまり西欧中心史観が根底にあることを著者は繰り返し説いている。実際のモンゴル軍は情報収集と内部工作に長け、戦わずしてバグダードまでもを開城させていたという。確かに、従来のモンゴル軍への見方とはがらりと変わってくる。 モンゴル帝国の影響も、予想以上に大きい。 ティムールもイヴァン4世もホンタイジも、チンギス王家ゆかりの王女と結婚することでモンゴル帝国の威光にあやかる、という政略結婚を行なっていた。ユーラシアという世界を東から西まで繋いだ、という点において、モンゴルは空前絶後の帝国であったと分かる。15世紀ヨーロッパの航路発見も、後退していたヨーロッパの幸運であり、アジアが海への進出をみずから閉ざしていった結果としている。
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